チート行為は犯罪! 逮捕事例から問われうる罪、罰則について解説

2024年07月31日
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チート行為は犯罪! 逮捕事例から問われうる罪、罰則について解説

警視庁のサイトでは「チート行為はやめましょう!」と題した注意喚起が掲載されています。実際に直近でも、ゲームキャラクターのデータを不正に書き換えて販売した男や、人気ゲーム「原神」の運営者がチート行為を行ったものを提訴するなどの事件が起きているのが現実です。

本コラムでは、チートの意味からチートをしたことで問われる可能性がある罪、警察からチート行為をした容疑をかけられてしまった場合の対処法について、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスの弁護士が解説します。


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1、オンラインゲームにおけるチート行為とは?

まずはチート行為の概要とチート行為が与える影響について把握をしておきましょう。

  1. (1)チートとは? どのような行為がチート?

    広い意味では、オンラインゲームでの「チート行為」には、不正な手段もしくはゲーム制作者があえて裏技として組み込んでいる操作によって、自分のキャラクターを有利にしたり、他者を攻撃したり、パラメーターを変えたりする行為があります。

    ゲーム制作者があえて裏技として組み込んでいる操作については問題がありません。ところが、ゲーム制作者が意図しない方法で、ゲームを改変するような行為は、次項以降で説明する犯罪行為に該当する可能性があります。ここでは、犯罪行為に該当する可能性のある「チート行為」に限って説明していきます。

    代表的なチート行為は以下の通りです。

    • ゲーム内通貨を不正な方法で増やす
    • アイテムを不正な方法で入手する
    • キャラクターのレベルを不正な方法でアップさせる
    • キャラクターを不正な方法で無敵状態にする
    • ゲームデータを不正な手段で操作してパラメーターを変える
  2. (2)チート行為がゲームに与える影響

    チート行為によって、自分が有利になるようにゲームを改変したり、パラメーターを操作したりすると、ゲーム運営会社に損害を与えるおそれがあります。

    ゲーム運営会社にとっては、チート行為により、ゲームバランスが崩れてユーザーが減少してしまったり、本来得られるはずだった課金による収入が減少したりする可能性があるからです。

    このように、チート行為は、ゲーム運営会社に損害を与えるおそれのある行為ですので、ほとんどのオンラインゲームでは規約によって禁止されています。さらに、最近は、チート行為を見つけるAIのリリースが発表されるなど、チート行為がこれまで以上に発覚しやすい傾向にあるといえます。

    なお、チート行為が発覚した場合には、ゲームのアカウントが凍結されるだけでなく、別に、ゲーム運営会社からチート行為をした者に対して、民事上の損害賠償請求がなされる可能性もあります

    また、以下に説明する刑事上の責任が問われることがあるでしょう

2、チート行為が「著作者人格権侵害」になる場合

チート行為は、著作権法上の「著作者人格権侵害」に該当する可能性があります。著作者人格権侵害の概要と著作者人格権侵害に該当するチート行為の事例、そして著作者人格権侵害にあたる場合に科される刑罰を確認しておきましょう。

  1. (1)著作者人格権侵害の概要

    著作権法上、ゲームは著作物にあたります。そこで、ゲームのプログラムやデータを改ざんするチート行為は、著作者人格権のひとつとして「著作権法第20条1項」で規定されている「同一性保持権」を侵害するおそれがあります

    同一性保持権とは、自分の著作物のタイトルや内容などを、自分の意思に反して改変されない権利です。

    チートによる同一性保持権の侵害事例は以下の通りです。

    【チートによる同一性保持権の侵害事例】
    • プレイヤーが到達したパラメーターの数値によって、プレイヤーの人物像が表現されていくというシミュレーションゲームにおいて、そのパラメーターをすべて高数値にし、ゲームのストーリーを本来予定された範囲を超えたものに改変するメモリーカードを輸入・販売した事例
    • 格闘ゲームのキャラクターを、通常のプレイでは衣服を身に着けない状態にはできないのに、衣服を身に着けない状態にできるプログラムをCD-ROMで販売した事例
  2. (2)著作者人格権侵害の刑罰

    上記の侵害事例はいずれも、民事上の損害賠償責任が問題となったものですが、著作権法20条1項の「同一性保持権」を侵害した者は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金、あるいはこれらの両方が科されるとされています。

3、チート行為が「電子計算機損壊等業務妨害罪」に該当する場合

チート行為は、刑法第234条の2で規定されている「電子計算機損壊等業務妨害罪」に該当する可能性もあります。電子計算機損壊等業務妨害罪の概要等を確認しておきましょう。

  1. (1)電子計算機損壊等業務妨害罪の概要

    電子計算機損壊等業務妨害罪とは、業務に使用する電子計算機やその業務に用いられる電磁的記録を損壊したり、電子計算機に虚偽の情報や不正な指令を与えたりすることによって、電子計算機に本来の目的に沿った動作をさせなかったり、本来の目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害したときに問われる犯罪です。ここでは、電子計算機とはコンピューター、電磁的記録とはハードディスクなどに記録されたデータと読み替えて問題はありません。
    チート行為は、チートツールを用いてゲーム作成者の意図しない動作をさせるものですから、この犯罪に該当する可能性があると考えられます。

    【電子計算機損壊等業務妨害罪に問われた事例】
    • ゲーム制作者の意図に反して、対戦ゲームのキャラクターの容貌を変化させたり、通常プレイでは用いることのできない攻撃方法を可能とするチートツールを作成・販売していた未成年者およびそのチートツールを使用していた未成年のユーザーが検察に書類送検された事例
  2. (2)電子計算機損壊等業務妨害罪の刑罰

    電子計算機損壊等業務妨害罪にあたる場合の刑事罰は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金です。

4、チート行為が「私電磁的記録不正作出・同供用罪」に該当する場合

チート行為は、刑法第161条の2で規定されている「私電磁的記録不正作出・同供用罪」が成立する可能性もあります。私電磁的記録不正作出・同供用罪の概要等を確認しておきましょう。

  1. (1)私電磁的記録不正作出・同供用罪の概要

    私電磁的記録不正作出・同供用罪とは、人の事務処理を誤らせるために、電磁的記録を不正に作ることや、不正に作成された電磁的記録をコンピューターで利用できる状態にすることを処罰するものです。ゲーム会社の事務処理を誤らせるためにゲームデータを不正に作る行為や、その不正データを利用してゲームをプレイする行為は、この犯罪に該当するおそれがあります。

    【私電磁的記録不正作出・同供用罪に問われた事例】
    • ゲームプログラムを改変した大学生に対して、私電磁的記録不正作出・同供用罪により懲役1年、執行猶予3年の判決がなされた事例
    • ゲーム内で不正にアイテムを取得したことにつき私電磁的記録不正作出罪で起訴された被告人に対して、ともに起訴されたチートツールの販売につき不正競争防止法違反(技術的制限手段回避装置提供)の罪と合わせて懲役2年、執行猶予4年の有罪判決がなされた事例
  2. (2)私電磁的記録不正作出・同供用罪の刑罰

    私電磁的記録不正作出・同供用罪の刑罰は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

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5、犯罪となり得るチート行為をしてしまったら弁護士へ相談を

これまでお話ししたように、チート行為はさまざまな法律に触れ、犯罪となり得る行為です。今回取りあげた事例は、チート用のツールを作成した、販売した、自分でゲームデータを操作してチート行為をしたものだけではなく、他人が販売等をしたチートツールを使用しただけで立件されたものもありました。その中には、ゲーム運営会社から民事上の多額の賠償金を請求される事例もありますので、チート行為をしてしまった場合は、できるだけ早い段階で弁護士に相談をして、今後の対応についてのアドバイスを受けましょう。

弁護士は、逮捕や起訴を回避するための弁護活動を行うと同時に、被害者との示談交渉も同時並行で進行できます。チート行為が発覚したら、報道される前に対応したほうがよいでしょう

6、まとめ

チート行為をしてしまうと、ゲームの運営会社などから損害賠償請求をされたり、警察の取り調べを受けたり逮捕されてしまう可能性があります。チートツールを使用したり販売したりしてしまった方や、チートの方法をインターネットに書き込んでしまったという方は、刑法犯罪や著作権法違反などの犯罪についての弁護活動に積極的に取り組んでいる、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスの弁護士にご相談ください。

刑事事件は早く対応すればするほど、日常生活への影響を最小限に抑えるための対策を行えるものです。刑事事件についての知見が豊富な弁護士が重すぎる罪に問われないようにするため、力を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています