就活生にセクハラされたと言われた! 穏便に対処するために行うべきこと
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さいたま市では「働く人の支援ガイド」を発行し、職場でハラスメントを受けたときどう対応すべきかなどを周知しています。ガイド内にも記載されているとおり、「女性活躍・ハラスメント規制法」、通称「パワハラ防止法」は令和元年5月に成立しました。しかし、就活生に対するハラスメントは同法の規制対象になっていません。そのせいか、企業の採用担当者が、就活生にセクシュアルハラスメント(以下セクハラ)行為を働く「就活セクハラ」が社会問題となっています。
たとえわずかなスキンシップのつもりでも、セクハラは、場合によっては強制わいせつ罪などの罪に問われる可能性があります。強制わいせつのような性犯罪で逮捕されると、仕事や家族関係、近所づきあいなどに修復し難い悪影響を与える可能性は否定できません。まずは、事件化、さらには逮捕や起訴を避けたいと考えるのは当然のことでしょう。
そこで、本コラムでは、就活生にセクハラをしてしまった場合に、逮捕・起訴されないようにすべき対応方法について、大宮オフィスの弁護士が解説します。
1、セクハラは強制わいせつ罪になるの?
就活生へのセクハラ行為は、強制わいせつ罪や準強制わいせつ、準強制性交罪などに問われる可能性があります。これから具体的に説明していきます。
強制わいせつ罪(刑法176条)の条文を確認してみましょう。
「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6か月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする」
強制わいせつとは、暴力や脅迫、脅し文句などを用いてわいせつな行為をすることを指します。たとえば就活セクハラでは就職活動生と採用担当者間で起きた出来事が問題になります。その場合、「いうことを聞かなければ、採用を見送る」などと脅して、わいせつ行為をした場合は、強制わいせつ罪に問われると考えます。そのほかにも、「拒んだら採用してもらえないかもしれない」と感じた就活生が、あなたからの行為を拒むことができなかったケースも、強制わいせつ罪が成立する可能性があるのです。
また、カラオケ等でアルコールを飲ませて抵抗できない状態にして、わいせつ行為をしたり、性交等を行ったりしたときは、準強制わいせつ(刑法178条第1項)や、準強制性交等罪(刑法178条第2項)が成立する可能性があります。準強制わいせつで有罪になった場合は、強制わいせつと同じ6か月以上10年以下の懲役、準強制性交等であれば、5年以上の懲役という刑罰が科される可能性があるでしょう。いすれも罰金刑の設定がなく、懲役刑のみと比較的重い量刑になっています。
強制わいせつや準強制性交等以外にも、公共の交通機関や公共の場で不要なボディータッチをすれば、迷惑防止条例違反として取り締まりを受ける可能性があります。さらに、個人的かつ性的なことを公言するなどの行為によって名誉毀損や侮辱罪などに問われる可能性があるでしょう。名誉毀損や侮辱罪などは、直接体に触っていなくても成立する犯罪なので、触っていないからといって逮捕されることはないとは言い切れません。
2、どのような行為をすると訴えられる?
就活生へのセクハラは、強制わいせつ等に該当する場合は、被害者である就活生が警察に告訴状を提出すると警察が捜査を行った上で、事実が確認できたら逮捕される可能性があります。では、わいせつ行為などが伴わないセクハラであれば、訴えられないのかというとそうではありません。名誉毀損や侮辱罪が成立するケースもあります。
セクハラとは、前述のとおりセクシュアルハラスメントの略で、「性的な嫌がらせ」という意味があり、人権を侵害する行為として知られているとおりです。具体的には、性的な言動を受けた被害者側が、その対応によって不利益を受けたり、日常や就労環境が害されたりするものを指すことになるでしょう。
たとえば体形のことや、恋人の有無、性経験のことなどに言及することは、業務に一切関係はなく言及する必要性がない、ごくプライベートなことです。また就職活動とは関係ないメールやメッセージを送るなどの行為もセクハラに該当する可能性があります。
公の場で、性的な発言等をした場合は侮辱罪(刑法231条)や名誉毀損(きそん)罪(刑法230条)で被害届や告訴状を警察に提出される危険性があることは否定できません。また、警察に届け出ずとも、損害賠償請求訴訟を提起されるケースも考えられます。さらには、会社に対して訴えられてしまい、就活セクハラをした事実が認められた場合は、解雇されてしまう可能性もあるでしょう。
体を触っていなくとも、セクハラとみなされる行為をしたことによってライフプランが変わってしまう可能性がありますので、その前に対処することをおすすめします。
3、セクハラで逮捕された場合の流れ
セクハラをして、強制わいせつや準強制わいせつ等で逮捕された場合の流れを解説します。今後逮捕される可能性がある方は、流れを把握した上で対策を考えましょう。
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(1)逮捕される可能性はあるのか
逮捕は、身柄の拘束を伴う特別な措置です。一般的には、罪を犯している状態で逮捕される「現行犯逮捕」と、後日逮捕される「後日逮捕」の2種類が行われます。すでに就活生にセクハラ行為をしたあとであれば、現行犯逮捕ではなく後日逮捕になる可能性が高いでしょう。
もしくは、逮捕という措置を受けず、事情聴取というかたちで出頭を要請される可能性も考えられます。この出頭を拒み続けると、逃亡の可能性や証拠隠滅の危険性があるとみなされ、逮捕状による逮捕に踏み切られることがあります。
セクハラ行為の後日逮捕は、就活生が警察に被害届や告訴状を提出して、警察が所定の捜査を行ったのち、強制わいせつ等に該当すると判断すれば、裁判所に逮捕状を請求します。裁判所が逮捕状を発行したら、警察が逮捕状を携えて自宅などにきて身柄を拘束されます。 -
(2)逮捕後も身柄拘束が続く可能性
逮捕されたら、48時間は警察に身柄を拘束されて取り調べを受けます。その後検察に身柄が移されてさらに24時間の身柄拘束が続きます。
その間、家族といえども面会することはできません。閉鎖的な空間での取り調べが続きますので、不利な自白をしてしまう方も少なくありません。
事件や身柄の送致を受けた検察官は、24時間の取り調べで逃亡や証拠隠滅の危険性があると判断すると、裁判所に勾留を請求します。勾留とは留置場や拘置所での身柄拘束を伴う措置です。原則として10日間ですが、必要に応じてさらに10日延長されて、最大20日間続きます。逮捕や勾留がされなければ在宅事件扱いとなり、身柄は拘束されず、取り調べの際だけ出向くことになります。
逮捕から勾留請求までが72時間なので、23日間も身柄拘束が継続することになります。強制わいせつなどの性犯罪での身柄拘束は、会社などの社会生活に多大な影響を与えるでしょう。 -
(3)起訴・不起訴の判断と刑事裁判
勾留されている場合は、勾留期間が満了するまでに検察は捜査を終えて、起訴するかどうかを判断します。身柄の拘束を受けず、在宅事件扱いとなっていた場合は、取り調べが終わり次第、起訴か不起訴かが判断されることになります。
起訴されれば、刑事裁判が開かれます。日本の刑事裁判の有罪率は9割を超えており、起訴されれば有罪になり前科がつく可能性が非常に高いといえます。
勾留されていて、起訴されると裁判が終わるまで、そのまま身柄の拘束が続くことになります。そこで保釈請求を行うことも考えられます。保釈が認められれば釈放され帰宅できます。保釈が認められなければ、そのまま刑事裁判が終了するまで身柄拘束が続きます。
刑事裁判では、有罪か無罪か、そして量刑が決まります。セクハラが事実でなければその旨を主張し、セクハラしたことが事実であれば情状酌量を求める主張をしなければなりません。
4、逮捕の回避や不起訴の獲得のためには示談が重要
就活生にセクハラ行為を働き、強制わいせつ等に問われる可能性があるのであれば、できるだけ早く相手と示談する必要があります。
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(1)示談を成立させたほうがよい理由
まだ逮捕されていないのであれば、逮捕前に示談を成立させることで、逮捕を回避できる可能性があるでしょう。逮捕されてからでも起訴前であれば、示談を成立させることで起訴を回避できるかもしれません。
起訴されてしまうと、被害者が被害届や告訴状を取り下げても刑事裁判が開かれることになります。さらに、罪を認めていることから無罪になることはほぼありません。起訴後、被害者との示談が成立し、反省していることが認められれば執行猶予付き判決は望めますが、前科がついてしまうことにかわりありません。
だからこそ、一刻も早く被害者との示談を成立させなければならないのです。逮捕や勾留さえされなければ身柄の拘束を受けることもなく、起訴を回避できれば前科がつくこともありません。
刑事事件として処罰を受けたあとでも、示談を成立させられないままでいれば相手が弁護士をつけて訴えてくる可能性が残ります。刑事責任を問う刑事事件と、損害賠償を請求する民事事件は別物であるためです。その場合、裁判費用がかかりますし、一般的には改めて弁護士に弁護を依頼することになります。
早期に弁護士に示談対応を依頼し、示談を成立させておけば、民事訴訟を提起される危険性がなくなります。セクハラ事件そのものを早期に収束できる可能性が高まるのです。さらに、解決までにかかる費用を抑えられるため、その分家族や生活への影響を最小限に抑えることができるでしょう。 -
(2)示談を弁護士に依頼すべき理由
前述のとおり、示談を成立させることが、逮捕や身柄拘束を回避し、セクハラの影響を最小限に抑えることにつながります。しかし、セクハラの被害者は加害者本人や加害者家族との交渉を避ける傾向があります。当事者同士の示談交渉は困難となるケースがほとんどでしょう。無理に示談交渉をしようとすれば、強要や脅迫などとみなされることもあり、さらに事態が悪化してしまう可能性を否定できません。
第三者である弁護士に示談交渉を一任するのがおすすめです。刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士であれば、被害者の心情を配慮した交渉が可能です。また、過剰な賠償金を請求された場合も、状況に適した金額へ交渉することもできます。さらには、最終的に示談が成立しなかったとしても、相手側が過剰な請求をしたため成立させられなかったことを警察や検察、裁判官へ適切な方法で主張することが可能です。
ひとりで解決しようとせず、日常への影響を最小限に抑えるためにも弁護士の力を頼りにしてください。
5、まとめ
就活生に対するセクハラは、強制わいせつや名誉毀損などの刑法上の犯罪に該当すると逮捕・起訴される可能性がある行為です。触るなどのわいせつ行為だけでなく、相手に不快感を与える性的な質問等もセクハラと受け取られて、損害賠償請求がなされるケースもあります。
もし、就活生にセクハラをしてしまった場合は、相手が警察に告訴状や被害届を提出する前に、被害者と示談をして逮捕を回避しなければなりません。逮捕されているのであれば、なるべく早く弁護士に依頼して、勾留や起訴を回避する必要があります。
ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスでは就活生に対するセクハラをしてしまったとお悩みの方からの相談を受け付けています。逮捕や起訴を回避するためには時間的猶予はありません。ひとりで悩む前にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています