慰謝料額は離婚したい理由で変わる! 原因別相場と必要な証拠とは
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配偶者の浮気や不貞行為、DVやモラハラなどが原因で、夫婦関係が破綻して離婚に至った場合、相手に慰謝料を請求することができます。
あなた自身が受けた精神的な苦痛を癒すためにも、慰謝料はぜひ受け取っておきたいところです。もし、夫婦間に未成年の子どもがいて、あなたが親権を得る場合、慰謝料は新たな生活を始めるために重要な経済的基盤にもなるでしょう。
そこで今回は「慰謝料に関する基礎知識」「離婚原因別の慰謝料の相場」「慰謝料を獲得するために大事な『証拠の確保』」について詳しくご紹介していきます。
目次
- 1、離婚の慰謝料請求に関する基礎知識
- (1)そもそも慰謝料とは?
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(2)離婚の際に慰謝料請求できる具体的なケース
①浮気(不貞行為)
②DV・モラハラ
③悪意の遺棄
- 2、離婚の慰謝料の相場は離婚原因で変わる
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(1)慰謝料の金額を左右する共通の要素とは
①婚姻期間
②年収
③年齢
④未成年の子どもの人数 -
(2)ケース別!離婚の慰謝料の相場
①浮気・不倫による離婚の慰謝料の相場
②DV・モラハラによる離婚の慰謝料の相場
③悪意の遺棄による離婚の慰謝料の相場
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(1)慰謝料の金額を左右する共通の要素とは
- 3、慰謝料をもらうためには証拠の確保が大事
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(1)浮気・不倫の場合に確保すべき証拠例
①配偶者と浮気相手がラブホテルに出入りしている写真・動画
②領収書やクレジットカード記録
③メールやSNSなどの画面
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(2)DV・モラハラの場合に確保すべき証拠例
①浮DVやモラハラが原因で負傷した際の診断書
②DV・モラハラの様子を記録したメモ
③DV・モラハラの様子を記録した音声や動画 ④電話やメール、LINEによる度を越えた監視は画面キャプチャを取る -
(3)悪意の遺棄の場合に確保すべき証拠例
①家に帰ってこない場合はそれを示す記録
②外にマンションやアパートを借りている場合の賃貸借契約書など
③生活費を受け取っていない場合は預金通帳や家計簿
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(1)浮気・不倫の場合に確保すべき証拠例
- 4、まとめ
1、離婚の慰謝料請求に関する基礎知識
まず、離婚の慰謝料請求に関する基礎知識として「そもそも慰謝料とは何か」ということと、「慰謝料請求ができる具体的なケース」について確認をしておきましょう。
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(1)そもそも慰謝料とは?
慰謝料とは、少し難しい言葉で表現すると「相手の行為によって自身が受けた精神的な損害に対する損害賠償金」のことです。
具体的に、精神的な損害とは、「苦しめられた」「悲しまされた」「辱められた」というような場合を指します。
民法では「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない」(710条)と規定されていますが、一般的に,この「財産以外の損害」には精神的な損害を含むと考えられています。
つまり、「配偶者の不誠実な行為によって苦しめられた(悲しまされた、辱められた)」結果として婚姻関係が破綻、離婚に至った場合は、配偶者に対して民法709条及び710条を根拠に慰謝料の請求ができる、ということになります。 -
(2)離婚の際に慰謝料請求できる具体的なケース
離婚における慰謝料の請求は、前述の通り「相手の不誠実な行為によって精神的な損害」を受けた場合にできる、というのが原則ですが、「相手の不誠実な行為」というのは具体的にどのような行為を指すのでしょうか。
以下に典型的なケースとして,3つ挙げてみます。
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①浮気・不倫(不貞行為)
まず最も典型的なのが「浮気・不倫」です。浮気や不倫は法律上「不貞行為」(貞操を守らないこと)と表現しています。
結婚しているにも関わらず、相手の不貞行為が原因で離婚に至った場合、不貞をされた側は、不貞をした側に対して離婚の際に慰謝料請求を行うことができます。 この不貞行為の成立には、配偶者とは別の相手と性的関係を持つことが要求されます。
ただし、キスやハグ、食事に行くだけの関係だったとしても、それが原因で離婚に至った場合には、慰謝料請求を行うことができる可能性はあります。
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②DV・モラハラ
次に近年増加している「DV」「モラハラ」といった行為です。
DVとは「ドメスティック・バイオレンス」の略称で、配偶者や恋人などから振るわれる肉体的暴力を指します。一方「モラハラ」とは「モラル・ハラスメント」の略称で、言葉や態度によって人の心を傷つける精神的な暴力や虐待を指します。
具体的には「『お前は生きている価値がない』などと日常的に言われている」「外出する際は常に電話やLINEで連絡がきて監視されている」「家の中のルールが厳しく、少しでも破ったりミスをしたりすると怒って暴れ出す」といったケースがモラハラに該当し得ます。
DVは「肉体的暴力」、モラハラは「精神的暴力」と言い換えることもできるでしょう。
ただし、DVやモラハラはその程度や頻度が問題になってきます。慰謝料を巡る裁判に発展した場合、たとえば週に1回程度平手打ちをされた、暴言を吐かれた、という程度ではDVやモラハラと認められないことがあります。
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③悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、簡単にいえば配偶者を放っておくことを指します。
民法では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」(民法752条)と規定されており、互いに同居義務、協力扶助義務があります。それにも関わらず、夫婦の一方が長い間浮気相手の家で暮らしている、妻が専業主婦にも関わらず夫が生活費を渡していない、といった行為があった場合、これらは悪意の遺棄ということになり、慰謝料請求をすることができる可能性があります。
以上3つが離婚の際に慰謝料請求できる典型的なケースです。
ちなみに離婚原因としてよくある「性格の不一致」では慰謝料請求ができません。
繰り返しになりますが、慰謝料請求ができるのはあくまでも「相手の不誠実な行為によって精神的な損害を受けた場合」です。
つまり、相手側に一方的に責任がある必要があるわけですが、「性格の不一致」の場合は必ずしもどちらが悪いということはいえず、ある意味「お互いさま」という側面があるため相手側の責任を追及することができない、ということになります。 -
①浮気・不倫(不貞行為)
2、離婚の慰謝料の相場は離婚原因で変わる
ここまで慰謝料についての基礎知識を確認してきましたが、最も気になるのは「慰謝料とは一体いくらぐらいもらえるのか」ということですよね。
こちらでは、前項で挙げた「浮気(不貞行為)」「DV・モラハラ」「悪意の遺棄」という3つのケースに分けて、具体的な慰謝料の相場についてご紹介します。
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(1)慰謝料の金額を左右する共通の要素とは
慰謝料の金額を決めるにあたって、共通して左右される要素というものがあります。
それは「婚姻期間」「双方の年収」「子ども(未成年者)の人数」の3つです。-
①婚姻期間
離婚に至るまでの婚姻期間が長ければ長いほど、慰謝料の金額は高くなる傾向にあります。
婚姻期間3年目で浮気をされるのと、婚姻期間30年を経て浮気をされるのとでは、浮気をされた側が受ける精神的な損害には一般的に大きな差がある、ということです。 -
②年収
慰謝料請求される側の年収が高い場合は、慰謝料の金額が高くなるケースが一般的に多いです。ただし、年収が300万円の人と600万円の人で比較した場合、年収が2倍になれば慰謝料の金額も倍になる、ということではありません。年収の高い人であれば、支払う金額も高くなる傾向にあるという程度です。 -
③未成年の子どもの人数
「未成年の子ども=養育が必要な子ども」ということになります。その人数が多ければ多いほど養育費が必要になるため、慰謝料の金額は高くなる傾向にあります。
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①婚姻期間
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(2)ケース別!離婚の慰謝料の相場
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①浮気・不倫による離婚の慰謝料の相場
相手の不貞行為、つまり浮気や不倫が離婚原因の場合、慰謝料の相場は概ね「50万円~500万円」です。金額に大きく差があるのは、基本的に慰謝料の金額はケースバイケースで決まるためです。
- 不倫期間が長い
- 不倫相手と同棲している
- 不倫相手が妊娠・出産した
- 不倫が原因で配偶者がうつ病になった
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②DV・モラハラによる離婚の慰謝料の相場
DVやモラハラが離婚原因となった場合、慰謝料の相場は概ね「50万円~300万円」です。 DV・モラハラの場合も、- DV・モラハラの期間が長い
- DV・モラハラの回数(頻度)が多い
- DV(モラハラ)が原因で配偶者が重い怪我や障害、後遺症を負った場合
- DV・モラハラが原因で配偶者がうつ病になった
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③悪意の遺棄による離婚の慰謝料の相場
「家に帰ってこない」「生活費を入れない」といった同居義務、協力扶助義務を果たさない悪意の遺棄が離婚原因の場合、慰謝料の相場は概ね「50万円~200万円」です。 悪意の遺棄の場合も、- 家に帰ってこない期間が長い
- 配偶者が専業主婦(主夫)にも関わらず生活費を入れない
- 働くことが十分可能であるのに働こうとしない
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①浮気・不倫による離婚の慰謝料の相場
3、慰謝料をもらうためには証拠の確保が大事
離婚をする際、相手から慰謝料を獲得するためには、離婚原因となった相手側の不誠実な行為(浮気やDV・モラハラ、悪意の遺棄など)を明確に証明するもの、つまり証拠を確保することが非常に大事になります。
なぜなら、あなたが「そっちの浮気が原因で離婚するのだから慰謝料を払って」と要求しても「浮気なんかした覚えはない!」と、相手にシラを切られてしまう可能性があるからです。
また、度重なるDV・モラハラを指摘しても「何回かそういうことがあったかもしれないけど、頻繁にはやっていないはずだ」と言い逃れをされることも考えられます。
そのような事態を防ぐためには、相手に言い逃れをさせないような証拠(物証)をきちんと揃えておく必要があります。
以下では、ケース別に押さえておきたい「不誠実な行為の証拠」をご紹介します。
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(1)浮気・不倫の場合に確保すべき証拠例
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①配偶者と浮気相手がラブホテルに出入りしている写真・動画
不貞行為、つまり浮気が原因で離婚が成立するには「配偶者以外との性的な関係」がある必要がありますが、通常は密室で行われるため、これを証明することは困難です。
しかしラブホテルは、一般的に専ら性行為をするために利用するものと考えられていますので、ここに出入りをしている写真や動画を確保すれば、性的な関係があったことを証明できる可能性があります。 -
②領収書やクレジットカード記録
これらは単体では浮気を示す証拠にはならないことが多いですが、積み重ねや、他のものと組み合わせることによって不倫を推認する証拠になることがあります。
たとえば、浮気相手の自宅付近にあるコインパーキングでの支払いを示す領収書が1枚あるだけでは弱いですが、これが10枚、50枚、100枚とあれば相手を追い詰める材料になり得ます。
クレジットカードの使用履歴も、あなた自身が使ったり一緒に行ったり、プレゼントとしてもらったりした記憶がないものは、その都度しっかりとチェックしておき、使われた日と配偶者の行動を紐づけておくことも後々不倫を示す証拠になるかもしれません。 -
③メールやSNSなどの画面
メールやLINEのメッセージなどで「好き」「愛してる」といったメッセージをやり取りしていたり、デートや旅行を伺わせるやり取りをしている記録があれば、浮気を示す大きな証拠になります。
また浮気相手のSNSに、あなたの配偶者と行ったであろう旅行の写真などがアップされている場合もあります。これは、前述のクレジットカードの使用履歴とつき合わせることによって、2人が一緒に出掛けていたことを示す証拠になる可能性があります。
ただし、配偶者の携帯のパスワードを勝手に解除したり、端末を操作してメールやLINEの中身を覗いたりすると、プライバシー侵害や不正アクセス行為に該当する可能性があります。
スマホのやり取りを証拠として活用したい場合は、専門家である弁護士に一度相談しておくと安心です。
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①配偶者と浮気相手がラブホテルに出入りしている写真・動画
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(2)DV・モラハラの場合に確保すべき証拠例
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①DVやモラハラが原因で負傷した際の診断書
肉体的暴力をふるわれた場合は、必ず病院に行って医師の診察を受け、診断書を作成してもらいましょう。
外傷はなくとも、モラハラのような言葉の暴力で精神的なダメージを受けている場合には、心療内科や精神科を受診して、診断書をもらっておくようにします。
医師の診断書は、傷や怪我を負ったことの証明にはなりますが、その原因がDVであることまで証明してくれません。しかし、他の状況証拠を合わせることで、診断書は証拠として有効となる可能性があります。そのため、怪我を負ったらなるべく早く医療機関を受診し、診断書を受け取るようにしましょう。 -
②DV・モラハラの様子を記録したメモや日記
殴られる、蹴られるといった肉体的暴力をふるわれた場合や、言葉や態度で精神的暴力をふるわれた場合は、できる限りその様子を具体的かつ克明に記したメモを残すようにしましょう。日々の行動記録としての日記は,特に有力な証拠となり得ます。
このメモもそれ単体ではDV・モラハラを示す証拠にはなりませんが、前述の医師の診断書と紐づけることによって証拠能力が高まります。「医師の診断書+具体的かつ克明なメモ」の組み合わせを積み上げることは配偶者のDV・モラハラを訴える上では効果的といえるでしょう。 -
③DV・モラハラの様子を記録した音声や動画
肉体的暴力や精神的暴力を受けた証拠としては、その様子を記録した音声データや動画データが非常に強力です。
最近は音声も動画もスマートフォンで簡単に記録することができますし、小型カメラやICレコーダーといった機器も小型化、低価格化していますのでおすすめです。 -
④電話やメール、LINEによる度を越えた監視は画面キャプチャを撮る
外出の際に電話やメール、LINEなどで過度に「どこで何をしているか」の報告を求める、といった行為はモラハラと評価される可能性のある行為です。電話やメールの着信履歴の画面や、LINEのメッセージ画面のキャプチャ(携帯電話等の画面に表示されているものを画像ファイルとして保存すること)を撮っておくべきです。
電話やメールの着信履歴は新しいものによって古いものが消されてしまうことがありますので、モラハラになるくらいの大量着信の記録は画面キャプチャで保存しておくと確実です。LINEのメッセージ記録は通常古いものも消えずに残りますが、スマートフォンの初期化等で古いものが消えてしまう可能性を考えると、こちらもやはり画面キャプチャを撮っておく方が安心です。
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①DVやモラハラが原因で負傷した際の診断書
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(3)悪意の遺棄の場合に確保すべき証拠例
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①家に帰ってこない場合はそれを示す記録
悪意の遺棄の1つに「家に帰ってこない」というものがありますが、この場合は「いつから家に帰ってこないのか」「たまには家に帰ってくるのか、あるいは全く家に帰ってこないのか」といった状況を示す記録を残しておくことが有効です。
手帳や日記などに配偶者の帰宅の有無を記録しておいたり、別居するに至った経緯を記録しておいたりするとよいでしょう。 -
②外にマンションやアパートを借りている場合の賃貸借契約書など
配偶者が家に帰ってこない場合は、「浮気相手の家に転がりこんでいる」「外に家を借りている」というケースが考えられますが、前者の場合はそれを示す証拠写真などが、後者の場合はそれを示す賃貸借契約書などが悪意の遺棄の証拠になり得ます。 -
③生活費を受け取っていない場合は預金通帳や家計簿
悪意の遺棄のうち「生活費を入れない」というケースの場合は、それを示す預金通帳や家計簿を用意しておきましょう。
配偶者の源泉徴収票や給与明細書、給与振込口座の通帳やそれらのコピーなどがあればお金の出入りが明らかになりますので、生活費をもらっていないことをある程度証明できる可能性があります。
これらの証拠を得ることができない場合、しっかり家計簿をつけておき「配偶者からもらったお金以外のお金で生活をしていた」ということを証明できるよう準備をしておきます。
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①家に帰ってこない場合はそれを示す記録
4、まとめ
以上、離婚の際の慰謝料に関する基礎知識と、慰謝料の相場、確保しておきたい証拠についてご紹介しました。
せっかく好き合って結婚したにも関わらず、離婚に至ってしまうのは残念ですが、婚姻関係を継続するのが困難となってしまった場合には、一旦リセットして新たな人生を歩み直すのは致し方ないことでしょう。
その場合、婚姻期間中にあなたが受けた精神的な損害を少しでも癒し、新たな人生の第一歩を踏み出すためにも、受け取るべき慰謝料はしっかり受け取ることが肝要です。本文をお読みいただいてお分かりのように、慰謝料交渉を有利に進めるためには、日ごろから配偶者の不誠実な行為の記録や証拠を集めておくことが非常に重要です。
離婚を決意したら,この記事を参考にした上で、できるだけ早い段階で離婚問題の解決実績が豊富な弁護士に相談し、サポートを受けることをおすすめします。
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