夫にマッチングアプリで不倫された! 離婚して慰謝料を請求する方法

2021年03月18日
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夫にマッチングアプリで不倫された! 離婚して慰謝料を請求する方法

さいたま市のホームページによりますと、さいたま市では平成30年度内に1955 組の夫婦が離婚しています。夫婦が離婚する理由は夫婦によりさまざまですが、配偶者の不倫を理由に離婚を考える方は少なくありません。

特に近年は「マッチングアプリ」が普及していることにより、この利用による不倫は増えていくことも予想されます。そこで本コラムでは、夫がマッチングアプリで不倫していることが発覚したときに離婚や慰謝料を請求する方法について、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスの弁護士が解説します。

1、マッチングアプリは不倫のマッチングツール?

マッチングアプリとは出会い系アプリともいわれており、一般的に恋愛や結婚などを希望している男女が相手探しのために使うアプリケーションのことです。

純粋に恋愛や結婚探しのために利用する独身のユーザーは少なくないはずですが、なかには既婚者であるのにもかかわらず独身を装ったユーザーも少なからず存在するといわれています。その目的の多くは不倫と考えられます。

また、利用者を独身者に限定せず既婚者でも気軽に利用できるマッチングアプリ、さらには既婚者専用マッチングサイトも存在します。このようなマッチングアプリは、既婚者が利用するにあたって、表向きには食事や会話など肉体関係を伴わないプラトニックな相手である「セカンドパートナー」を探すことをうたっています。

しかし、現実には肉体関係を結ぶ相手、つまり不倫相手を探す目的に利用する既婚者もいれば、肉体関係の対価に金銭を要求する目的のユーザーも存在しているようです。

2、マッチングアプリによる不倫のラインはどこから?

夫のどのような行為を不倫や浮気と捉えるかは、人によってさまざまかもしれません。しかし、裁判所による判断ではある程度のラインが決められています。

具体的には、夫婦には互いに「貞操義務」があると、民法第752条「夫婦の協力および扶助の義務」によって解釈されています。そして、本人の自由な意思に基づいて配偶者以外の異性と性的関係を結ぶ不倫は、貞操義務違反という不法行為であると考えられているのです。

つまり、夫がただ単にマッチングアプリを使用したことや、マッチングアプリを通じて知り合った人物とメッセージのやりとりをしたり、食事をしたり、会って会話をしたりしただけでは、そのことをもって、法律上の不貞行為とは評価されないというのが原則です。

もっとも、夫と、夫がマッチングアプリで知り合った人物とのあいだに、実際に肉体関係がなくても、肉体関係の存在が推認されるような行為、一例として、肉体関係があることを想起させるような内容のメッセージや画像のやりとりがある場合には、肉体関係の存在が推認された結果、不貞行為ありと認定されることもあります。

3、不倫した配偶者に対してできることは?

民法第770条第1項では、一方の配偶者が離婚の訴えを提起することができる要件のひとつとして、「配偶者に不貞な行為があったとき」と規定しています。つまり、配偶者の不倫は法的な離婚原因になりますし、それを理由に裁判で離婚を請求することができるのです。

さらに、民法第709条では、「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と規定しています。また、民法第710条では、「財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない」とも規定しています。

先述のとおり、不倫は不法行為に該当する可能性が高い行為です。夫の不倫により精神的苦痛という損害を負った妻は、不倫をした夫に対して慰謝料を請求することができるのです。

なお、民法第724条の規定により、あなたが夫の不倫行為を知ったときから3年間経過すると時効が成立し、慰謝料を請求する権利が消滅してしまいます。ただし、あなたが時効になる前に夫に対して内容証明郵便で慰謝料の支払いを請求し、かつ6か月以内に訴訟を提起した場合は、時効を中断することができます。

4、マッチングアプリで不倫した相手に慰謝料を請求することはできる?

では、マッチングアプリによる夫の不倫相手に対して慰謝料を請求することはできるのでしょうか。

先述のとおり、夫とセカンドパートナーとのあいだに肉体関係がない場合は、法律上の不貞行為と評価されないのが原則です。したがって、マッチングアプリを通じて知り合い、食事や会話をともにしたことのみをもって、夫がマッチングアプリで知り合った相手に対して不貞行為に基づく慰謝料を請求することは難しいでしょう。

しかし、夫とセカンドパートナーとあいだに肉体関係があったことを立証できれば、夫の不倫相手として、そのセカンドパートナーに対し慰謝料を請求できる可能性が出てきます。

民法第719条では、「数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う」と定めています。不倫とは、配偶者と不倫相手による「共同不法行為」です。つまり、不倫した事実については夫だけでなく、不倫相手にも責任があるという考えなのです。

したがって、不倫についての慰謝料は、夫だけではなく不倫相手にも支払う義務があります。ただし、どちらか片方からすでに適切な慰謝料を受け取っている場合は、二重に請求することはできない点に注意してください。

5、夫がマッチングアプリで不倫している証拠は?

  1. (1)証拠にはどのようなものがある?

