夫や未成年の息子が痴漢再犯で逮捕! 妻や母ができる最善の対処法は?

2019年09月24日
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夫や未成年の息子が痴漢再犯で逮捕! 妻や母ができる最善の対処法は?

平成29年7月、新宿発大宮行きの電車で集団痴漢をした男ら4人が逮捕されました。多数の路線が乗り入れる大宮では痴漢に手を染めてしまう男性が少なくありません。中には一度逮捕されて有罪判決を受けながら、再度痴漢をしてしまうケースもありますが、これも珍しくない出来事です。

本コラムでは、ご主人やご子息が痴漢の再犯で逮捕された場合、家族ができる対処法について、大宮オフィスの弁護士が解説します。

1、痴漢を取り締まる法律について

痴漢には「痴漢罪」という罪はなく、刑法もしくは迷惑防止条例のどちらかで裁かれます。服や下着の上から触る場合は、迷惑防止条例で裁かれることが多く、下着の中に手を入れるなどの行為があった場合は、処罰が重い強制わいせつ罪に問われる可能性があります。

  1. (1)埼玉県内での痴漢行為とは

    埼玉県では「埼玉県迷惑行為防止条例」によって、痴漢行為を以下のように規定しています。
    「何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人に対し、身体に直接若しくは衣服の上から触れ、衣服で隠されている下着などを無断で撮影するなど人を著しく羞恥(しゅうち)させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない」(埼玉県迷惑行為防止条例第2条第4項)
    物理的に相手の体を触るだけでなく、撮影する行為も禁じられています。
    迷惑防止条例は、各都道府県によって多少名称や罰則が異なります。さいたま市など埼玉県内で痴漢した場合は、埼玉県迷惑行為防止条例違反となり、東京都内で痴漢行為を行った場合は、東京都の迷惑防止条例によって裁かれます。

  2. (2)迷惑防止条例による痴漢行為への罰則

    埼玉県迷惑行為防止条例違反で有罪になった場合、6ヶ月以下の懲役または50万円の罰金に処される可能性があります。迷惑行為防止条例違反でも、他の刑法の犯罪のように有罪判決が下れば前科がつくことになります。

2、未成年者の場合の扱い

痴漢行為で逮捕された方が20歳未満の未成年の場合は、成人とは異なる手続きで処分されます。14歳以上20歳未満の場合、逮捕後、成人と同様に身柄が拘束されますが、状況によって少年鑑別所での調査やテストが行われるなどの措置が取られます
少年が起こした事件は、全件送致主義といい、すべての案件が家庭裁判所に引き継がれて今後の対応を審議されます。

具体的には、成人とは異なり少年法の規定により「少年審判」が開かれて、今後の処遇が決まります。子どもの場合は、成人とは異なり、罰するためでなく、今後の非行を防止する目的で処分が決まりますので、犯した罪の重さだけでなく、家庭環境や犯行に至った背景なども重要視されます。犯行の動機や本人の反省度合いにより、不処分になることもあれば保護観察や少年院送致という保護処分が下されることもあります。

子どもが社会復帰するために必要な措置はなにかという観点で判断されますので、逮捕されたら早い段階で弁護士等に付添人を依頼し、子どものサポート体制を整えた上で、身柄の拘束を含む処分は必要ないことを主張しなければなりません。

3、勾留期間はどのくらいになるか

成人したご主人やご子息が痴漢で逮捕された場合の身柄拘束期間は最大23日間にも及びます。その後、起訴されて保釈が認められなかった場合は刑事裁判が開かれるまでの期間および、刑事裁判中も身柄の拘束が続くため、数ヶ月に渡ることも珍しくありません。ここでは各段階における勾留期間について説明します。

●逮捕後72時間の身柄拘束
痴漢で現行犯逮捕や後日逮捕された場合、逮捕されてから48時間は犯行現場を所轄する警察署で身柄を拘束されます。その間は、取り調べが行われ、犯行の状況や動機などが聴取されます。
その後、検察に身柄が送致されて、検察官は24時間以内に勾留するかどうかを決定します。
つまり逮捕されてから72時間で、その後の勾留が決定するのです。

ちなみに勾留するかどうかの判断基準は「逃亡の恐れがないこと」、「住所が定まっていること」、「証拠隠滅の恐れがないこと」などです。これらにひとつでも懸念材料があるときは勾留される可能性が高いと考えられます。また、罪を認めて反省しているかどうかも判断の材料になるでしょう。逮捕後の勾留を避けるためには、逮捕されてから72時間以内に適切な措置を講じる必要があります。逮捕後72時間は原則家族でも面会できませんので、接見可能な弁護士に弁護を依頼して、検察官や裁判官への働きかけなどをしてもらうとよいでしょう。

●勾留
勾留が決定すると、警察署内の留置場や拘置所での身柄の拘束が続きます。勾留期間は原則10日ですが、必要に応じて延長されますので最大20日間続きます。20日以内に検察は、起訴するかどうかを判断しなければなりません。
それまでに被害者との示談が完了していれば、痴漢の再犯といえども不起訴処分になる可能性があります。不起訴処分になった場合は、前回の痴漢で起訴されて有罪となり執行猶予期間中であったとしても、服役せずにすみます。
起訴された場合は、刑事裁判が終了するまで身柄の拘束が続く可能性があります。そうなると社会的な不在期間が長くなりますので、起訴決定後はすみやかに保釈を請求しましょう。

4、痴漢行為、再犯の量刑は

痴漢の再犯で逮捕された場合は初犯よりも重い量刑が言い渡される可能性があります。埼玉県迷惑行為防止条例違反の場合は、最大50万円の罰金か6ヶ月以下の懲役と規定されていますので、この範囲内で処罰が決定されます。
強制わいせつ罪の場合は、6ヶ月以上10年以下の懲役と規定されており、罰金刑がありません。万が一強制わいせつで起訴されてしまい、執行猶予がつかなければ服役する可能性もあります。

前回の痴漢の際に、起訴されて有罪判決が下り、執行猶予がついていた場合は、今回の逮捕で有罪になると、前回の処罰については服役しなければなりません。
それを避けるためにも、痴漢の再犯の場合は早急に弁護士に依頼して、起訴不起訴が判断される23日以内に、被害者と示談を成立させることが重要となります。

5、起訴される可能性はどれくらいか

痴漢の再犯で逮捕されると、初犯と比較すると起訴される可能性が高くなってしまいます。しかし、痴漢の再犯でも、早期に被害者と示談を完了させることで不起訴と判断されることがないわけではありません。被害者との示談が成立して、被害届を取り下げてもらえれば、起訴されないケースも多々あります。

痴漢の再犯で逮捕されたら、早急に弁護士に弁護活動を依頼し被害者との示談を急ぎましょう。痴漢などの性犯罪では被害者と加害者サイドが冷静に示談交渉をすることは難しく、そもそも連絡先を知ることすらできません。性犯罪の被害者の連絡先は、警察から加害者側に公開されることはないため、弁護士に間に入ってもらい弁護士経由で確認する必要があります。起訴を回避するためには、被害者との示談が非常に重要になりますので、逮捕されたらなるべく早い段階で弁護士に依頼して示談交渉を依頼しましょう。

6、繰り返す痴漢行為には医療機関を受診することも有効

痴漢行為をなんども繰り返してしまう、逮捕されたのに再び痴漢をしてしまう場合、依存症や発達障害などの病気の疑いがあります。いち早く精神科や心療内科などの専門クリニックを受診して、再発防止のための治療を積極的に行う必要があるでしょう。

実際に治療をはじめることで、検察官や裁判官によりよい心証を与えることができます。またこれ以上罪を重ねないためにも、専門家に相談して治療することが大切です。

7、家族にできるベストな行動とは

ご主人やご子息が痴漢の再犯で逮捕されたら、家族ができることは弁護士に依頼することと治療を促すことの2点です。

  1. (1)早い段階で弁護士に依頼する

    これまでお話したように、痴漢の逮捕は逮捕後72時間以内の勾留回避のための弁護活動、そして23日以内の被害者との示談成立が、今後の生活に大きな影響を与えます。
    逮捕後72時間以内に弁護士に依頼して、勾留を回避できれば会社や学校を休む必要がないので、社会的な影響を最小限に抑えられます。早い段階で示談が成立すれば、不起訴となる可能性が高くなり、前科がつかなくて済むかもしれません。
    そのためには、家族による弁護士の選任が必須です。

  2. (2)本人の治療を行う

    痴漢を繰り返してしまう原因が病気にある場合、病気を治療しなければ再び罪を犯してしまう可能性があります。それを避けるためには、依存症等の治療を行わなければなりません。

    本人には病気の自覚がなく、治療に踏み出せないことも少なくありません。家族が手厚くサポートして治療を促してあげましょう。

8、弁護士に依頼する利点とは

痴漢再犯で逮捕された場合の弁護士に依頼するメリットを解説します。

  1. (1)示談成立の可能性

    痴漢事件では被害者との示談成立が非常に重要です。なぜならば、検察官が起訴するかどうかを判断する際に被害者の意向が重視されるからです。被害者と示談が成立していれば、被害者は被害届を取り下げ、処罰感情もないと認識されるため、不起訴になる可能性が高いのです。
    痴漢の被害者との示談は、弁護士等の専門家でなければ冷静に交渉することは難しいと言われています。また、被害者の連絡先を加害者は入手できませんので、示談交渉を進めることはできません。
    その点弁護士であれば、警察経由で被害者の連絡先を確認できますので、すみやかに示談交渉をスタートできます。

  2. (2)弁護活動

    弁護士に依頼すると、逮捕後72時間であれば勾留回避のための弁護活動に奔走してもらえます。また、家族と面会ができない期間も接見が可能なので、今後の処分に大きな影響与える取り調べの際に、不利な供述をしないようにアドバイスしてもらえます。
    また万が一起訴された場合も、処分を最大限軽くするように弁護します。

  3. (3)会社や学校へのフォロー

    痴漢で逮捕されて、勾留などで身柄拘束が長引くと、悪影響は避けられません。痴漢で逮捕されたことが露見すると退職や退学を余儀なくされることがあります。弁護士に依頼すると、それらの悪影響を避けるべく、身柄拘束をできるだけ避ける処分を目指して弁護してもらえます。

    また、万が一身柄拘束が続いてしまった場合は、学校や職場などの対応について適切なアドバイスを受けることができるでしょう。

9、まとめ

痴漢行為の再犯で逮捕されても、必ず起訴されるとは限りません。ご家族が弁護士を選び被害者との方との示談交渉を進めることで、不起訴になる可能性はあります。起訴された場合も、執行猶予付き判決を目指した弁護活動が可能になりますので、ご家族が逮捕されたら、まずは弁護士に相談しましょう。

まずは早急に、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスでご相談ください。痴漢事件に対応した経験が豊富な弁護士が、適切なアドバイスとともに弁護活動を行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています