相続手続きに必須な戸籍謄本を急いで取り寄せたほうがいい理由とは?
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さいたま市の公表している資料(さいたま市の人口異動(平成30年中))によりますと、平成30年に大宮区では1019名が死亡しています。人の死亡に伴い発生するのが相続です。
相続手続きをするにあたり、被相続人について生まれてから死亡するまでの戸籍謄本をすべてそろえたほうがよいことをご存じでしょうか。場合によっては、すべてそろえておかなければ、相続人自身が相続放棄できない場合もありえます。
なぜ被相続人の「生まれてから死亡するまで」の戸籍がすべて必要となるのか、そしてどう戸籍謄本をそろえればよいのかについて、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスの弁護士が解説します。
1、そもそも戸籍謄本とは?
そもそも戸籍謄本とはどのようなものでしょうか。前提として戸籍について解説します。
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(1)戸籍謄本の基礎知識
戸籍は、出生・死亡・婚姻・離婚・縁組・離縁等の重要な親族法上の身分関係を登録し、公証する公文書です。身分や親族関係を証明する機能を持っているのです。
戸籍と似たような記録に住民票がありますが、住民票は、個々の住民につき、その住民に関する氏名、住所などの事項を記載する帳票をいいます。住民票は、住民の居住関係を公証するものです。
戸籍は、夫婦とその未婚の子どもで構成されて記録されています。そのため生まれた子どもは、夫婦の戸籍に登録されるのです。
婚姻をする際は、新しく戸籍を作成することになります。戸籍をつくる際に、本籍地を設定しますが、この本籍地はどこに設定しても構いません。婚姻によって新しい戸籍をつくる際に、両親と同じ本籍地としても、違う戸籍として扱われることになります。
ただし、戸籍謄本を請求する際には、本籍地を管轄する地方自治体になります。したがって、普段住んでいる場所から本籍地が遠い場合には、戸籍謄本を請求する場合に手間がかかるデメリットがあります。
ただし、本籍地は手続きにより変更することができます。 -
(2)戸籍謄本について
前述のとおり、戸籍自体は、親族関係など身分を証明する記録です。戸籍謄本とは、戸籍について書かれている事項全部を証明する証明書をいいます。戸籍に記載されている一部について記載された書類は戸籍抄本と呼ばれます。
一般に市役所などへ行って戸籍をもらうというのは、実は戸籍謄本や戸籍抄本を発行してもらうことである、といえます。 -
(3)戸籍の変更について
戸籍は、前述のとおり一定の変動があります。生まれた場合は元にある戸籍に加えられますが、死亡したときは外されます。婚姻によって、親の戸籍を出て夫婦で新しい戸籍をつくる際も、従前の戸籍から外されます。この外す行為を除籍といいます。
離婚した場合、筆頭者の戸籍の記載はそのままですが、他方、一方の配偶者はもといた戸籍に戻る場合や新しい戸籍をつくる場合があります。離婚後に名乗る姓やもといた戸籍があるかないかによってなど、どの戸籍に入るのかは、個々のケースによって異なります。 -
(4)なぜ生まれてから死亡するまでのすべての戸籍謄本が必要なのか?
相続は、被相続人(自らの財産を相続される人、つまり亡くなった方)が、死亡した直後に発生します。相続をするのは、一般的に配偶者や被相続人の子ども、直系尊属や直系卑属など、民法上の法定相続人が行うことになります。そのため、相続が発生したら、まずは誰が相続人の資格があるのか明確にしたうえで、相続手続きや遺産分割協議を行う必要があるのです。
しかし、離婚や養子縁組などに伴い、家族が認識していないところで子どもがいる場合もあります。法定相続人が誰であるかを明確にできなければ、権利関係がいつまでも定まりません。ほかにはいないだろうと決め込んで相続手続きを行ったとしても、あとからそのほかに法定相続人がいることが発覚したら、分割協議からやり直す必要があります。
相続手続きに戸籍謄本が必要となる理由は、誰が法定相続人にあたるのか特定するためです。その調査のために、相続が発生したタイミングで被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍謄本をすべてそろえなければなりません。
2、相続の際、急いで戸籍謄本を確認すべき理由とは?
なぜ相続が発生した際に、急いで戸籍謄本を確認したほうがよいのでしょうか。それは、相続手続きには被相続人の死亡から期限が決められているためです。たとえば相続放棄をするのであれば、その期限は相続を知った日から3か月になります。
また、戸籍謄本をすべてそろえるのは時間や手間がかかるものです。場合によっては、相続手続きで定められた期限に間に合わず、受けられる税制優遇ができないなどの可能性が出てくることは否定できません。
3、戸籍謄本・除籍謄本の取り寄せ方法とは?
戸籍謄本や除籍謄本の取り寄せ方法は、管轄する自治体によって異なります。基本的には、直接自治体の窓口へ行って請求するか、郵送で請求します。
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(1)取り寄せる順序
戸籍を取り寄せる順番としては、まずは、亡くなる直前に本籍地にしていた場所の戸籍謄本を請求するようにします。本籍地がわからない場合もご安心ください。本籍地がわからない場合は、記載の省略のない住民票に記載されていますので、まずは最後に住んでいた住所地を管轄する地方自治体の窓口で住民票を請求しましょう。
現在、戸籍はコンピューターで横書きに管理されていますが、従前は縦書きでした。そのため、改製という記載がされているときは、縦書きの戸籍が存在することになります。改製前の戸籍である原戸籍を取るようにしましょう。
戸籍に次の記載があるときは、参考にして請求します。
・転籍
転籍前の本籍地を管轄する地方自治体において、除籍謄本を請求します。
・婚姻
婚姻前の父母の本籍地を管轄する地方自治体において、父か母が筆頭者となっている戸籍謄本や除籍謄本を請求します。
・分籍
分籍前の本籍地を管轄する地方自治体において、戸籍謄本や除籍謄本を請求します。
・養子縁組
養子縁組を単身者が行うと、基本的には、養親の戸籍に入ることになります。そのため、養子縁組前の戸籍謄本を請求することになります。
このようにして、記載を手がかりにさかのぼって戸籍謄本を請求することになります。各地方自治体が近郊の場合は、直接足を運んで請求することが可能ですが、そうでない場合は、ひとつひとつを郵送請求することとなり、記載を読み解いては、請求という方法を繰り返していくため、すべてそろえるまでには時間をかなり要する場合があるでしょう。 -
(2)直接窓口で請求する方法
戸籍謄本を直接窓口で請求する場合、窓口に置いてある請求書などに必要事項を記載し提出します。その際に、請求者の本人確認がなされるので、本人確認書類を忘れないようにしましょう。
運転免許証やパスポートなど顔写真入りの公的証明書がある場合はそのまま提示することができます。しかし、顔写真入りの公的な身分証明書がない場合は、健康保険証と年金手帳など2種類を求められる自治体が多いため、注意が必要です。
窓口で手続きをしたあと手数料を納めると、戸籍謄本などを受け取ることができます。 -
(3)郵送で請求する方法
郵送で請求する場合は、その地方自治体の手続きに従います。たとえばさいたま市の場合、請求書は定められた書式だけでなく、請求書として必要事項を記載した書類でも添付することができます。自治体によっては請求書をホームページなどからダウンロード印刷し必要事項を記載したうえで送付する必要がある自治体もあるため、請求方法が記載されたホームページなどをきちんと確認しましょう。わからないところなどは電話で問い合わせることもできます。
次に、自治体が求める請求書とともに、手数料分の定額小為替を同封します。現金でも請求が可能な場合は、現金書留を利用して請求することもできるでしょう。さらに請求する方の本人確認書類のコピーと返信用の封筒を同封し、決められた請求先に送付します。
いずれにしても、各自治体の定める形式で提出することが肝要です。詳しくは各自治体に確認をとられることをおすすめします。
4、時間がないときは弁護士へ相談を
相続人などの家族が自分たちで戸籍謄本などすべてをそろえることは、非常に手間暇がかかることです。特に、大切なご家族が亡くなった直後ですから、心身ともに余裕がない方も少なくないでしょう。
そのようなとき、弁護士に取り寄せを依頼できます。弁護士であれば、戸籍を取り寄せるだけではなく、相続そのものの相談をする、遺産分割協議書作成についてのアドバイスをすることも可能です。一度も会ったことがなかったり、事情により会いたくなかったりする法定相続人がいる場合は、あなたの代理人として連絡を取り、協議に参加したもらうことも可能です。ご自身で悩まずに相談されてみてはいかがでしょうか。
5、まとめ
相続手続きは、被相続人の財産などを承継する際に必要な手続きです。その手続きには被相続人の「生まれてから死亡するまで」のすべての戸籍謄本を手に入れる必要があります。結婚などしていれば、必ず複数の戸籍謄本となるため、すべてをそろえるには時間を要する場合がほとんどです。
そのため、相続が発生した場合、急いで戸籍謄本を確認しなければなりません。もっとも、ご自身で対応することが難しい、時間がない、ほかの相続人との交渉が必要な場合などのケースでは、弁護士などの専門家に請求を依頼してください。ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスでは、相続手続きのサポートを行います。ご相談の時点で必要があれば、グループ法人の税理士からのアドバイスを受けることも可能です。まずはお気軽にご相談ください。大宮オフィスの弁護士が力を尽くします。
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