    夫がマッチングアプリで不倫している事実についてあなたが確信を持っていたとしても、それを夫や不倫相手が否定してしまえば、慰謝料を請求する話は進みにくくなります。

    このような場合、夫や不倫相手に事実を認めさせたうえで慰謝料の支払いを受けるためには、何よりも「証拠」が重要になります。また、裁判になった場合は証拠は必須となりますので、必ず準備しておいたほうがよいでしょう。

    証拠については、不倫の要件を構成する以下の2点を客観的に証明するものが決定的になると考えられます。

    • 夫と不倫相手とのあいだに、肉体関係があったこと
    • 夫が妻帯者である事実を、不倫相手が知っていたこと


    証拠物としては、メールやSNSの履歴、通話の録音、写真、動画、手紙など、さまざまなものが考えられます。このような証拠をどのくらい集めることができるかによって、慰謝料の支払いを受けられるかどうかが変わります。

    ご自身で証拠を集めることが難しいと考えられる場合は、費用は相応にかかりますが興信所に依頼してみることも一度検討してみてもよいでしょう。

  2. (2)やるべきではない証拠集めの方法

    証拠集めのやり方次第では、その行為が違法行為になる可能性があるため、注意が必要です

    たとえば、証拠を集めるために夫のパソコンやスマートフォンのデータをすべてコピーすると、たとえ夫婦であろうとプライバシー権の侵害にあたる可能性があります。また、あなたのパソコンやスマートフォンから夫が利用しているマッチングアプリに勝手にログインすると、不正アクセス禁止法違反となる可能性もあります。

    このような方法で取得した証拠は、裁判で証拠として採用されないおそれがあるばかりか、逆に夫から損害賠償を請求される可能性があります。

6、慰謝料や離婚を請求するステップは?

  1. (1)口頭および書面による請求

    慰謝料を請求するとき、まずは口頭による請求から始めて相手方が応じないようであれば書面というようなステップを踏むことが一般的です。

    慰謝料を請求する書面は、「内容証明郵便」の送付から始めることがおすすめです。内容証明郵便は、送付された相手に何らかの特別な法的効力を発生させるというものではありません。しかし、内容証明郵便を送付することにより、あなたが内容証明郵便を送付した事実および慰謝料を請求する内容を、日本郵便に証明してもらえます。

    これにより、あなたが夫や不倫相手に慰謝料を請求することの意思を表示した事実について、後日「あった・ない」の議論を防ぐことが期待できます。

  2. (2)調停

    夫婦間や不倫相手との話し合いで離婚や慰謝料に関する話がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停手続きを検討する必要があります

    なお、離婚については「調停前置主義」の制度が採られています。このため、離婚を前提とした慰謝料請求についても調停を経なければ裁判に移行することができません。

    調停は、調停委員とよばれる人を介して行う当事者同士の話し合いです。お互いに顔を合わせずに話し合いができることから、冷静な話し合いをすることが期待できます。

    調停が成立すると、家庭裁判所の書記官により「調停証書」が作成されます。調停証書は確定判決と同じ効力を持つため、合意したはずの慰謝料の支払いに配偶者や不倫相手が応じない場合は、強制執行の手続きを取ることができます。

  3. (3)裁判

    調停で配偶者との話し合いが成立しない場合は、裁判に移行することになります。裁判に移行すると、費用と期間は調停以上に発生することが一般的です。

    裁判の大きな流れは、以下のとおりです。

    • 裁判所に離婚および損害賠償(慰謝料)支払いの訴えを提起
    • 裁判所を介して相手方と主張立証を尽くす
    • 裁判所から和解勧告ないし判決


    裁判では、あなたが思っている以上に証拠や法令、過去の判例など法的側面が一層重視されるようになります。また、裁判における手続きや書面の作成は煩雑であり、かつ専門的な知識と経験を要します。したがって、弁護士に対応を依頼したほうがよいでしょう

7、まとめ

職場不倫と異なり、マッチングアプリによる不倫は相手とどのような経緯で知り合ったのか、事実関係などがつかみづらいものです。また、マッチングアプリが起点であるために、不特定多数と不倫関係にある可能性も否定できません。このことから、証拠集めや不倫の全容解明が難航する可能性もあります。

また、マッチングアプリによる不倫にかぎらず、夫への離婚請求や夫および不倫相手への慰謝料請求は、お互いの感情や事実関係の争いなどが複雑に絡み合うため、ご自身で進めることは負担が大きく困難を伴うものです。

もしあなたがマッチングアプリによる夫の不倫に気づき、離婚や慰謝料の請求を考えるのであれば、できるだけ早いうちに男女関係の問題解決に豊富な実績と経験のある弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に依頼すれば、法的なアドバイスはもちろんのこと、あなたの代理人として夫や不倫相手との交渉、さらには調停・裁判の手続きなど、離婚や慰謝料の獲得に向けてあなたをサポートします。これにより、マッチングアプリによる不倫の事実を立証できる可能性が高くなるとともに、離婚や慰謝料に関する交渉がまとまりやすくなることも期待できます。

ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスでは、離婚や慰謝料の請求に関するご相談を幅広く承っております。ぜひお気軽にご連絡ください。あなたのために、ベストを尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています