未成年の息子が盗撮で逮捕……親がすべきこととは?

2019年02月06日
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未成年の息子が盗撮で逮捕……親がすべきこととは?

少年事件の件数は、決して少なくありません。埼玉県でも、平成29年中にわいせつ行為などの風俗犯として取り締まりを受けた未成年者が40名いて、そのうち過去にも類似犯罪で検挙されたことがある少年の割合が27.5%もいたことが埼玉県警察の発表で判明しています。

また、未成年者のスマートフォン所持率は高く、中には軽い気持ちで盗撮行為をしてしまう未成年者もいるようです。今回は未成年者の盗撮事件について、逮捕後の流れや少年事件の扱いなどを大宮オフィスの弁護士が解説します。

1、未成年者の盗撮は「少年事件」に分類

少年法は、「20歳に満たない者」を「少年」と定めています。そして、未成年者は男女問わず、「少年」に分類されます。よって、未成年者が盗撮をした場合は、「少年事件」として処理されます。

「少年事件」では、成人による犯罪とは異なる手続き・処分が行われます。これは、少年が人格発達の途中であり、精神的に未熟で周囲の影響を受けやすいことから、刑罰ではなく教育的処遇を原則としているためです。

盗撮等によって補導・検挙された少年は、以下の呼び方で分類されます。

  • 犯罪少年……14歳以上で法律上の罪を犯した少年
  • 触法少年……14歳未満で法律上の罪を犯した少年
  • ぐ犯少年……将来罪を犯すおそれのある少年


触法少年は刑事責任を問われることはないので、逮捕されることはありません。しかしながら、児童相談所で一時保護されたり、家庭裁判所に送致されたりすることがあります。

2、未成年者が盗撮で逮捕された後の流れ

成人が盗撮行為をしたときは、刑事訴訟法で定められた流れに沿って捜査が行われ、各都道府県が制定する「迷惑防止条例」違反、または軽犯罪法における「窃視(のぞき見)」行為として処罰を受けることになります。盗撮の状況によっては、住居侵入罪にも問われることがあるでしょう。

一方で、14歳以上の未成年者が盗撮容疑で逮捕されたときも、捜査段階までは概ね成人が逮捕されたときと同じプロセスをたどることになります。

  1. (1)逮捕から警察・検察での取調べ

    14歳以上の未成年者であれば、「犯罪少年」として成人と同様に刑事責任を問われる可能性があります。そこで、盗撮容疑で逮捕されたあとは、警察官からの取調べを受けることになるでしょう。警察は逮捕後48時間以内に事件を検察に送致することになっています。
    そして、検察は、送致から24時間、逮捕から72時間以内に、さらに身柄を拘束し続けたまま捜査を行う「勾留(こうりゅう)」請求の必要性について判断します。

    逮捕から勾留に関する判断が下されるまでの72時間は、逃亡や証拠隠滅を防ぐため、たとえ家族であっても原則として面会はできませんが、弁護士は自由に接見することができます。

    盗撮をした未成年者について勾留が認められたときは、原則10日間、最長で20日間、留置場や少年鑑別所で身柄を拘束されたまま、取調べを受けることになります。

  2. (2)家庭裁判所送致・調査

    捜査後、成人事件では刑事裁判によって処罰を行うかどうかの判断が行われますが、少年事件では、原則としてすべて家庭裁判所へ送られます。

    送致されると、少年審判の前に調査が行われます。調査は家庭裁判所の調査官が行い、少年との面談や心理テストなどを行います。家庭裁判所の教育的な働きかけによって、再非行のおそれがないと見込まれるときには、審判を開始せず、調査のみを行って事件を終わらせることもあります(不処分、審判不開始)。

  3. (3)少年審判

    少年審判は、家庭裁判所が必要と判断した場合に行われます。少年審判は原則非公開です。

    少年審判では、主に以下のような処分を決定します。

    • 保護観察
    • 児童自立支援施設などへの送致
    • 少年院への送致
    • 知事や児童相談所長への送致
    • 検察官への送致
    • 不処分

3、少年事件と成人犯罪の違いとは

成人の刑事事件では、犯罪が比較的軽微なものや、被害者との間で示談が成立した事件については、不起訴処分になることがあります。この場合は不起訴になった時点で事件は終了します。

しかし、少年事件では犯罪が軽微である、示談が成立しているなどの理由で事件が終了することはありません。具体的に、成人が犯罪を起こして処罰される場合との違いを解説します。

  1. (1)処罰ではなく更生を目指した対応

    少年事件では、たとえ犯罪が軽微であったり、示談が成立したりしていても、原則として、すべての事件が家庭裁判所に送られます。また、成人の刑事事件で設けられている保釈の制度も、少年事件にはありません。

    これは、成人の刑事事件が同人に刑罰を与えることを目的としている一方、少年事件は、同人の更生を目的としているためです。もちろん、捜査の結果、少年に犯罪の嫌疑がなければ送致されることはありません。

  2. (2)審判は非公開

    成人の刑事事件では、一般人が傍聴可能な公開の裁判が行われます。しかし、少年事件では、原則として、裁判官、裁判所書記官、調査官、裁判所事務官、付添人、少年、保護者のみの非公開で行われます。

    少年にとって適正な処遇を選択するためには、少年の抱える問題を的確に把握する必要があります。そのため、審判においては、非行の動機・態様、被害者への反省の気持ちなどはもちろん、少年の生育歴、家族の関係、学校・職場での状況など、プライバシーに関わる事項が審理されます。少年の保護という側面に加え、少年やその家族のプライバシーの秘密性を確保するため、少年事件は非公開とされています。

    一般人、報道陣および外部のジャーナリストなどが、審判を傍聴することで、少年が盗撮をした事実・背景などを知りうることはありません。もっとも、被害者が亡くなっていたり、生命に重大な危険のある傷害を負っていたりなど、重大事件である場合には、事件が検察に再度送致され、通常の刑事裁判が行われることもあります。

4、学校への通報を回避できる?

学校側に事態が発覚する前に事件を解決するためには、逮捕から72時間以内にされ得る、勾留請求前の釈放を目指す必要があるでしょう。なぜなら、勾留が決定してしまうと、合計で20日以上も身柄を拘束されてしまう可能性があり、学校を長期にわたり欠席することを余儀なくされるためです。

なお、警察は、必ずしもすべての事件について学校に連絡しているわけではありません。しかし、家庭裁判所へ送致されたときは、調査官が通学状況や成績、素行などを知るために、担任や生活指導の教諭へ聞き取り調査などを行うことが一般的です。このような調査がなされた場合には、遅くともこの段階で、学校側に事件のことを知られてしまうでしょう。

退学か停学かなどの処分内容は、学校によって異なります。公立の学校であれば、中学校までは義務教育なので懲戒退学処分になることはありませんが、私立中学や高校ではこのような処分を受ける可能性が十分にありえます。なるべく早いタイミングで弁護士に相談することで、最悪の事態を回避できる可能性が高まります。

5、未成年のお子様が盗撮で逮捕されたときに弁護士ができること

少年事件は、成人の刑事事件と比べると、勾留期間が短くなるケースがあるので、より迅速な対応が求められます。

また前述のとおり、逮捕後72時間は、家族であっても原則として少年と面会することはできません。この間に少年と自由に接見できるのは、弁護士です。それでは、弁護士は具体的に、どのようなことができるのでしょうか。

  1. (1)身柄拘束中の接見で、お子様に対する直接的なサポートが可能

    逮捕された少年は、親や家族にも連絡がとれず、警察官や検察官など公権力を持つ大人に囲まれ、強い緊張を強いられる状況に置かれます。弁護士は、身柄拘束中にも警察官の立ち会いなしに、自由にお子様と接見できますので、お子様の精神面のケアを行うことができます。

    お子様との顔見知りでもない弁護士を関わらせることに不安を感じられるかもしれませんが、少年事件の経験豊富な弁護士によるサポートは、お子様の大きな支えとなります。家族ではない第三者だからこそ、お子様の本当の気持ちを引き出せるという側面があります。そして、本人の更生という観点からも、さまざまな大人が自分を支えてくれているとの実感を通じ、世間への信頼感を取り戻すことが非常に重要です。

    また、弁護活動を円滑に行うためには、お子様との信頼関係を築くことが必要不可欠です。弁護士は、お子様の味方であることを伝えた上で、お子様の言い分をしっかりと聞きます。このようなお子様との対話を通じて、事件を起こした動機やその原因を探り、改善策を検討していきます。

  2. (2)調査官との話し合い

    家庭裁判所の調査官は、お子様本人やご家族等との面談を通して、お子様の非行の原因を調査し、どのような処分が必要かを検討します。調査官は中立な立場から判断を下すので、ときには厳しい意見が出ることもあるでしょう。

    弁護士は、保護者の方と相談の上で被害者との示談交渉を行います。そして調査官に対し、これらの取り組みを伝え、お子様は社会の中での立ち直りを実現できる旨の意見を述べます。このような活動を通して、審判手続きを踏まずに終わる審判不開始や不処分となるよう尽力します。

  3. (3)学校・職場への対応

    少年の更生という観点からも、少年の生活環境を改善することは非常に重要です。しかし、事件が長引くと、退学・解雇などの処分を受けて、居場所がなくなる可能性が高まります。これにより、更なる非行を助長することになりかねません。

    上記のとおり、少年事件には保釈制度がありません。拘束期間が長引くほど学校や勤務先の少年に対する評価は厳しくなりますから、退学・解雇になる可能性が高まります。そこで弁護士は、学校や職場はもちろん、捜査機関や家庭裁判所に対しても、拘束期間を短縮するための働きかけを行います。

    逮捕された直後から弁護士に相談することで、事態の収束が早まり、本人の将来にとって最善の策をとれる可能性が高まります。

  4. (4)被害者の対応・示談交渉

    早期解決を図る方法として示談はとても有効です。しかし被害者は、加害者に対する恐怖や怒りの感情を持っていることが多いので、当事者同士での示談交渉が行われることはまれといえます。弁護士を介さなければ交渉の機会すら得られないでしょう。
    弁護士は、被害者の気持ちに配慮しつつ、親御様の経済状況にも配慮して、現実的な支払い方法となるよう示談交渉を行います。

6、まとめ

少年事件においては、お子様の将来を考えるのであれば、できる限りの手段をとって、早期解決を目指すべきです。

ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスの弁護士は、あなたのお子様だけではなく、あなた自身の状況を見極め、適切なサポートを行います。お子様の逮捕を知ったら、迷わず弁護士へ相談してください。特に少年事件では、いかに早く弁護活動を始めるかが非常に大切です。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています