不貞行為は許せないけれど別れたくない! 「念書」を証拠として残す予防法とは?
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埼玉県が発表した統計によると、平成29年における埼玉県民の離婚率は人口1000人に対し1.70であり、これは全国平均と同率です。どのような理由で離婚に至ったのかは人それぞれですが、平成29年度の司法統計によると、男性側が申し立てた離婚原因の第3位が異性関係でした。一方、女性側は第4位にランクインしています。
大宮エリア周辺でも、不貞行為などの異性問題で離婚に踏み切るべきか悩んでいる方は少なくないと思われます。しかし一方で、不貞行為は許せないけど、家庭を再構築したい、離婚したくないと考える方もいるはずです。そのようなときに有効なのが「念書」です。ここでは、念書の作成方法や念書の効力について、大宮オフィスの弁護士が解説します。
1、不貞行為の抑止になる「念書」とは?
まずは、念書の意味や念書の持つ効力について解説します。
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(1)念書ってなに?
そもそも念書とは、約束事を書き残すものです。法律上、口約束だけでも成立する契約はありますが、それを証拠として残すために「念書」として残すことがあります。不貞行為における念書とは「不貞行為の事実」を書き記したものです。いつ誰とどこで、どんな行為をしたのかを記載して、本人に署名捺印させることで、不貞行為の証拠として扱います。
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(2)念書は不貞行為の証拠として裁判資料になる?
通常、裁判で不貞行為の有無が争われる場合、不貞行為をしていたことを示す証拠が必要です。このような証拠がなければ、不貞行為の存在は認められず、慰謝料の請求どころか離婚請求すら認められないケースが想定されます。
では、念書は裁判上の不貞行為の証拠になり得るのかといえば、本人の自白になりますので、証拠となります。その他の不貞行為の証拠が、確実ではない、証拠としては弱いものであっても、念書があることでそれらを裏付けられますので、念書を作成しておくと後々有利に働く可能性があるでしょう。
また、今すぐに離婚しない場合であっても、念書を作成しておくことで配偶者が将来行うかもしれない不貞行為の抑止力となります。再び不倫や浮気に走らせず、家庭を再構築するためにも念書は有効といえるでしょう。
2、不貞行為の抑止以外での念書を作成するメリットは?
次に、不貞行為の念書を作成するそのほかのメリットを確認しておきましょう。
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(1)不貞行為をした相手の言い訳を防ぐ
不貞行為に対する慰謝料は、不貞をした配偶者やその相手方に請求することができます。不貞をした配偶者について、当事者同士で話し合いをしているときは不貞行為を認めていても、裁判等では「浮気はしていなかった」と手のひらを返すことが少なくありません。それを防ぐためにも、念書は有効です。
また、不貞をした配偶者の相手方についても、慰謝料の支払いから逃れるため、「既婚者とは知らなかった」、「私もだまされた」、「不貞行為はしていない」などと言い訳や言い逃れをすることがあります。それを防ぐためには、不貞をした配偶者だけでなく、その相手方とも念書を作成する必要があります。念書があれば、万が一裁判になった場合に、不貞行為を証明する強い証拠となるでしょう。 -
(2)不貞行為の証拠の確保
民法上、不貞行為の存在は離婚事由であると規定されています。民法上の不貞行為とは、性交渉やそれに類する行為があったことを言います。単に食事をしただけ等の関係では、不貞行為とはみなされません。不貞行為と認められるためには、肉体関係があったことを客観的に示す証拠が必要です。具体的には以下のような証拠が、不貞行為の証拠となります。
●写真または動画データ
肉体関係があったことが明らかな写真や動画などのデータは、不貞行為の証拠となります。たとえば、肉体関係を持つことが明らかである場所、たとえばラブホテルに出入りするデータが、代表的な証拠と言えます。
●音声データ
写真や動画がなくても、本人が不貞行為を認めた音声データがあれば、有効な証拠となります。話し合いや言い争いの最中に、不貞行為を認める発言をする可能性がありますので、録音しておくとよいでしょう。
●そのほか
LINEやメール、手紙などで不貞行為が明らかになるものがあれば、証拠となる可能性があります。上記証拠と合わせて準備しておくとよいでしょう。
これらの証拠が一般的な不貞行為の証拠となりますが、個人でしっかりとした証拠を集めることは難しいものです。写真や動画データの場合、探偵などに依頼しなければ有効な証拠となり得るものを確保するのは困難です。
しかし、念書であれば、証拠集めをする手間をかけずに証拠を確保することができます。不貞をした配偶者やその相手方に念書を作成させれば、不貞行為に関する有力な証拠を確保することができますので、証拠集めが難しい方こそ念書を作成すべきです。
3、不貞行為の念書の記載事項と注意点
次に、不貞行為の念書の作成方法や記載すべきこと、注意点を解説します。
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(1)不貞行為を抑止する念書の記載事項
原則として不貞行為の念書には「いつ・どこで・誰と・どのように」といった事実を記載します。
●どこの誰と
不貞行為をした相手の氏名だけでなく、生年月日や住所、電話番号など個人を特定できる情報を記載しましょう。氏名だけでは、その本人を特定できないことがあります。住所や電話番号などが分からない場合は、勤務先の名称や住所などを記載しておくと安心です。
●いつから
不貞行為で慰謝料請求や離婚に踏み切る場合は、不貞行為の事実だけでなく、回数や期間が非常に重要になります。不貞行為の慰謝料は、行為の期間が長ければ高額になります。不貞行為の事実と同じくらい、期間や回数は重要なので、必ず、言及しましょう。回数については覚えていない場合でも、期間については把握しているはずです。
●どこで
肉体関係を持った、ホテルや相手の自宅などの名称と住所を記載しておきましょう。
●どのように
不貞行為の相手方に念書を書かせる場合、「既婚者と知って行為に及んでいたこと」を明記してください。既婚者と知らずに肉体関係を持っていたと認定された場合、慰謝料が認められない可能性が高いです。そのため、「既婚者と知っていた」と記載することで、「知らなかった」という言い逃れを防止します。
●署名・押印
最後に、不貞をした配偶者やその相手方に署名と捺印をしてもらいましょう。認め印でもよいですが、実印を使用することをおすすめします。 -
(2)念書作成時の注意点
次に念書を作成する際の注意点を説明します。念書に法律的な穴があると、裁判等の際に証拠にならない可能性があります。
●自筆で作成すること
念書は法的な文書ではないため、作成方法や書式などに制限はありません。そのため、パソコンのワープロソフトなどで作成し、本人たちに署名捺印だけさせることも可能です。
しかし、そうすると、後日「内容を把握していないのに無理やり署名捺印させられた」、「署名捺印だけして後から文書を印刷された」などの言い逃れが可能になります。それを避けるために、文言を考えた上で、不貞をした配偶者や相手方に自署してもらいましょう。
●脅されたと言われないために、喫茶店など人目がある場所で作成する
原則として、念書を作成すればその内容を覆すことはできません。しかし、脅されて書かせた場合は、無効になる可能性があります。そのため、「脅されて書いたから無効だ」との主張に備えて、ファミリーレストランや喫茶店などで念書を作成するとよいでしょう。それに加えて、作成する際の様子を動画で撮影しておけば、脅されたと主張することがさらに難しくなります。
4、まとめ
不貞行為が発覚した後は、保険のために念書を作成しておくことを強くおすすめします。今後、離婚や慰謝料を請求する中で、念書は不貞行為の証拠になりますし、それ自体が不貞行為を予防する抑止力になるためです。
念書の作成の際は、前述した点に注意しながら、慎重に進めましょう。法的に問題がなく、言い逃れができない内容の念書を作成したい場合には、弁護士に依頼することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスでは、不貞行為の念書作成のご依頼や相談に対するアドバイスを行います。作成方法や記載事項に悩んだ場合、まずはご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています