離婚裁判は大変? 必要な準備とかかる時間、途中でやめる方法
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「令和3年司法統計年報概要版(家事)」によると、令和3年にさいたま家庭裁判所に提起された婚姻関係事件はおよそ4117件あり、調停が不成立となったケースは 795件ありました。
妻や夫と話し合い、調停をしても離婚できなかったという場合には、離婚裁判でさらに離婚を求めることができます。非常に大変だと知られている離婚裁判を起こす以上、ただ離婚を認めてもらうだけではなく、できるかぎり自分が納得のいく条件で離婚したいという思いもあるはずです。
そこで、弁護士という存在が頼れるパートナーとして非常に重要となります。
離婚裁判を行う際に必要な準備や、具体的な期間、弁護士に依頼するべきかについて、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスの弁護士が解説します。
1、離婚裁判を起こすための条件
離婚裁判を起こすには、いくつかの条件を満たしている必要があります。協議離婚がまとまらないからといって、すぐに離婚裁判を起こすことはできないのです。
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(1)離婚調停の申立(調停前置主義)
離婚事件では、調停前置主義をとっています。調停前置主義とは、「裁判を起こす前に必ず調停を申し立てなければいけない」というルールです(家事事件手続法第257条)。家族のことは、「法律で判断する前に自分たちで話し合いましょう」という考え方に基づきます。
したがって、離婚裁判は、「家庭裁判所の離婚調停で話し合いがまとまらない(不調となる)」ことが条件となります。夫婦だけの話し合いで離婚がまとまらなかったとしても、必ず離婚調停で再度話し合うことが必要なのです。 -
(2)法定離婚事由があること
離婚裁判は、相手方が離婚に同意していないときに提起するものです。そのため、「裁判で離婚させるにふさわしい理由」がなければ離婚は認められません。この理由のことを「法定離婚事由(原因)」といい、民法770条1項で定められています。
民法が定めている法定離婚事由は、次の5つです。- ①不貞行為
- ②悪意の遺棄
- ③3年以上の生死不明
- ④強度の精神病に罹り、回復の見込みがないこと
- ⑤その他「婚姻を継続し難い重大な事由」があること
実際の離婚の場面でよくいわれる「性格の不一致」、「価値観の相違」といった離婚事由は、⑤の「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたる可能性があります。単純に性格が合わないというだけで離婚できるわけではありません。性格の不一致などが原因で、婚姻生活が破綻していると認められるかどうかが重要なポイントとなります。
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(3)有責配偶者からの離婚請求の場合
上記の法定離婚事由は、相手方に存在することが必要です。
離婚事由に該当する配偶者を「有責配偶者」とよび、この者からの離婚請求は、原則として認められません。
もっとも、有責配偶者からの離婚請求が絶対に認められない、というわけではありません。判例は、次の3つの要件や周辺事情を総合的に判断することで、有責配偶者からの離婚請求を認めています。
※出典元:裁判所ウェブサイト 最判昭和62年9月2日民集41巻6号1423頁- ①夫婦がすでに長期間別居していること
- ②夫婦の間に未成年の子どもがいないこと
- ③離婚によって相手方配偶者が精神的・経済的に苛酷な状況におかれないこと
2、離婚裁判を起こすための準備
離婚裁判を起こすには、必要な書類と費用を調えて家庭裁判所に提出する必要があります。
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(1)離婚裁判の提起に必要な書類
離婚裁判の提起に必要な書類は次のとおりです。
- 訴状 2部
- 夫婦の戸籍謄本およびそのコピー
- 離婚調停不成立調書
訴状の書式や記入例は、裁判所ウェブサイトから入手可能です。
> 訴状の書式や記入例
※出典元:裁判所ウェブサイト
なお、離婚とともに、年金分割における按分割合(年金を分割する割合)に関する処分の申立てをする場合は、年金分割のための情報通知書およびそのコピーも必要となります。
主張を裏付ける書類があれば、それも証拠として提出します。 -
(2)離婚裁判にかかる費用
離婚裁判にかかる費用は以下のとおりです。
- 提訴手数料(訴状に収入印紙を貼付して納めます)
- 予納郵券(裁判所からの書類送付に用いる郵便切手)
- 弁護士費用(弁護士に依頼する場合)
①提訴手数料
訴訟を起こすには、手数料を支払う必要があります。この手数料は、収入印紙で納付します。離婚を求めるだけであれば、手数料は1万3000円です。離婚とともに、財産分与、養育費などについて争う場合には、それぞれ追加で1200円の収入印紙を納める必要があります。
また、相手方に慰謝料を請求する場合、請求する慰謝料の額に応じて離婚裁判の手数料が高くなります。(請求する慰謝料の金額が160万円を超える場合)
なお、別居中の生活費などの支払いを求める婚姻費用分担請求は、離婚訴訟とは別に調停を申し立てる必要があります。
②予納郵券
収入印紙に加えて、裁判所が書類などを送付する際に必要となる郵便切手も納める必要があります。さいたま家庭裁判所の場合には、6000円分の切手を納めます。
③弁護士費用
離婚裁判を弁護士に依頼する際には、弁護士に支払う費用も必要です。弁護士費用には、相談料、着手金、事務手数料、報酬金があります。
当事務所では、離婚に関するご相談は初回無料です。(60分まで)
ベリーベスト法律事務所の費用については、こちらの弁護士費用でご確認ください。
3、離婚裁判の流れ
離婚裁判の具体的な流れについて確認していきましょう。
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(1)訴えの提起
離婚裁判は、原則として、夫または妻の住所地を受け持っている家庭裁判所に提起します。
上記に該当する家庭裁判所以外の家庭裁判所で離婚調停を行っていた場合、例外的に、その家庭裁判所への訴訟提起が認められることもあります。 -
(2)口頭弁論の実施
口頭弁論とは、主張や反論を行ったり、それを裏付ける証拠を調べたりする手続きです。
提出された訴状は、被告となった相手方に送付され、訴え提起から約1か月後に、第1回口頭弁論が開催されます。口頭弁論は、1か月に1度程度の頻度で開催されるのが一般的です。弁護士に依頼せずに離婚裁判を行うときには、自ら裁判所に出頭する必要があります。
訴状記載の内容(離婚事由など)に相手方が答弁書で反論してくれば、さらにこちらから再反論する必要も生じます。このとき、相手への反論内容や自分の主張を記載した「準備書面」とよばれる書面を作成し、裁判所と相手方へ提出する必要があります。
原告・被告の言い分に食い違いがあるときには、「証拠」の取り調べを行います。
証拠には、書証(文書)、物証(文書以外の「物」)、人証(当事者本人・証人など)があります。 -
(3)離婚裁判の終了
離婚裁判は、次の3つの場合に終了します。
- 判決
- 和解
- 訴えの取り下げ
離婚裁判の判決内容に不服があるときには、高等裁判所に控訴を申し立てることができます。控訴は、判決書の送達から2週間以内に行わなければなりません。家庭裁判所が判決を下した結果、離婚が成立したケースが「裁判離婚(訴訟離婚)」です。
他方で、離婚裁判の最中であっても、裁判官より和解をすすめられることがあります。判決を受ける前に、原告と被告が訴訟中の和解(話し合い)で離婚の合意ができれば、和解調書を作成し訴訟は終了します。この場合は、「和解離婚」と呼ばれます。
原告が訴訟を自主的にやめる(訴えの取り下げ)ことも可能です。
ただし、原則として、被告の同意が必要になります。 -
(4)離婚裁判にかかる期間
離婚裁判は、1、2年ほどかかることが多いです。親権や年金分割など附帯処分を多く申し立てるケースや、相手方が争ってきたケースでは、第1審だけで2年を超えるケースもあります。
令和3年の司法統計によると、全国の家庭裁判所で行われた家事裁判のうち、審理が終結するまでの期間は2年以内が最も多く、中には5年以上争っているケースもあるようです。
4、離婚裁判で弁護士に依頼をする必要性
離婚裁判は、弁護士に依頼せず自分だけで行うことも可能です。しかし、弁護士に依頼することで、次のようなメリットを得ることができます。
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(1)法的問題に適切な対応ができる
離婚裁判では法律に基づいた主張が必要です。「離婚したい」と主張しただけでは、離婚は認められません。法定離婚事由に沿って、法律的な主張をしなければなりませんから、一般の方にとっては、難しく感じることもあるでしょう。
また、離婚裁判では、離婚するかどうかだけでなく、親権者の指定、面会交流、養育費、財産分与、慰謝料といった離婚の条件にかかる問題を併せて決めることもあります。
これら附帯処分にかかる問題は、離婚できるかどうかと同じくらい重要な問題です。
離婚事件の実績豊富な弁護士のサポートがあれば、それぞれの請求や主張を適切に行うことができます。 -
(2)証拠調べに対応できる
裁判離婚を実現させるためには、離婚事由を証明するための証拠をそろえる必要がありますが、一般の方にとっては「何を集めたら良いのかわからない」ということも少なくないでしょう。また、本人尋問の際には、婚姻生活や離婚を決意した経緯などを、陳述書とよばれる文書にまとめる必要があります。しかし、自分で陳述書を作成することも大変な作業です。
弁護士へ依頼すれば、証拠の収集や陳述書作成にあたって的確なサポートを受けることができます。 -
(3)資料作成や出頭の負担を軽減できる
特に、お勤めのある方にとっては、各種資料の作成・裁判期日への出頭の負担は決して小さいものではありません。弁護士に依頼すれば、訴状・準備書面の作成や、裁判期日への出頭も依頼人に代わって行いますから、ご本人の負担を必要最低限に抑えることができます。
まとめ
離婚裁判を行う場合、話し合いとは異なり、裁判では「法律に基づいた議論」を行わなければなりません。また、証拠を適切に提出することも重要です。相手方が弁護士を付けることもあるでしょう。さらに、自分だけで裁判を進める場合には、仕事を休んで平日の日中に裁判所へ出頭する必要があります。解決するまでに、1年以上かかる場合もありますから、出頭の負担も決して軽くありません。
離婚は、人生の新しいスタートとなる重要な出来事ですから、万全な体制で臨む必要があります。養育費や財産分与、面会交流などの条件について妥協をしてしまうと、その後の人生に大きな影響を及ぼしてしまう可能性があるのです。
離婚のことで少しでもお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスの弁護士へお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています