養育費は何歳まで支払い義務があるのか。法改正後は18歳まででいい?
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さいたま市が公表している統計によると、平成30年にひとり親家庭が受けられる「児童扶養手当」を受給している方は一部支給を含め86000人を超えていることがわかっています。児童扶養手当は、養育費を含む一定以上の収入がある方は受け取れない手当です。つまり、多くのひとり親家庭で養育費を受け取れず、低収入で子どもを育てていることが想定されます。
そうはいっても、養育費を支払う側にも生活があると思われることでしょう。さらに民法改正により、令和4年から成人年齢が18歳に引き下げられることが決まりました。では、法改正が決まってから施行されるまでに離婚した場合の養育費は何歳まで支払うのが妥当なのでしょうか。
今回は、子どもが何歳になるまで養育費の支払い義務が生じるのかを、大宮オフィスの弁護士が解説します。養育費の金額や支払期間を変更する方法についてもあわせて解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
1、養育費は子どもが成人するまで支払うのが一般的
一般的に、養育費とは「子の監護に要する費用」のことをいい、子どもが20歳になるまで支払うケースが多いようです。現行の法律(民法)では成人年齢が20歳に定められているため、「子どもが成人するまで」と取り決めた場合には、必然的に成人年齢である20歳が基準となります。
ところが、平成30年6月、成人年齢を20歳から18歳に引き下げる改正民法が成立しました。改正民法施行後(令和4年4月1日以降)は、子どもの成人年齢が18歳となるのです。そこで、養育費の支払期間にはどのような影響をおよぼすのかが気になるところでしょう。
すでに法改正が決定していることから、法改正前である現段階においても「子どもが18歳になる頃の成人年齢は18歳なのだから、養育費の支払いは18歳まででよいだろう」と主張する人がいます。しかし、現段階では民法における成人年齢が20歳と定められていますので、法改正前に離婚した場合は20歳まで養育費の支払い義務があると考えるのが妥当です。
また、法改正前に協議した養育費の支払期間については、協議後に民法が改正しても原則的には当初の取り決め通りに支払わなければいけません。仮に、離婚協議書には「20歳まで」ではなく「成人するまで」と記載してあったとしても、協議を行った時点での成人年齢が20歳だった以上は子どもが20歳に達するまで支払うのが基本だと考えられます。
なお、法改正後に協議した離婚において「成人するまで」と定めた場合には18歳という基準に従わざるを得ないでしょう。しかし「20歳まで」「大学卒業まで」などと定めた場合には、たとえ成人年齢が18歳となっていても、当然ながら18歳以降にも支払い義務が生じることになります。
ここまでが法改正に関連する養育費の支払期間についての話です。次項からは、現行法を前提として、20歳以降に養育費の支払い義務が生じるケースを紹介します。
2、子どもが大学へ進学した場合の養育費
そもそも、養育費とは子どもが経済的に自立できる状態に成長するまで支払うものです。別れた元配偶者のためではなく、子どもの育成や教育のために必要なお金なのです。
子どもが経済的に自立できる状態とは、親が養わなくても自分で生活できる状態を指します。たとえば、子どもが高校卒業と同時に就職してひとり暮らしを始めた場合は、子どもが自立できる状態になったといえるでしょう。反対に、高校卒業後に4年制の大学へ進学した場合は、経済的には大学を卒業するまでは親の助けが必要だと考えられます。
そのため、子どもが大学へ進学した場合は、20歳以降も養育費を支払う旨の取り決めをするケースは少なくありません。特に、両親が大学を卒業している場合や身内に大学出身者が多くいる場合などは、子どもも大学に進学する可能性が高いと考えられるため、大学を卒業させるまで親の養育義務が続くと考えられます。親と同等の健康で文化的な生活を送らせることが養育費を支払う目的のひとつともいえるためです。
このように、子どもの自立と養育費を切り離して考えることはできません。そのため、法改正前であっても法改正後であっても、成人年齢だけを基準に養育費の支払期間を決めることはできないと考えられます。
では、もし離婚当初に予定していた進路とは違う進路を子どもが選んだら、養育費についても取り決め内容を変更できるのでしょうか。子どもが高校卒業と同時に就職したケースを例に見てみましょう。
3、子どもが高校卒業と同時に就職した場合の養育費
子どもが高校卒業と同時に18歳で就職した場合は、養育費の支払いを終えたり支払額を減らしたりできる可能性があります。
たとえば、子どもが進学すると仮定して「22歳まで養育費を支払う」と取り決めていたにもかかわらず、子どもが高校卒業と同時に就職してひとり暮らしを始めたケースです。この場合は、ひとり暮らしを始めた時点で子どもが経済的に自立できる状態まで成長したと考えられます。
ただし、子どもが自立できる状態まで成長したからといって、実際に経済的に自立できているとは言い切れません。また、現行法では、たとえ就職して社会人として働いていても成人年齢の20歳に達するまではあくまで未成年者です。そう考えれば、子どもが高校卒業と同時に就職したからといって、必ずしも養育費の支払い義務がなくなるとまではいえないでしょう。
とはいえ、子どもが働き始めれば経済面において親権者や子どもの環境が変わることは事実です。養育費の免除や減額を申し出れば、取り決めの内容を変更することも可能だと考えられます。
では、どのような手順を踏めば養育費に関する取り決めの内容を変更できるのでしょうか。
4、養育費に関する取り決め内容を変更する方法
養育費に関する取り決め内容を変更するには、2つの方法があります。
順に解説しましょう。
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(1)話し合い
ひとつ目の方法は、話し合い(協議)による変更です。元配偶者同士で話し合い、お互いに同意することで養育費に関する取り決め内容を変更できます。
話し合いで変更した場合は、口約束だけでなく書面に残すことが大切です。後からトラブルへ発展することも十分に考えられますので、協議書など、法的に効力のある文書を作成しましょう。
法的に効力のある文書とは、以下の内容がしっかりと記されている文書のことです。
- 作成日
- 養育費の金額
- 支払い方法
- 2人の署名
可能であれば、公正証書として残しておくことをおすすめします。
なお、相手が合意していないにもかかわらず、勝手に養育費を減らす・支払わないといった行動に出ることは避けましょう。場合によっては、弁護士から連絡がきたり、給料や銀行口座を差し押さえられたりする可能性もあります。
相手が話し合いに応じてくれない場合は、次の方法を試してください。 -
(2)調停
もし話し合いで解決できなければ、調停を申し込むことで養育費を減額または免除してもらえる可能性があります。
調停とは、当事者同士が話し合いで解決できない場合に、家庭裁判所の調停委員を介して話し合いをすることです。第三者を間に入れることで、当事者だけで話し合いをするよりも解決しやすくなるメリットがあります。
調停でも解決できなければ、次に開かれるのが審判です。審判では、養育費の減額および免除が妥当かどうかを裁判官が判断します。審判の結果に不満があれば「即時抗告」と呼ばれる異議申し立てが可能です。即時抗告を行った場合は、裁判を行うことになります。 -
(3)養育費減額のために弁護士に相談すべき理由
相談を受けた弁護士は、養育費減額の理由が正当であるかどうか、減額が認められる余地があるかどうか、さらには交渉の進め方についてのアドバイスを行います。
相手方が直接の話し合いに応じてくれる余地がないときは、弁護士があなたの代理人として交渉を進めることができます。弁護士が代理人として対応することを告げると、交渉のテーブルについてくれることもあるからです。弁護士が対応することで、調停や裁判を視野に入れた交渉が可能となります。
依頼を受けた弁護士であれば、話し合いの場が調停に変わったときはもちろん、裁判になったときも速やかに対応することができます。少しでも争いにならないよう速やかに減額を実現したいとお考えであれば、弁護士に相談してみることをおすすめします。
5、まとめ
今回は、養育費は何歳まで支払い義務が生じるのか、また養育費の金額や支払期間を変更する方法について大宮の弁護士が解説しました。民法改正により、今後は養育費に関するトラブルが多発する可能性もあります。しかし、養育費は子どもの自立を支えるための制度であり、養育は両親に課せられた義務です。親である以上は、子どもが無事に自立するまでしっかり義務を果たしましょう。
養育費のトラブルでお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスまで一度ご連絡ください。子どもとの面会や、再婚後の養育費の支払いなど、さまざまな状況に合わせて最適なアドバイスを行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています