強制わいせつ容疑で警察に連行されるかも……逮捕されたらどうなる?

2018年09月10日
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強制わいせつ容疑で警察に連行されるかも……逮捕されたらどうなる?

お酒の勢いで、「路上でいきなり見知らぬ女性に抱きついて胸をさわる」といった行為をしてしまった経験はありませんか?
冷静になった今、後悔するとともに、「犯罪になるのか」「刑罰はどの程度なのか」「逮捕されるのか」など、不安や恐怖を感じているかもしれません。
無理やり抱きつく、胸をさわるなどの行為は、強制わいせつ罪にあたる可能性があります。強制わいせつ罪について理解し、逮捕後の手続きの流れを知ることで、どのように対処すべきなのかがわかります。これらの点について、大宮オフィスの弁護士が解説します。

1、強制わいせつ罪とは

まずは基礎知識として、強制わいせつ罪とはどのような犯罪なのかという基本的な部分をご紹介します。

  1. (1)強制わいせつ罪の法的根拠

    強制わいせつ罪は刑法第176条で以下のように規定されています。
    第176条
    13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
    まず押さえておきたいポイントは以下の3点です。

    • 強制わいせつ罪の行為対象は性別を問わない
    • 相手が13歳以上であれば、「暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした」場合に犯罪が成立
    • 相手が13歳未満であれば、暴行または脅迫を用いなくとも「わいせつな行為をした」場合には犯罪が成立


    つまり、あなたが加害してしまった相手が13歳以上の場合、相手がわいせつ行為に心から同意していれば、強制わいせつ罪は成立しません。しかし、相手が13歳未満であれば、たとえ同意があっても強制わいせつ罪が成立しうるということです。この点はしっかり認識しておく必要があります。

  2. (2)どのような刑罰を受ける?

    強制わいせつ罪が成立する場合に科される刑罰は、原則として、刑法第176条に記されたとおり、6ヶ月以上10年以下の懲役刑となります。
    痴漢等で条例違反に問われた際には罰金刑が科されることがありますが、強制わいせつ罪には罰金刑の定めはありません。強制わいせつ罪で有罪となった場合には、執行猶予がつかない限り刑務所に入ることになります。強制わいせつ罪という犯罪は、それだけ重い犯罪であることを覚えておきましょう。

2、強制わいせつ罪の成立要件を知っておこう

具体的に、強制わいせつ罪だと認定されてしまう条件はどのようなものなのかが気になる方もいるでしょう。罰金刑で済むこともある痴漢との違いはどこにあるのかを知っておきましょう。

  1. (1)暴行または脅迫があった

    被害者となる相手が13歳以上の場合、強制わいせつ罪となる必要条件に「暴行または脅迫を用いた」ことが挙げられます。
    「暴行または脅迫」とは、具体的には以下のような行為が該当します。

    • 殴る、蹴るといった暴力
    • 体をおさえつける
    • 服や体を引っ張る
    • 相手方の隙を見たり不意をついたりしてわいせつ行為をした
    • 上下関係や仕事上などでの立場を利用して、わいせつな行為をした


    力を振りかざした暴力はもちろん、体格差・社会的地位の差などを利用して、身体的・肉体的に被害者の反抗を困難にさせる場合には、「暴行または脅迫があった」と認められる可能性が高いです。

    なお、わいせつな行為そのものが相手に恐怖を与え、反抗できない原因を作り出します。このことから、これを「暴行または脅迫があった」ものと解し、強制わいせつ罪が成立することもあります。

  2. (2)わいせつ行為

    裁判所における「わいせつ行為」は、「いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反する行為」が基本概念とされています。
    とはいえ、そもそも強制わいせつ罪は、「個人の性的自由」を保護する目的で作られた罪です。よって、被害者の性的な自由を侵害する行為だと認められれば、たとえあなた自身はわいせつ行為だと思わないような行為であっても、「わいせつ行為」にあたることがあります。

    たとえば陰部、女性の乳房やお尻などの性的とされる部位への接触はもちろん、唇へのキスなどの行為もこれにあたります。ハグについても、体を密着させて陰部を押し当てるような場合にはこれにあたる可能性があります。

    なお、被害者の性的部位を「着衣の上から」さわる行為などは、迷惑防止条例で定められた痴漢行為に分類されていますが、行為が執拗だと認められた場合は、強制わいせつ罪に認定されることがあります。

    最終的には、被害者が「わいせつな行為があった」と主張する行為がなされた場所、状況、時間帯、当事者間の関係などの具体的状況によって、わいせつ行為と認められるか否かが決まるともいえるでしょう。なお、強制わいせつ罪にはあたらないケースでも、行為の内容によっては暴行罪になる可能性がある点には注意が必要です。

  3. (3)性的な意図の要件について

    従来、強制わいせつ罪が成立するには、行為者が性的な意図を有していることが必要とされていました。しかし、今日では性的な意図があったことは不可欠の要素ではないと解されています。最終的には、実際に行為があった状況等を社会通念に照らし合わせることで判断されています。

3、逮捕された場合はどうなるか?

もし、強制わいせつ罪として逮捕されてしまったとき、今後どのような状況に陥るのかを解説します。

  1. (1)強制わいせつ罪による逮捕の可能性

    警察によって捜査が開始されると、あなたは「被疑者(ひぎしゃ)」という立場になります。実際に犯罪をしたかどうかが疑われている状態ということです。
    強制わいせつ罪では、被害者との接触が危ぶまれて逮捕されることが多いです。現行犯で捕まった場合はもちろん、後日、被害届、目撃証言、防犯カメラの映像などから容疑が固まって逮捕されるということも十分にありえます。

    まだ事件が警察に発覚していないなら、弁護士を伴って自首をすれば、逮捕を免れられる可能性が高まり、自首によって罪も軽くなりやすくなります。

  2. (2)警察での取り調べから起訴まで

    逮捕されると、まず警察署のなかにある留置場に入れられます。その間に警察は取り調べを行いますが、逮捕から48時間以内に検察庁に送致(そうち)されます。

    送致されると、検察官の取り調べを受けます。そして検察官から釈放か勾留かの判断を下されます。勾留すべきということになると送致後24時間以内に検察官から裁判官への勾留請求が出され,今度は裁判官の面談を受けることになります。裁判官が勾留決定を下すと10日間,警察署のなかの留置場で勾留されます。さらに勾留する必要があると検察官に判断されてしまうと、10日以内の日数でさらに勾留の延長を裁判所に請求されてしまいます。裁判所から延長の決定がくだされると、正式に勾留が延長されます。

    この勾留期間が終わるころ、検察官が被疑者を起訴するのか不起訴にするのか判断します。不起訴となれば釈放です。しかし起訴されてしまうと、保釈されないかぎり、裁判が終わるまで留置場のなかにいなければなりません。

  3. (3)在宅起訴

    検察官に起訴されれば、刑事裁判が開かれることになり、あなたは「被告人」という立場になります。起訴前の段階で勾留されている場合には、刑事裁判が行われている間も、保釈が認められない限り、引き続き身体を拘束され続けることになります。

    他方で、逃亡・証拠隠滅の恐れがないと判断されて釈放された場合、そもそも逮捕されなかった場合には、ご自宅で日常生活を送っていながら起訴されるということもあります。逮捕後、勾留請求がなされずに72時間以内で釈放されたからといって、必ずしも起訴されないとは限りません。なお、起訴された場合は99%が有罪となると言われています。

  4. (4)逮捕されたときにできる対応・対策

    逮捕された場合、勾留の決定が出るまで、すなわち逮捕から72時間は、家族の面会および差し入れは禁止されます。つまり、この期間については、外部からのサポートは望めないと考えておいたほうがよいでしょう。

    ただし、弁護士だけは面会が許されています。早く留置場から出たければ勾留を阻止しなければなりませんし、不起訴にして前科が付かないようにしたければ被害者と示談しなければなりません。いずれにせよ、できるだけ早く対応をとる必要があります。逮捕された場合には、早期に弁護士に相談して、適切な対応をとってもらうのが得策です。

  5. (5)2017年の刑法改正について

    最後に、2017年の法改正について触れておきます。

    これまで強制わいせつ罪は「親告罪」に分類されていて、被害者の告訴がなければ検察官は起訴することができませんでした。しかし、2017年の刑法改正によって「非親告罪」化しています。つまり、強制わいせつ罪について、仮に被害者が告訴を取り下げた場合でも、警察・検察は捜査の上で、被害者の告訴なしに犯人を起訴することができるようになりました。ただ、そうはいっても示談が成立すれば不起訴になる可能性は高まりますから、示談の重要性は変わりません。

4、まとめ

今回は、強制わいせつ罪の刑罰や逮捕された場合の手続きなどを解説しました。

自身の行為が強制わいせつ罪にあたると思われる場合には、何よりも、被害者に謝罪して示談を成立させることが必要です。強制わいせつ罪は非親告罪となりましたが、被害者の意思が警察の捜査に与える影響は大きいものです。被害者と示談を成立させることで、身柄が解放されたり,不起訴になったり、判決において刑が軽くなったりすることが期待できます。

あなた自身の行為が強制わいせつ罪にあたるかどうかの判断が難しい、逮捕されるのではないかという心配がある、示談などの対応をとりたい……というときは、早い段階で弁護士に相談してください。

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