公職選挙法違反にあたる行為とは? 個人でも逮捕されうるケース

2023年10月12日
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公職選挙法違反にあたる行為とは? 個人でも逮捕されうるケース

令和5年5月、令和5年4月に行われた県議選の公示前に有権者に対して飲食接待を行った容疑で逮捕されていたとある政党の支援者が略式起訴され、さいたま簡易裁判所が罰金40万円の簡略命令を行ったという報道がありました。

選挙があると、公職選挙法違反による逮捕の報道を頻繁に目にします。確信犯的に違反行為に手を出す候補者もいるようですが、なかにはご自身が特定の候補者を当選させたい、もしくは当選させたくないと思い、公職選挙法違反である認識がないまま違反行為をしてしまう候補者や一般の有権者もいるようです。

本コラムでは、ご家族が公職選挙法における違反行為と罰則から万が一逮捕されてしまった場合にとるべき手段について、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスの弁護士が解説します。

1、公職選挙法とは?

公職選挙法とは、選挙が適正に行われることで民主政治を健全に発展させることを目的として、選挙の方法や議員の定数などのルールを定めた法律です。

公職選挙法が規定している主な事項は、以下のとおりです。

  • 選挙権および被選挙権
  • 選挙の区域
  • 選挙人名簿
  • 在外選挙人(海外にいながら国政選挙に投票できる人)名簿
  • 選挙の期日
  • 投票および開票
  • 選挙会および選挙分会
  • 公職の候補者
  • 立候補者による金銭の供託
  • 当選人
  • 特別選挙
  • 選挙を同時に行うための特例
  • 選挙運動と、それに関する収入および支出ならびに寄附
  • 参議院(選挙区選出)議員の選挙の特例
  • 政党その他の政治団体等の選挙における政治活動
  • 争訟および罰則

2、公職選挙法違反にあたる行為とは?

公職選挙法には極めて多種多様な禁止行為と罰則規定が定められており、非常に複雑です。

本記事で紹介する事項は、その代表的なものにすぎません。たとえ以下に当てはまらなくても、公職選挙法違反容疑をかけられたときは、弁護士に相談することをおすすめします。

  1. (1)買収および利益供与

    選挙の前後を問わず、買収は禁止されています。

    もし投票人に自分へ投票することの見返りとしてお金などを渡した場合あるいは何らかの便宜を図った場合は、買収行為として3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金が科せられます(公職選挙法第221条)。

    同様に、他の立候補者に対して立候補をやめさせることなどを目的に買収する行為も禁止されており、これに違反すると4年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金が科せられます(同第223条)。これらの規定は候補者だけでなく選挙運動人にも適用され、さらに買収された投票人にも罰則が適用されることがあります。

  2. (2)選挙妨害

    選挙妨害の規定と罰則は、非常に多岐にわたります。

    • ライバルの立候補者や選挙運動人に対し、暴力や脅迫などの手段で妨害する行為。あるいは選挙ポスターを破ったりする行為……4年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金(同第225条)
    • 公務員などの選挙事務関係者が、職権を濫用して選挙の自由を妨害する行為……4年以下の禁錮(同第226条)
    • 正当な理由がないのに、投票所や開票所で有権者の投票に干渉したり、誰に投票したか調べたりする行為……1年以下の禁錮または30万円以下の罰金(同第228条)
    • 選挙事務関係者に暴行や脅迫を加えたり、選挙会場で騒いだり投票箱に手を出すような行為……4年以下の懲役または禁錮(同第229条)
    • 多人数で選挙を妨害する行為……首謀者は1年以上7年以下の懲役または禁錮、率先して他人を指揮した者は6か月以上5年以下の懲役または禁錮、随行者は20万円以下の罰金または科料(同第230条)
  3. (3)虚偽事実の公表

    当選したいために、自分の経歴などを偽って公表した場合は2年以下の禁錮または30万円以下の罰金が科されます(同第235条)。また、他の候補者を落選させる目的でその候補者の経歴などを偽って公表した場合は、4年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金が科されます(同第235条)。

  4. (4)選挙人名簿への不正登録

    詐欺によって選挙人名簿に登録した場合は6か月以下の禁錮または30万円以下の罰金、虚偽の宣言によって投票した場合は20万円以下の罰金が科されます(同第236条)。

  5. (5)不正投票

    選挙人でないのにもかかわらず投票すると1年以下の禁錮または30万円以下の罰金、詐欺行為により投票すると2年以下の禁錮または30万円以下の罰金が科されます(同第237条)。

  6. (6)戸別訪問

    自分への投票を促す目的で有権者の自宅などに訪問すると、1年以下の禁錮または30万円以下の罰金が科されます(同第239条)。

  7. (7)事前運動

    同法第129条の規定により、選挙運動ができる期間は選挙の公示・告示日から選挙期日の前日までに限定されています。これに違反すると、1年以下の禁錮または30万円以下の罰金が科せられ(同第239条)、さらに選挙権と被選挙権が停止されます(同第252条)。

  8. (8)文書図画の頒布の規制

    選挙運動に使用できるポスターやビラなど文書図画の数やサイズは、公職選挙法第142条に規定されています(インターネット等を利用する方法を除く)。これに違反すると、2年以下の禁錮または50万円以下の罰金が科せられ(同第243条)、さらに選挙権と被選挙権が停止されます(同第252条)。

3、逮捕されないようにするためには?

もしご家族に公職選挙法に違反する行為があることがわかった場合は、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

状況を確認したうえで、自首を検討したほうがよいでしょう。「自首」とは、警察などの捜査機関に犯罪の事実が発覚する前あるいは犯人とわかる前に、犯罪を行った人が自ら出頭して犯罪の事実を申し出ることをいいます。

自首が成立すると、身柄拘束を回避できる可能性があります。そもそも、身柄拘束が伴う「逮捕」や「勾留(こうりゅう)」は、容疑者に逃亡や罪証隠滅のおそれがある場合に限り裁判所によって認められるものです。したがって、容疑者が自首したという事実により、逮捕・勾留される可能性は低くなると考えられます。

もし逮捕を回避できれば、起訴・不起訴が確定するまでの間は在宅事件扱いとなります。在宅事件扱いになれば、捜査機関による取り調べなどの要請に応じる他は、普段と変わらない生活が送ることができます。また、自首することで事情聴取あるいは逮捕のために、捜査当局が他のご家族や勤務先へ接触する可能性が低くなることもメリットといえるでしょう。

弁護士であれば、自首する際に警察まで同行することが可能です。そして、逮捕・勾留を回避するために捜査機関に対して逃亡や罪証隠滅のおそれはないと、しっかりと説明することができます。

なお、候補者やすでに議員という立場になられているのであれば、万が一、公職選挙法違反容疑で逮捕されてしまえば、誹謗中傷やメディア対応などあらゆるシーンで影響を受けてしまう可能性が高まります。あらかじめ、政治家顧問弁護士サービスなどを利用することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所では、地方議員や国政での議員秘書経験がある弁護士を中心とした、議員法務専門チームがあなたのお悩みやトラブルを解決までサポートします。まずはお気軽にご相談ください。
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4、逮捕された本人を助けるために、家族ができることとは?

逮捕されたあとは不起訴処分にならない限り、送検、起訴という流れになります。警察に逮捕されると、証拠隠滅や逃亡の危険性はないと判断された場合、嫌疑がない、または不起訴処分が相当と判断された場合を除いて、数日以上にわたって留置所や拘置所で勾留されることが一般的です。

  1. (1)逮捕されたあとの流れは?

    逮捕後は警察で取り調べを受け、48時間以内に身柄が検察庁へ送られます。これを「送致」と呼びます。事件の内容などが考慮された場合はこの時点で釈放され、「書類送検」になる場合もあります。そして検察官は送致より24時間以内に勾留請求するかどうかの判断をします。

    逮捕されてから起訴されるまでは、最長で23日間も勾留されることがあります。さらに、裁判の期間を含めると長期間の勾留となる可能性も考えられるでしょう。長期にわたる身柄拘束により受ける影響は、公私にわたって大きなものになってしまう可能性を否定できません。

    取り調べが終わったのち、起訴されると刑事裁判の被告人となり、裁判にかけられることになります。これは在宅起訴でも同様です。日本における刑事裁判では、起訴されてしまうと99%以上の確率で有罪となります。有罪判決が確定すれば前科がつくことになるため、早期の自首や被害者との示談成立により不起訴処分を得ることが何よりも重要なのです。

  2. (2)家族ができることは?

    逮捕後から最長72時間は、外出はもちろん外部との連絡が厳しく制限されます。また、勾留されたあとも弁護士以外の接見(面会のこと)が禁止される「接見禁止」がつけられ、ご家族であろうと面会ができなくなることもあるでしょう。

    逮捕されたご家族の状況を案じるつらい心境は、測りしれないものがあります。しかし、外にいるご家族ができることは限られてしまうということです。

    そのようななかで家族ができることは、刑事事件の解決に豊富な実績と経験をもつ弁護士に、逮捕された人の私選弁護人を依頼することといえます。

    たとえば弁護士であれば、逮捕直後であっても接見することが認められています。取り調べなど一連の刑事手続きや被疑者としての権利に関するアドバイスはもちろんのこと、逮捕された人とその家族の橋渡しとしての役割も期待できます。そのうえで、早期釈放に向けた弁護活動を行うことができるでしょう。

5、まとめ

家族が公職選挙法違反で逮捕されてしまったときは、非常に驚くとともに動揺されているのではと思います。しかし、早期の釈放に向けて直接的に家族ができることは、ほとんどありません。できるだけ早く弁護士を依頼したほうがよいでしょう。

万が一、ご家族が逮捕されてしまったり、公職選挙法違反容疑によって任意同行などを求められていたりするときは、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスで相談してください。1日でも早く日常を取り戻せるよう、刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士が最善を尽くします。

また、既に議員という立場になられている方が公職選挙法違反として逮捕されてしまうと、致命的なダメージを受けてしまう可能性は否定できないでしょう。そのような事態に陥らないよう、あらかじめ議員法務についての知見が豊富な弁護士と顧問契約を結んでおくことをおすすめします。ベリーベスト法律事務所でも、政治家顧問弁護士サービスを提供しております。お気軽にお問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています