不貞行為を認めさせて高額な慰謝料請求は可能? 証拠集めと慰謝料請求の注意点

2019年10月21日
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不貞行為を認めさせて高額な慰謝料請求は可能? 証拠集めと慰謝料請求の注意点

さいたま市大宮区役所内にある「くらし応援室」では、不貞行為や離婚をはじめとした各種市民相談の予約を受け付けています。

配偶者の様子がおかしい等、ふとしたきっかけで配偶者の不貞行為に気づいてしまうことがあるかもしれません。配偶者に裏切られた事実は耐えがたいものです。不貞行為の証拠を集め、慰謝料を請求したいと考えるのは、おかしなことではありません。しかし、不貞行為の証拠集めや慰謝料請求には注意点があります。間違った知識や方法で証拠となるものを集めても、証拠として認められず余計につらい思いをしてしまうことも考えられます。

この記事では、不貞行為を立証するための証拠集めと慰謝料請求における注意点を、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスの弁護士が解説します。

1、不貞行為の証拠はどんなもの?

不貞行為とは、婚姻関係や内縁関係にある状態で、配偶者以外の異性と自由な意志で肉体関係をもつことです。単にデートを重ねる、頻繁に連絡をとるといった程度では不貞行為と認められません。そのため、不貞行為が確実に存在したことを第三者にも証明できる「客観的な証拠」を集める必要があります。証拠と認められる可能性が高いものには、次のようなものがあります。

  • 二人でラブホテルに入る写真
  • ラブホテルに行ったときの領収書、クレジットカードの明細書
  • 肉体関係があったことを推測できる内容のLINE、メール
  • 二人で泊まりの旅行に行ったと分かる写真、SNSの投稿
  • カーナビやGPSの記録
  • 配偶者や不貞相手の自白(文書または録音)

2、不貞行為の証拠となるポイントは

不貞行為の証拠で重要なポイントは、「配偶者が、あなた以外の異性と肉体関係を伴う交際をしていることを証明できること」です。

たとえば、レストランで食事をしている写真や携帯電話の通話履歴だけでは、「友達のひとり」「仕事の話」などと言い逃れされてしまう可能性もあり、十分な証拠にはなりません。ただし、そうした行為の証拠を複数残しておくことで、不貞行為があったと推測できれば、全体として十分な証拠になり得ます。

3、違法性が疑われる証拠集めは要注意

不貞行為の証拠を集めようと思うと、感情的になり行き過ぎた行為をしてしまうことがあります。しかし、不法行為によって集めた証拠は有効にならない可能性があります。いくつか、代表例を紹介します。

  1. (1)盗聴器を設置する

    自宅や自分の所有物以外に盗聴器を設置することは違法になり得ます。

    すなわち、別居中の配偶者や不倫相手の自宅に侵入して盗聴器を設置すると住居侵入罪、コンセントを盗聴器つきのものに取り換えるといった行為は窃盗罪に問われる可能性があります。また、電話回線に盗聴器をしかけ故意に内容を受信することは、有線電気通信法や電気通信事業法に違反する可能性があります。

  2. (2)郵便物を勝手に抜き取る、開封する

    別居中の配偶者宅や不倫相手宅の郵便ポストから手紙を勝手に持ち去る行為は、窃盗罪に抵触するおそれがあります。同居中の配偶者宛ての郵便物でも、「特定の受取人に対し差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文章」である信書を正当な理由なく開封すると、信書開封罪に問われる可能性があります。

  3. (3)不正にメールやSNSを見る

    パスワードを予測しログインしてメールボックスを見る、SNSに侵入するなど、無断でその人のウェブ上の情報にアクセスすると不正アクセス禁止法に違反する可能性があります。パスワードを盗み見て配偶者のスマホにログインすることも、プライバシー侵害として不法行為にあたる可能性があります。

4、違法に集めた証拠でも証拠能力はある?

民事訴訟では、刑事訴訟と異なり、原則として証拠能力(訴訟において証拠として用いることのできる適格)の制限はないとされています。そのため、著しく反社会的な方法で得た証拠等ではない限り、証拠能力が否定されることはありません。

しかし、だからといって法に抵触する方法で証拠を集めたとしたら、相手方から損害賠償請求を受けたり、場合によっては告訴されてしまい刑事事件に発展してしまったりする可能性があります。行き過ぎた証拠収集はリスクが伴うものです。弁護士に相談してから集めることが望ましいでしょう。

5、慰謝料請求のために知っておきたいこと

不貞をされた心の傷、将来に対する不安は計りしれません。高額な慰謝料の支払いを受けたいと考える方もいるでしょう。しかし、現実問題として必ずしも希望通りの慰謝料を回収できるわけではありません。そこで、慰謝料に影響する主な条件について説明します。

  1. (1)慰謝料の基準や相場

    不貞行為に基づく慰謝料額は、不貞の態様や経済状況、交渉内容などによって変わってきます。そのため、ケース・バイ・ケースとなることが多いでしょう。慰謝料額に影響する条件については後述します。

  2. (2)不貞相手に全額請求することは可能?

    配偶者よりも不貞相手に対して怒りを感じ、すべての責任を負わせたいと考える方もいるでしょう。この点については、「不貞についての主たる責任は不貞を働いた配偶者にあり、不貞の相手方の責任は副次的なものとみるべきである」と述べた裁判例も存在するところです。

    しかし、不貞そのものは一人ではできない行為です。そのため、不貞相手に対して、夫婦間の婚姻共同生活を侵害したことに基づき、「共同不法行為者」としての責任を問い、慰謝料を請求することは法律上認められています。

    ただし、注意点もあります。たとえば、不貞相手が慰謝料を支払ったとしても、不貞相手はあなたの配偶者に対して、あなたに支払った慰謝料のうち責任の割合に応じた支払いの請求ができるのです。

    つまり、仮に不貞相手が100万円の慰謝料をあなたに支払った場合、不貞相手は100万円のうち一部の支払いを、不貞をした配偶者に対して請求する権利があります。これが「求償権」です。したがって、あなたと不貞をした配偶者が離婚しない場合は、求償権に基づき、夫婦共有財産から不貞相手への支払いがあり得ることを覚えておきましょう。

  3. (3)慰謝料の額を左右する条件

    慰謝料の額は、前述したように不貞の態様や交渉内容によっても大きく異なります。ここでは慰謝料の額に影響する条件を紹介します。

    ●離婚の有無
    不貞行為が原因でどのような結末を迎えたのかによって慰謝料額は大きく変わります。一般的には、「離婚しないで同居継続」<「離婚しないが別居する」<「離婚する」、という順で慰謝料額が増える傾向にあります。

    ●婚姻期間、不倫期間の長さ
    婚姻期間が長いと、不貞された側の精神的苦痛が大きくなるので、慰謝料額が増える傾向にあります。また、不貞期間が長い場合、長期にわたって精神的苦痛を受けたことになるので、慰謝料額が増える傾向にあります。

    ●不貞前の婚姻生活
    不貞前に婚姻生活がうまくいっていた場合は、円満な夫婦間の婚姻共同生活を侵害したことになるので、慰謝料額が増える傾向にあります。一方、すでに別居していたなど婚姻関係が破たんしている状態の場合、不貞行為が婚姻関係破たんの原因ではないとされ、慰謝料の請求自体が難しくなる場合もあります。

    ●子どもの有無
    ひとりで生活できない子どもがいる、子どもの人数が多いといった場合、高額の慰謝料が認められることがあります。

    ●約束を破った場合
    二度と不倫をしないと約束したにもかかわらず、隠れて不倫を続けていたような場合、不貞行為の悪質性が高まり、慰謝料を増額する要素になります。

    ●不貞した側の財力
    不貞した側の財力が大きい場合、慰謝料の増額要素とされることがあります。

    ●不貞された側の責任
    不貞された側が、夫婦生活において正当な理由なく性交渉に応じなかった、極度の浪費癖やDVなど婚姻関係を継続しがたい理由が存在していた場合、不貞された側の責任も問われる可能性があります。証拠を握られているケースでは減額される可能性があります。

6、まとめ

今回は、不貞行為の証拠集めと慰謝料における注意点を解説しました。不貞された側は感情的になりやすく、証拠集めや慰謝料交渉で誤った判断をし、二重に傷ついてしまうこともあります。

法律の知識がないことで相手に訴えられてしまうリスクも存在しますので、むやみに動き出すよりも、まずは弁護士に相談してください。弁護士であれば合法な証拠集めの方法をアドバイスできるほか、慰謝料請求の場面でもあなたの代理人として交渉可能です。

ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスは不貞行為に関連した依頼も受付しております。不貞行為の証拠集めや慰謝料請求で、疑問やお困りの点があれば大宮オフィスの弁護士にご相談ください。

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