特定外来生物とは? 規制する法律と違反したときの罰則など疑問解決
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さいたま市のホームページでは、さいたま市内で生息する生き物が紹介されています。絶滅危惧種などが紹介される中、外来生物のほか、特定外来生物としてアライグマやウシガエルなどが掲載されています。
最近、テレビ等で「特定外来生物」という言葉を聞くことが増えてきました。特定外来生物は、増加してしまうと国内の既存の生態系に対して重大な影響を及ぼすおそれがあるため、法律によって規制されています。
本コラムでは、特定外来生物の所持等を規制する法律の内容や、当該法律に違反した場合の罰則などについて、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスの弁護士が解説します。
1、特定外来生物を規制する法律
特定外来生物を規制する法律としては「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(外来生物法)というものがあります。以下では、特定外来生物とは何か、外来生物法による規制内容などについて説明します。
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(1)特定外来生物とは
特定外来生物とは、もともと日本にはいなかった生物(外来生物)であって、生態系、人の身体・生命、農林水産業などに影響を及ぼすおそれがあるものとして特に指定された生物のことをいいます。(厳密な定義は、外来生物法2条1項で定められています。)
特定外来生物は、生きているものに限られ、卵、種子、再生可能な器官も含まれます。
なお、外来生物と似た言葉に「外来種」という言葉があります。外来生物は、海外から日本国内に持ち込まれた生物をいうのに対して、外来種とは、もともとその地域にいなかった生物のことをいい、日本国内での移動も含む点が異なります。 -
(2)外来生物法による規制
外来生物法は、特定外来生物による生態系、人の身体・生命、農林水産業などに対する被害の防止を目的として、生態系などに影響を及ぼす外来生物を「特定外来生物」と指定し、その飼養、保管、運搬、輸入などの取り扱いを規制することを内容とする法律です。
外来生物法によって指定されている代表的な特定外来生物としては、以下の生物が挙げられます。
① 哺乳類
・フクロギツネ
・タイワンザル
・ヌートリア
・アライグマ
・キョン
② 鳥類
・カナダガン
・シリアカヒヨドリ
・ガビチョウ
③ 爬虫(はちゅう)類
・カミツキガメ
・ハナガメ
・アノリス・アルログス
・マングローブヘビ
・タイワンハブ
④ 両生類
・オオヒキガエル
・キューバズツキガエル
・ウシガエル
・シロアゴガエル
⑤ 魚類
・ガ-科の全種
・オオタナゴ
・ヨーロッパナマズ
・ブルーギル
・コクチバス
・オオクチバス
・ナイルパーチ
・ケツギョ
⑥ 昆虫類
・アカボシゴマダラ(アカボシゴマダラ奄美亜種は除く)
・クビアカツヤカミキリ
・アングラートゥスマルバネクワガタ
・テナガコガネ属の全種(ヤンバルテナガコガネは除く)
・セイヨウオオマルハナバチ
・アルゼンチンアリ
・ヒアリ
⑦ 甲殻類
・ザリガニ科の全種
・アメリカザリガニ科の全種(アメリカザリガニを除く)
⑧ クモ・サソリ類
・キョクトウサソリ科の全種
・アトラクス属の全種
⑨ 軟体動物など
・カワヒバリガイ属の全種
・クワッガガイ
・ヤマヒタチオビ(オカヒタチオビ)
⑩ 植物
・ボタンウキクサ
・オオキンケイギク
・ミズヒマワリ
・アレチウリ -
(3)アメリカザリガニは対象外
令和2年11月2日からアメリカザリガニ科の全種が特定外来生物に指定されました。しかし、日本国内に広く生育しているアメリカザリガニについては除外されています。
以下でも述べますが、仮に、特定外来生物として指定された場合、飼育に許可手続きが必要になります。許可手続きが必要になった場合、アメリカザリガニの大量の飼育放棄が生じる可能性が生じると考えられたため、特定外来生物生物に指定されなかったのです。
しかし、アメリカザリガニは、日本全国で広く繁殖しており、在来生物への影響が非常に大きいため、将来的には規制される可能性があります。
2、違反したときの罰則は?
特定外来生物が日本国内に放たれて定着してしまうと、生態系などに対して多大な影響を与えることが予想されるため、違反内容によっては重い罰則が科されます。
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(1)輸入関係
特定外来生物を許可なく輸入した場合には、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその両方の刑が科されます。法人の代表者によって行われた場合には、当該法人に対して、1億円以下の罰金が科せられます。
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(2)販売関係
許可を受けていない人に対して特定外来生物を販売・配布した場合には、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその両方の刑が科されます。法人の代表者によって行われた場合には、当該法人に対して、1億円以下の罰金が科されます。
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(3)飼養関係
特定外来生物を販売・配布目的で許可なく飼養した場合には、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその両方の刑が科されます。法人の代表者によって行われた場合には、当該法人に対して、1億円以下の罰金が科されます。
また、ペットとして飼養する目的で許可なく飼養した場合には、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはその両方の刑が科されます。法人の代表者によって行われた場合には、当該法人に対して、5000万円以下の罰金が科されます。
さらに、偽りや不正な手段によって特定外来生物の飼養許可を受けた場合には、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその両方の刑が科されます。法人の代表者によって行われた場合には、当該法人に対して、1億円以下の罰金が科されます。 -
(4)放出関係
特定外来生物を許可なく野外に放ったり、植えたり、まいたりした場合には、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその両方の刑が科されます。法人の代表者によって行われた場合には、当該法人に対して、1億円以下の罰金が科されます。
3、特定外来生物に関する素朴な疑問
特定外来生物に関しては、さまざまな疑問があると思います。特定外来生物に関するよくある質問に対する回答は、以下のとおりです。
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(1)特定外来生物をペットとして飼うことはできるのか?
特定外来生物を飼う場合の目的としては、学術研究、展示、教育などに限られています。したがって、新たにペットとして特定外来生物を飼育することはできません。
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(2)規制前からペットとして飼っている特定外来生物はどうなるのか?
前述のとおり、新規でペットとして飼うことは認められていませんが、規制前からペットとして飼っているケースは少なくないでしょう。その場合、適切な許可をとることによって引き続きペットとして飼育することができます。
許可に必要な手続きや申請書類は、以下のページで公開されています。
日本の外来種対策 飼育などに関する手続き
作成した申請書類は、管轄の環境省地方環境事務所に提出することになります。さいたま市や近郊の方であれば、関東地方環境事務所へ問い合わせてください。 -
(3)ペットとして飼っている特定外来生物を繁殖させることはできるのか?
規制前から特定外来生物をペットとして飼っていて、飼育の許可を受けていたとしても、繁殖することは認められていません。
飼育の許可とは、許可を受けたその個体を飼育することができるというものですので、注意が必要です。 -
(4)ペットとして飼っている特定外来生物を他人に譲渡することはできるのか?
特定外来生物をペットとして飼育することについて許可を受けていたとしても、第三者に特定外来生物を譲渡することはできません。
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(5)特定外来生物を飼いきれなくなった場合はどうしたらよいのか?
特定外来生物を飼い続けることができなくなってしまった場合、譲渡も禁じられているため、飼い主が責任をもって殺処分をするしかないと考えられます(環境省も、そのように案内しています)。安易に野外に放つと、生態系を破壊するおそれがあるため、刑事罰を科される可能性が生じるので注意が必要です。
ペットとして飼育を始めた以上、最後まで責任をもって飼い続けるようにしましょう。 -
(6)特定外来生物を見つけた場合にはどうしたらよいのか?
特定外来生物を見つけた場合であっても、生きたまま運搬することは禁止されています。
なお、令和4年9月に特定外来生物を無許可で捕獲して食べた容疑で男が逮捕された事件が報道されました。しかし、本件は外来生物法違反による逮捕ではなく、あくまでも鳥獣保護管理法違反容疑による逮捕です。たとえ特定外来性津物であっても、鳥獣保護管理法によって狩猟期間などが定められていて、捕獲するためには自治体の許可を得る必要があることに注意が必要です。
特定外来生物を見つけた場合には、その場所の管理者や行政機関に連絡するようにしましょう。
4、特定外来生物に関してトラブルがあったら
特定外来生物に関してトラブルがあったときには、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)知らずに特定外来生物を飼育しているかも……
特定外来生物については、既存の生態系への影響などから年々指定される外来生物が増えつつあるのが現実です。そのため、特定外来生物に指定されていることを知らずに、ペットとして飼育し続けていたということも起こり得ます。
実際に、飼育が禁止されている特定外来生物のカミツキガメをペットとして無許可で飼育していたとして、書類送検されたという報道がありました。特殊な生物を飼育している方は、自分が飼っている生物が特定外来生物に指定されていないかどうかを確認するとともに、警察から連絡がきた場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
規制をされていたとしても、規制をされてから6か月以内に申請をして許可を得ることができれば引き続き適法に特定外来生物を飼育し続けることが可能です。知らないうちに違法になっていたということのないように、早めに確認してください。 -
(2)ペットが他人に危害を加えた場合
特定外来生物の中には、注意して飼育しなければ他人に危害を加えるおそれのある生物が存在します。飼い主は、その生物が他人に与えた損害について賠償しなければなりません(民法718条)。
ペットが他人に危害を加えた場合には、多額の賠償責任を問われるおそれがあります。また、怪我の程度によっては、過失致死傷罪といった刑事上の責任を問われることになる可能性も否定できません。
被害者からの損害賠償請求や被害者との示談については、弁護士が窓口となって交渉することで早期かつ適切に解決することができる場合があります。特定外来生物によるトラブルが発生したときには、まずは弁護士に相談するようにしましょう。
5、まとめ
既存の生態系に危害を加えるおそれがあるとして、さまざまな種類の生物が特定外来生物に指定されています。新規にペットとして特定外来生物を飼育することは禁止されていますが、規制前から飼っていた方は、許可を受けることによって引き続き飼育することが可能になります。
許可なしで飼育を継続すると場合によっては、刑事罰を科されるおそれがあります。まずは許可を適切に得て飼育するようにしてください。もし、警察から飼育しているペットについて取り調べを受けることになったときには、できるだけ早期にベリーベスト法律事務所 大宮オフィスまでお気軽にご相談ください。重すぎる罪に問われないよう、適切な弁護活動を行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています