離婚時の財産分与で株式があるときはどうすべき? 対応方法と考え方

2020年11月11日
  • 財産分与
  • 財産分与
離婚時の財産分与で株式があるときはどうすべき? 対応方法と考え方

さいたま市のホームページでは、「さいたま市の人口動態総覧」として、離婚件数などを公表しています。平成30年には1955組が離婚しており、その数だけ財産分与が行われた可能性があるといえるでしょう。

財産にはさまざまな種類のものがあります。なかには不動産や株など、分割しにくい財産もあり、分割せずに別の方法で財産分与をしたほうが結果的によいと考えられる財産もあります。

そこで本コラムでは、財産分与の基本的な考え方から株式のタイプに分けた財産分与の対応方法を、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスの弁護士が解説します。

1、財産分与の意義と共有財産

離婚は、配偶者との婚姻関係を解消する手続きです。婚姻期間中は同一だった家計も離婚に伴い別々のものとなります。そこで、婚姻期間中に夫婦で築き上げた有形・無形を問わないさまざまな財産を離婚に伴い清算する手続きとして財産分与が行われます。

  1. (1)財産分与とは?

    民法第768条第1項では、「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」と規定しています(この規定は裁判上の離婚についても準用されています)。どのように財産分与を行うべきなのかということについては、具体的に明記した条文はありませんが、離婚における財産分与の割合については「2分の1ずつ」がスタートラインになることが一般的といえるでしょう。

    たとえば夫が働き収入を得て、妻が専業主婦で無収入であったとしても、財産分与は行われます。なぜなら、生活に欠かせない家事や育児などを妻が担っていたからこそ夫は働くという経済活動に集中でき、結果、婚姻生活を続けることができていたと考えられるためです。
    ただし、前述のとおり、法律上必ず財産分与をしなければならないと規定されているわけではありません。財産分与の割合についても、民法やそのほかの法令による明確な規定がないのです。そこで、一般的には、夫または妻の財産形成における貢献度合いなどを考慮しながら、夫婦間の話し合いが行われることになるでしょう。

    夫婦間での話し合いがまとまらない場合は、調停・審判・裁判という手続きで最終的な財産分与の割合を決めていくことになります。

  2. (2)共有財産とは?

    民法上、共有財産と推定される財産は、婚姻期間中に夫婦が実質的に共同で形成・維持してきた財産といえるものすべてです。

    夫婦どちらの名義の財産なのか、あるいは夫婦それぞれの稼得能力はどうだったのかという点は基本的に考慮されません。たとえ夫(妻)が高額所得者であり、その配偶者が専業主婦(夫)だったとしても、夫婦のいずれかの名義になっている預貯金や株式などの金融資産、生命保険の解約返戻金、自動車、不動産、骨董品、ゴルフ会員権など、夫婦が婚姻期間中に形成・維持してきた財産は、すべて共有財産として財産分与の対象になりえます。

    なお、著作権などのように個人の一身に専属する財産は、財産分与の対象とならないとする考えが一般的です。また、結婚前から所有していた財産や、結婚後に婚姻生活とは関係なく、相続によって取得した財産については特有財産といって、財産分与の対象とならないと考えられています。

  3. (3)財産分与の方法は?

    財産分与の方法には、以下の3種類があります。

    ●清算的財産分与
    財産分与のうち、清算的財産分与はもっとも一般的に用いられている考え方・方法です。先述した財産分与の基本的な考え方に基づき、婚姻期間を通じて夫婦で形成・維持してきた財産はすべて共有財産とし、財産名義に関係なく夫婦それぞれの貢献度に応じて、離婚時に分配するというものです。

    不倫や暴力など離婚の原因を作った有責配偶者であっても、相手方に財産分与を求めることが可能です。

    ●扶養的財産分与
    離婚をすることで夫婦の一方の生活が困窮してしまう場合があります。たとえば、夫婦の一方が病気や高齢などの理由で働くことができず生活費の稼得能力がないケースです。

    そのような場合に、夫婦の一方の稼得能力など諸事情を考慮したうえで、生活費の支払いなどの名目で離婚後も夫婦の一方を実質的に扶養する目的で行われる財産分与が、扶養的財産分与です。しかしながら、実際にこのような財産分与が行われることは多くないといえるでしょう。

    ●慰謝料的財産分与
    夫婦の一方に家庭内暴力や不倫などの離婚原因があった場合、離婚原因を作った側から相手方に対して慰謝料を支払うケースは多いものです。そのようなケースにおいて、慰謝料分を加味して行われる財産分与のことを、慰謝料的財産分与といいます。

2、財産分与しなければならない株式は?

先述した財産分与の基本的な考え方に基づき、婚姻後に夫婦の一方が取得した株式であれば共有財産となります。これに当該株式の名義、あるいは上場株式であるか、非上場株式であるかという点は関係ありません。

ただし、特有財産にあたる株式は、財産分与の対象になりません。たとえば、婚姻前から夫婦の一方が個人名義で所有していた株式や、相続によって受け継いだ株式は、特有財産となります。

会社経営者が離婚する場合、会社名義の株式はどうするのかが問題になるケースがあります。原則、会社の資産は会社のものとなりますので、財産分与の対象にはなりません。ただし、実質夫婦で経営していた会社の名義になっている資産や、実質的に個人資産であるとみなされた場合、財産分与の対象となったという裁判例があります(大阪地判昭48.1.30判決、東京高判昭54.9.25判決、他)。最終的には、会社名義の株や資産などについては、実際の会社経営の状況など、個々の事情を配慮して判断していくことになるでしょう。

3、株式を財産分与する方法

株式の財産分与は、それが上場株式であるか、それとも非上場株式であるかによって分与の方法が異なります。特に非上場株式については注意が必要です。

  1. (1)上場株式のケース

    上場株式の財産分与の方法としては、①株券の名義書き換え、②証券会社を通じて市場で売却し現金化したうえで分与するという、2種類の方法が考えられます。

    このうち、名義書き換えによる財産分与は証券会社などでの手続きが煩雑なうえ、贈与とみられる可能性があることは気を付けたほうがよいといえるでしょう。

    市場で売却し現金化する方法であれば、共有財産の額が時価になり、かつ現金で分与するため客観的かつ公平性があるといえます。したがって、財産分与の対象資産に上場株式がある場合は、市場で売却し現金化したうえでそれを分与する方法がおすすめです。

  2. (2)非上場株式のケース

    上場株式と異なり、非上場株式は証券会社を通じて市場で売却することができません。したがって、買い取りを希望する第三者を探す必要があること、また、金額を交渉する必要があることが難点です。当該非上場株式の財産分与上の価額をめぐって、配偶者と話し合いがまとまらなくなることも想定されます。

    特にあなたが会社のオーナー経営者であり、婚姻後にその会社の株式の一部をあなた(あるいは配偶者)が保有、つまり出資している場合は、注意が必要です。上場・非上場を問わず、会社への出資持ち分も財産分与の対象となります。つまり、あなたが婚姻期間中に出資して会社を設立した、あるいは増資した分の出資持ち分についても、財産分与の対象となるのです。

    配偶者があなたの会社に出資しているということは、配偶者が株主としてあなたの会社の財産権を保有していることと同一です。したがって、配偶者の出資持ち分を離婚後も残したままでは、配偶者は会社の経営に参画する権利、株主配当金を受け取る権利、および会社に対して出資持ち分の買い取りを請求する権利などがあるといえます。

    婚姻期間中であればともかく、離婚後においてもこのような状態を継続することは、会社を経営するうえでのトラブルの原因になる可能性もあります。そのため、離婚時に配偶者の出資持ち分を買い取るなどして、配偶者の出資持ち分をゼロにしておくことをおすすめします。

    財産分与や買い取りを行う際、算定の根拠となる非上場株式の価額は、基本的に当該株式の「時価」です。価額の算定方法については、弁護士や税理士に相談するとよいでしょう。

    また、あなたが婚姻期間中に会社を設立し、その際に配偶者または配偶者の実家から資金援助があった場合においても注意が必要です。もし当該資金援助が会社の設立とその後の事業展開に大きく貢献し、それによって夫婦の財産形成に大きく貢献したと認められる場合は、たとえ配偶者や配偶者の実家が会社の株主ではなかったとしても当該資金援助の金額や経緯などが考慮され、財産分与の対象となる可能性があります。

4、弁護士に相談したほうがよいケース

株式はもちろんのこと、そもそも財産分与の方法がわからないというケースは少なくないでしょう。
具体的には、以下のケースに該当する場合、できるだけ早いうちに弁護士に相談することをおすすめします。

  • 配偶者が不当に高い財産分与を請求してきている
  • 相手が提示している財産分与の条件が妥当なものなのかわからない
  • 相手が財産分与や年金分割に応じようとしない
  • あなたが離婚原因を作ってしまったため配偶者から高額な財産分与と慰謝料を請求されている
  • お互いに感情的になってしまい夫婦間での協議がまとまりそうにない
  • 調停や裁判になりそう
  • そもそも離婚に関する法律や制度のことがわからない


弁護士であれば、離婚に関する法的なアドバイスはもちろんのこと、あなたの代理人として配偶者と交渉し、円満な離婚に向けた働きが期待できます。特に配偶者が弁護士を代理人としてきた場合、あるいは調停や裁判への移行が想定される場合は、あなた自身だけで解決を試みようとすると思わぬ結果に陥るおそれもありますので、お早めに弁護士に相談したほうがよいでしょう。

5、まとめ

結婚と比べると、離婚はさまざまな面で負担が大きいものといわれています。特に財産分与は夫婦双方の利益が相反するものであることから、経済的な負担だけではなく精神的な負担も大きいでしょう。特に、株式のように財産分与の方法について検討しなければならない資産があると、それによりいろいろな悩みが生じてしまうこともあるのではないでしょうか。そのようなとき、弁護士があなたの心強いパートナーになります。

離婚に伴う財産分与問題について、豊富な知見がある弁護士であれば、法的なアドバイスはもちろんのこと、あなたの代理人として配偶者との交渉や調停・裁判のやり取りを行うなど、あなたをサポートするためにベストを尽くします。株式にかぎらず財産分与のことでお悩みのときは、ぜひお早めにベリーベスト法律事務所 大宮オフィスの弁護士にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています