未成年者に自撮りを要求したら逮捕? 法定刑や対処法を弁護士が解説
- 性・風俗事件
- 自撮り
- わいせつ
埼玉県では児童ポルノ事犯の被害予防のため、埼玉県青少年健全育成条例において、新たに「自画撮り要求行為に対する規制」が追加されました(平成30年12月1日施行)。
自分自身でわいせつな写真の撮影をしていなくても、未成年にわいせつ画像の自撮りを要求するだけでも、逮捕される可能性があります。今回の記事では、自撮り写真を要求し逮捕されてしまったときの対応について、大宮オフィスの弁護士が解説します。
1、自撮り写真による児童ポルノ事犯について
近年、携帯・スマートフォン・タブレット端末等の使用開始の低年齢化が進んでいます。それに伴い、SNSなどを通じて知り合った相手に、自分の裸の写真などを自撮りさせるとともに送らされる被害が増加傾向にあるようです。
これらの児童ポルノ画像がひとたびネット上に画像が流出すると、すべてを削除することは極めて困難です。将来にわたって児童を苦しめ、人権を踏みにじる卑劣な行為といえるでしょう。
2、わいせつな自撮り画像を要求、所持すると科されうる刑罰
未成年の児童に、その児童に係る児童ポルノ(一例として挙げると、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの)を要求、所持すると、埼玉県内では、以下のような刑罰が科される可能性があるでしょう。
-
(1)児童買春・児童ポルノ禁止法違反
児童ポルノ禁止法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)では、以下の行為を禁止しており、違反すると罰則が科されます。
児童ポルノにあたるわいせつな自撮り画像を、不特定又は多数の者への提供し、又は公然と陳列することを目的に所持した場合は、法定刑は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はその併科になります。こうした情報を記録した電磁的記録その他の記録を、電気通信回線を通じて不特定又は多数の者に提供する目的で保管した場合も同様の罪となります。
自分の性的好奇心を満たすために児童ポルノにあたるわいせつな自撮り画像を所持していた場合(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限ります。)は、法定刑は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金になります。自己の性的好奇心を満たす目的で、こうした情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)も、同様の罪となります。 -
(2)埼玉県青少年健全育成条例違反
埼玉県では、平成30年12月に施行した埼玉県青少年健全育成条例の一部改正により、青少年(18歳未満(婚姻により成年に達したものとみなされる者を除く。))に対し以下の方法で当該青少年に係る児童ポルノ等を要求する行為が禁止となり、違反した場合、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
- 青少年に拒まれたにもかかわらず、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を求めること
- 青少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させ、又は青少年に対し、対償を供与し、若しくはその供与の申込み若しくは約束をする方法により、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を求めること。
児童ポルノの製造・所持・保管にいたらなくとも、上述の態様で要求しただけで罰則が科されうることとなります。
3、逮捕から裁判までの流れ
児童ポルノ法違反等の嫌疑がかけられた場合、逮捕から裁判に至るまでどのような処遇を受けるのか、おおまかな流れを解説します。
-
(1)任意の事情聴取
被害届が出された場合、警察は被疑者に対し任意の事情聴取をすることが多いでしょう。また被害届が提出されていなくても、別件の捜査から児童ポルノの証拠が見つかることもあります。
被疑者が素直に呼び出しに応じ、捜査に協力するならば逮捕されず在宅のまま起訴に至るケースもあります。 -
(2)逮捕・警察での取り調べ
捜査の結果、被疑者が罪を犯したことを疑うに足る相当な理由があり、かつ被疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合、警察は裁判所に対し逮捕状を請求します。裁判所が逮捕の理由と必要性を認め逮捕状を発付すると、警察は逮捕状を持参して被疑者の自宅などに赴き、原則逮捕状を示して逮捕し、身柄を確保します。
逮捕後は、直ちに犯罪事実の要旨および弁護人を選任することができる旨を告げられた上、弁解の機会を与えられます。留置の必要がない場合は直ちに釈放され、留置の必要があるときは、被疑者が身体を拘束されてから48時間以内に警察の取り調べを受け、検察官に送致されます。
もし犯罪の事実がなく、嫌疑が晴れたらこの段階で釈放されます。 -
(3)送致・検察での取り調べ
警察の取り調べの後、被疑者の身柄は検察に送致(送検)されます。検察が被疑者を受け取ったときから24時間以内で取り調べを受けることになり、検察は、取り調べを通じて被疑者を勾留すべきか否か若しくは起訴すべきか否かの判断を行います。この勾留の決定が出るまで、家族は被疑者と面会できません。弁護士に限って、面会可能です。なお、被疑者の身体拘束の時間制限は、被疑者が身体を拘束されたときから72時間を超えることができません。
-
(4)勾留から裁判まで
送致後、引き続き身柄を拘束したまま取り調べが必要と判断した場合、検察官は裁判所に対して「勾留(こうりゅう)請求」を行います。
勾留が認められると10日間の身柄拘束となります。勾留は児童ポルノ法違反や埼玉県青少年健全育成条例違反の場合、最長で20日まで延長可能です。勾留が決定してしまうと、逮捕から数えると23日もの間自宅に帰ることができないということです。
他方、被疑者が定まった住所を有しないときでなく、かつ、逃亡し逃亡すると疑うに足りる相当な理由がなく、かつ証拠を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がないと判断されれば、在宅事件扱いとなることもあります。この場合、身体の拘束は行われませんが、検察の呼び出しに応じて取り調べを受けなければなりません。
検察は被疑者が勾留されたら勾留期間内、在宅事件になったら取り調べが終わり次第、起訴するか、不起訴処分とするか決定します。犯罪を立証できないと判断された場合には不起訴処分になり身柄も釈放され前科もつきません。
起訴されると、裁判により判決を受けることになります。起訴には略式請求と公判請求があります。略式請求とは、公判を開くことなく書面審理によって一定範囲の財産刑を科する簡易な手続きです。
勾留されている状態のまま、公判請求を受けたときは、原則、身柄の拘束を受けたまま刑事裁判を受けることになります。このとき、裁判所に対し保釈請求を行い、保釈が認められた場合は身柄が釈放され、自宅から裁判へ通うこととなります。
4、弁護士に依頼したほうがよい理由
前科をつけたくない、早期に身柄を解放されたいなどのときは、弁護士に依頼し、初期からサポートを得ることをおすすめします。
弁護士に依頼することによって、家族に代わって状況を整理し、早期に事態を解決するための手だてを提案するとともに、適切な弁護活動に着手できます。
早期に依頼したほうがよい理由のひとつは、ご家族であれば面会が制限される時期であっても、弁護士であれば被疑者と面会し、対応についてアドバイスできることが挙げられます。取り調べで話したこと、その中でも被疑者の自白は、裁判においても非常に重要な証拠として扱われます。取り調べでの発言が、判決や量刑に大きく関わる可能性があるのです。弁護士との面会を通じて、何を話すべきか、何を話さないほうがよいかなどのアドバイスを受けることで、適切な対応ができるでしょう。
弁護士に依頼すべき理由のもうひとつは、不起訴処分につながる手だてとして、被害者との示談交渉が重要であるためです。示談が成立している事件は、当事者間で解決済みとして不起訴処分となる可能性が高まります。未成年者の性被害であればなおさら、当事者同士の交渉は難しいものです。したがって、スムーズな示談交渉には弁護士の仲介がより望ましいものとなるでしょう。
弁護士は、意見書などにより早期の身柄釈放の働きかけなども行います。
5、まとめ
万が一、家族がわいせつな自撮り画像の要求で逮捕されてしまったとしたら、ショックのあまり何をすべきか判断できないかもしれません。被害者への謝罪、賠償金の支払い、勤め先への連絡など、すぐにでも動かねばならない状況になることでしょう。事件が報道されたとしたら家族のプライバシーを守る必要もあります。
このようなときは、すぐにでも弁護士に相談したほうがよいでしょう。取り調べの前後に、弁護士のアドバイスを得ることができます。
さいたま市内でご家族が逮捕されてしまったときは、まずはベリーベスト法律事務所 大宮オフィスへご連絡ください。ご家族の平和な生活を守り、被疑者に重すぎる刑罰が科されないよう、全力でサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています