祖母がスーパーでお菓子を万引き!? 逮捕されたとき、家族ができることとは?
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「祖母がスーパーでお菓子を万引きした」
「妻が書店で雑誌を万引きした」
「息子がコンビニで万引きをしたと警察から連絡があった」
いずれも、ぞっとするようなたとえ話ですが、絶対にないとは言い切れません。万が一、家族が店舗で万引きをして逮捕されてしまったら、どのようなことが待っているのでしょうか。
どのような理由があろうと、万引きは、刑法で定められた「窃盗」という犯罪です。逮捕されると身柄を拘束されて取り調べを受けたり、裁判を受けたりすることもあります。
今回は、窃盗罪の基礎知識や家族としてサポートすべきポイントを、大宮オフィスの弁護士がご説明します。
1、刑法に基づき罰せられる万引き
万引きと聞くと「つい出来心で」「軽い気持ちで」といった言葉が思い浮かび、取るに足りない出来事だと考える方も、ごくまれにいるようです。
しかし、金額に関わらずお店の商品を万引きする行為は、刑法第235条で定められた「窃盗罪」にあたります。条文で「他人の財物を窃取した者」が窃盗の罪に問われることになると明文化しているのです。
条文で示す「他人」は、いうまでもなく「自分以外の者」を指します。「財物(ざいぶつ)」は、財産としての価値があるモノすべてです。お金や宝石、商品など、有形のモノが中心となりますが、電気も「財物」とみなされます。そして、「窃取(せっしゅ)」は、難しい言葉ではありますが、簡単に言うと、他人の物を盗む行為一般を指します。
店舗に並んでいる商品は、購入しない限り、店主が管理する物ですから、他人のモノです。他人のモノである商品を盗む行為こそが「万引き」です。よって、万引き行為がまさに窃盗罪の一種であることは、容易に理解できるでしょう。
万引きした商品が、たとえ100円のガムであっても「窃盗」であることに違いはありません。また、「万引き」という犯罪は、一般に常習化する傾向が高いうえ、犯行がエスカレートしやすい危険をはらんでいることが、広く認識されるようになりました。
2、万引きで逮捕されるタイミング
かつては、未成年や初犯のような万引き犯には、お店側が口頭で注意して警察は呼ばない……といったことも珍しくはありませんでした。最終的にお金を払えばいい、という意識が少なからずあったようです。
しかし最近では、万引きを発見した際は、「すぐに警察に通報し逮捕してもらう」という流れが当たり前になりつつあるようです。
たとえば、スーパーであなたの家族がお菓子を万引きしてしまったとしましょう。スーパーの店員や私服警備員が万引きしたと思われる人を見つけたら、代金を支払わないまま店の外に出た時点で、声をかけて事務室に連れて行きます。スーパー側は万引きの事実(未払いの商品を持ったまま店を去ろうとしたこと)を確認すると、警察に通報して警察官の到着を待ちます。
このように、万引きで逮捕される際は、犯行現場で店員が発見し、警察に引き渡されるケースが多い傾向にあります。犯行現場や犯行直後に身柄が拘束されることを「現行犯逮捕(げんこうはんたいほ)」と呼びます。現行犯逮捕する際は、犯行が明らかであるため、警察でない店員や私服警備員でも身柄を確保することが認められているのです。
なお、万引きした当日ではなく、時間がたってから逮捕されるケースもあります。その際、警察は必ず逮捕状を提示します。後日、逮捕状を提示したうえで逮捕することを「通常逮捕」といいます。
通常逮捕されるケースは、たとえば、店内で万引きした様子や駐車場から車で逃走した際のナンバーが防犯カメラで録画されているようなときです。警察は、犯行が疑われる「被疑者」の手口が悪質であったり、逃亡する可能性が高いと判断したとき、逮捕状の発行を裁判所に求め、通常逮捕を行います。
つまり、スーパーで万引きをしたのに見つからずそのまま帰宅して、普通に日常を過ごしていたとしても、後日、警察の捜査により身元が特定され、逮捕されるという可能性は十分あり得ます。最近は至る所に防犯カメラが設置されており、画像も鮮明化していますので、より証拠を押さえやすくなっているといえます。
3、窃盗罪の刑罰は?
前述のとおり、万引きは窃盗罪にあたるため、有罪になればそのほかの窃盗犯同様、「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられます。「懲役」とは、刑務所で服役することです。しかし万引きで逮捕されたケースでも、初犯であれば、起訴されずに済んだり(「起訴猶予」といいます。)、起訴されたとしても罰金など軽い量刑となったりすることも多い傾向があります。
たとえば、金額の安い商品を万引きしてしまったが初犯であった場合、「微罪処分(びざいしょぶん)」という扱いで警察の事情聴取や口頭注意で済まされることがあるかもしれません。パトカーで警察署まで連行されたとしても、事情聴取を受けるだけで逮捕されることなく帰されることもあるでしょう。
微罪処分となれば、万引きをしたという記録は「前歴」として警察署などに残りますが、「前科」がつくことはありません。ただし、釈放される際に身元引受人を求められることが通常です。そのほか、前科や前歴がないことや、盗んだ品物の金額が軽微であるなどの事情が考慮されます。
他方、警察が前歴や前科を調べたところ、本人が何度か万引きで逮捕されていた過去があったケース、盗んだ品物が高価なケース、万引きの手口が悪質なケース、さらには、万引きの事実を否認するためさらなる捜査が必要と判断した場合は、微罪処分とはならず、逮捕されてしまう傾向にあります。
4、逮捕後の流れ
もし、万引きで逮捕されてしまったときは、その後、警察などの捜査はどのように行われていくのでしょうか。家族ができることを探る前に、手続きの流れを知っておきましょう。
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(1)逮捕
警察に逮捕されると、警察署の取調室で万引きの状況やなぜ窃盗をしてしまったかなどについて、詳しく取り調べが行われます。取り調べの内容を受けて、警察は身柄を検察へ「送致(そうち)」します。
送致とは、事件を検察へ送ることを指します。逮捕されている場合は、本人の身柄(身体)ごと検察へ送ります。なお、刑事ドラマやニュースなどでたびたび耳にする「書類送検」というのは、在宅事件として処理される場合を指し、その言葉通り、事件の証拠や書類のみが検察に送致されます。
検察への送致は逮捕後48時間以内に行われます。この間、たとえ家族であろうと面会は出来ません。その場合、面会が許されるのは、弁護士のみとなる点に注意が必要です。 -
(2)勾留
逮捕され、身柄が検察へ送致されたときは、引き続き身柄を拘束され、検察で検察官による取り調べを受けます(「弁解録取」といいます。)。検察官は、24時間以内に、「勾留(こうりゅう)」という形でさらに身柄を拘束して捜査を行うか、または、釈放して捜査を継続する(「在宅事件」)かを判断します。
「勾留」が必要であると判断した場合、検察は裁判所に対して「勾留請求」を行います。裁判所が検察の勾留請求を認めた場合(「勾留決定」といいます。)、最大20日間、身柄の拘束を受けることになります。検察および警察は最大20日間の勾留期間のうちに事件の捜査を行い、検察官は、起訴するか否かを最終的に判断します。 -
(3)起訴から裁判まで
検察が事件を起訴すると、「被疑者」は「被告人」という立場に変わり、その後、裁判所で裁判を受けることになります。
なお、起訴には、犯罪の種類や事件の内容によって「公判請求」をするケースと「略式起訴」をするケースがあります。いずれの場合も、裁判官は有罪かどうか、量刑はどうするかを判断します。日本の検察が起訴する事件は、すでに証拠がそろっているケースが中心となるため、起訴となれば99%有罪となると考えておいたほうがよいでしょう。起訴されてから判決が出るまでは早くても数ヶ月、長いケースでは1年程度かかることもあります。
なお、それぞれの主な違いは手続きの方法です。「公判請求」は、公開の裁判での裁きを求めるものです。起訴前に勾留されていた場合は、保釈が認められない限り、基本的に引き続き身柄を拘束されることになりますし、法廷には「被告人」として立たなければなりません。一方で「略式起訴」は、証拠や書類のみで量刑が決まります。法廷に立つ必要もないため、身体拘束は解かれ、帰宅できることになります。
5、家族が知っておきたいポイント
では、親や兄弟、子どもが万引きで逮捕されてしまったとき、連絡を受けた家族はどのような対応ができるのでしょうか。ここまで読んでいただいた方はすでにお気づきでしょうが、多くの場合、逮捕されてから最大72時間は、被疑者となった身内の方とは、面会することはもちろん、電話さえもできなくなります。様子をうかがうことも、話を聞くこともできないわけです。
だからといって、何もできないわけではありません。唯一、あなたの家族と面会し、事件が少しでも良い方向へ向かうことを目指して、交渉できる人物がいます。それが弁護士です。
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(1)示談成立に向けて
まず、万引きをはじめとした窃盗罪においては、当然ですが「被害者」が存在します。そこで、被害者との示談を成立させることで、勾留および起訴を回避できる可能性が高まります。万が一、起訴が決定した後であっても、被害者と示談が成立していれば、執行猶予付き判決が出るなど、量刑が軽くなる可能性が高まるのです。
したがって、家族としてできるサポートのひとつとしては、速やかに示談交渉を進めることです。万引きの示談は盗んだ商品の金額を軸に、示談金を交渉していくケースがスタンダードです。このほか、万引きの手口の悪質性や、被害者がどれだけ刑罰を望んでいるか(「被害感情」といいます。)によっても示談の内容は変わります。
手口が悪質だったり、再犯だったりしたケースでは、最終的に示談金が高額になるケースもあります。しかし、万引きした商品の金額が示談金となることが多い傾向にあります。専門家以外の者が交渉すると、被害者からあまりにも高額な支払いを要求されることもあるでしょう。しかし、刑事事件の豊富な経験をもつ弁護士であれば、示談交渉のプロとして、適切な示談金額での交渉を目指します。
弁護士は、誰よりも早いタイミングで示談成立を目指すことが可能です。さらには、本人が逮捕されたときでも、弁護士がご家族との橋渡しをするなど、心の支えになることもできます。 -
(2)家族ができる再犯を防ぐ試み
最近、万引きなど犯罪に関する調査・分析が進み、万引きをはじめ他人のモノを盗んでしまうのがやめられず、何度捕まってもどうしても窃盗が止められない病気があることが明らかとなっています。「クレプトマニア」と呼ばれる精神疾患のひとつで、日本語では、「病的窃盗」、「窃盗症」と呼ばれているものです。
もし家族が万引きを繰り返し、いくら注意しても治らない場合は、クレプトマニアの可能性があります。専門の医療機関に相談する必要があるでしょう。
また、クレプトマニアの弁護活動としては、刑事手続きを早急に終わらせ治療に専念してもらうことが非常に重要となります。警察や検察にも、治療を行っている最中であることや、さらに注力して取り組むなどとアピールすることが必要です。弁護士に依頼する際には、事実を隠さずありのままを相談して、事案に応じた適切な対策を練ることが肝要です。
6、まとめ
今回は、万引きは窃盗罪という立派な犯罪であること、もし万引きで祖父母や子ども、夫、妻が逮捕されてしまったとき、家族としてサポートできることについてご説明しました。
大切な家族が万引きによって逮捕されたときは、警察や検察での取り調べや裁判までさまざまな手続きが続きます。家族と話すこともできないまま、状況もわからない……ということも少なくありません。いきなりのことでどうしていいかわからなくなっても、不思議ではないでしょう。
家族が万引きをしてしまい、「窃盗」罪で逮捕されてしまった場合は、まずは弁護士による面会(「接見」(せっけん))を活用しましょう。少なくとも、弁護士を介して、本人の状況や弁解内容を知ることができます。少しでも早いタイミングで釈放させて欲しい、前科をつけたくないというときは、弁護士に対応を依頼することで、いち早く示談成立へ向けた対応が可能となります。
まずは、刑事事件の経験が豊富なベリーベスト法律事務所 大宮オフィスまで相談してみてください。大宮オフィスの弁護士が、万引きをしてしまった家族に前科がつかないよう、全力で弁護活動を行います。
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