居酒屋で強制わいせつをしてしまったら? 示談方法や示談金の相場を知っておこう

2018年09月13日
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居酒屋で強制わいせつをしてしまったら? 示談方法や示談金の相場を知っておこう

会社の飲み会で居酒屋へ。つい気分が盛り上がり、取引先の女性の胸をもみ、下着の中に手を差し入れてしまった……。いや、でも拒まれなかったし、きっと相手も喜んでいる……と思い込むのは危険です。相手は何より取引先の女性。あなたの恋人ではありません。

たとえ恋人でも問題です。場所が場所なだけに抵抗できなかっただけで、相手が同意しているというのはあなたの勘違いでしかなく、行き過ぎたセクハラ行為だと相手から受け止められていれば、強制わいせつ罪に問われてしまう可能性があります。

強制わいせつ罪は刑罰が重く、事件化されてしまった場合、あなたは大きな不利益を被ることになってしまう可能性が高いです。事件化されてしまった場合には、可能な限り、相手に謝罪し、示談交渉をまとめるのが得策でしょう。今回は、強制わいせつ罪の概要や、示談のメリット、方法、示談金の相場について、大宮オフィスの弁護士が解説していきます。

1、強制わいせつ罪とは? 定義や刑罰を解説

強制わいせつ罪と聞くと、女性に無理やり襲いかかる行為や、強制性交まがいの卑劣な行為をイメージしがちです。しかしながら、男性にとっては「このくらいの行為で?」と思っているような行為でも、強制わいせつ罪に該当することがあります。また、強制わいせつ罪の被害者となる対象は、女性だけだと思われがちですが、男女問わず被害者となる可能性がある点も忘れてはなりません。

本項では、強制わいせつ罪とはどのような犯罪なのか、どのような行為が該当するのか、どれくらいの罰を受けることになるのかなどを解説していきます。

  1. (1)強制わいせつ罪の定義

    強制わいせつ罪は、刑法第176条に規定されている性犯罪のひとつです。刑法の条文では、「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者」と規定されています。

    「暴行又は脅迫」とは、被害者の反抗を著しく困難にする程度のものとされています殴る・蹴るなどの暴力行為を想像しがちですが、ここでいう暴行・脅迫は、単純な暴力行為だけを指しているわけではありません

    たとえば、下着の中に手を差し入れるという行為は、それだけで被害者に、「大声を出して抵抗すれば、暴行やそれ以上の辱めを受けるかもしれない」という恐怖感を抱かせる場合があります。つまり、合意なく行われたわいせつ行為そのものが、暴行または脅迫となり得るわけです

    強制わいせつ事件は、特に被害者の供述が重く捉えられる傾向があります。つまり、被害者が、「怖くて抵抗できなかった」と供述してしまえば、「暴行又は脅迫があった」と判断されてしまうことがあるということです。もちろん、あなたと相手との関係性や、現場の状況なども考慮して、判断されることになります。

    また、「わいせつな行為」とは「被害者の性的羞恥心を害する行為」とされています。具体的には、下着の上からお尻を触る、服の上から執拗に胸を揉む、下着の中に手を差し入れて陰部を触るなどの行為のほか、密室や暗所で無理やりキスをした、突然抱きついた、押し倒したなどの行為でも該当することがあります。

  2. (2)強制わいせつ罪の刑罰

    刑法第176条では、強制わいせつ罪の刑罰を「6ヶ月以上10年以下の懲役」と定めています。つまり、有罪判決を受ければ、執行猶予や減刑がなされない限り、最低でも6ヶ月、最長では10年の懲役刑を受けることになります

    迷惑防止条例で規定されているような罰金刑はありません。懲役刑しかないという厳しさが、強制わいせつ罪の特徴といえます。事実、警察では、強制わいせつ罪を、殺人や強盗などの犯罪に並ぶ「重要犯罪」と定義し、検挙に重点を置いています。強制わいせつ罪は、個人の性的自由を侵害する度合いが高く、国民の脅威となっている犯罪の1つなのです。

  3. (3)相手が13歳未満の場合

    わいせつ行為の対象が13歳未満の場合は、わいせつな行為をした時点で強制わいせつ罪が成立します。暴行・脅迫を用いていなくとも、相手が合意していたとしても、犯罪が成立します。

    これは、13歳未満の児童には、性的な知識や判断力が十分に備わっていないためです。

2、強制わいせつ事件の示談

強制わいせつ罪は、懲役刑のみの重い犯罪です。起訴されると、裁判所で公判手続が行われ、最終的には裁判官が判決を下します。なお、日本においては、起訴されると約99%が有罪判決になります。つまり、起訴されてしまうと、執行猶予判決が下されない限り、基本的には刑務所に収容されてしまうことになります

ただし、強制わいせつ罪で起訴された方は、平成29年度の犯罪白書によると、全体の40%程度とされています。どうすれば起訴を回避し、前科がつかないようにすることができるのでしょうか。

ここでは、強制わいせつ事件の示談について解説していきます。

  1. (1)強制わいせつ事件で示談をまとめるメリット

    強制わいせつ事件は、2017年に、被害者による告訴がなくても、検察官が起訴できる「非親告罪」に変更されています。

    しかし、事件化した場合の多くは、被害者の供述を柱として捜査が進められていきます。もちろん、DNA鑑定などの科学捜査も併せて行われることはありますが、基本的には、被害者の供述が事件の要です。

    つまり、被害者が警察に被害届を提出することで事件化してしまうと、「つい酔っ払ってしまって……」、「相手は嫌がっていなかったので……」などと言い訳をしても、後の祭りになることが多いのです。

    事件化してしまう可能性が高い場合は、いち早く被害者と示談交渉を進めて、被害届を提出しないことを確約してもらうことが重要なファーストステップとなります。

    また、すでに被害届が提出されている場合であっても、示談が成立すれば、被害届を取り下げてもらえることがあります。警察や検察による捜査が進んでいても、被害者との示談が成立していれば、再犯などの悪質なケースでない限り、検察官が起訴する確率は極めて低くなります。

    示談交渉にデメリットはありません。初期段階で示談が成立すれば、事件化したり逮捕されたりすることを防ぐことができます。また、事件化したり逮捕されたりしてしまった後でも、示談が成立すれば、早期釈放や起訴の回避を実現する可能性が高まるというメリットがあります

  2. (2)強制わいせつ事件における示談の方法

    示談とは、ひとことでいえば「話し合い」です。

    話し合いであることから、原則的には当事者同士で行うべきと思われる方もいるかもしれません。また、相手が目下や知り合いであれば、あなた自身もそのほうが早いと思われるかもしれません。

    しかし、強制わいせつ事件をはじめとした性犯罪事件の場合、被害者は、「加害者と会うことで被害時の状況がフラッシュバックしてしまう」、「加害者の顔を見ることさえ辛い」という心境になっていることは少なくありません。中には、外出すらできないという心境に陥ってしまい、出社などもできない状態になっていることも多々あります。性犯罪の被害者がこのような気持ちになってしまうことは、当然ともいえるでしょう。

    このようなことから、もし、強制わいせつ事件を起こしてしまい、なんとか示談を成立させたい場合には、犯人である自分自身が示談の場に出向くべきではないでしょう。法的知識に明るい弁護士を選任し、当該弁護士に示談交渉を任せるべきです実際のところ、弁護士が代理人となることで、被害者も示談交渉を受け入れやすくなります

    ましてや、加害者自身が話し合おうとしても、被害者にとってはそれ自体が脅迫であると受け取り、示談交渉に応じることさえ拒むケースがあります。だからといって示談交渉を強制すれば、話はさらにこじれてしまうことでしょう。一方で、被害者側から法外な慰謝料を請求されることも珍しくありません。そういう意味で、加害者自身やその家族だけで示談交渉を進めようとすることは、危険であることが多いのです。

    他方で、弁護士が相手となれば、法外な慰謝料を提示することは得策でないと被害者が察知してくれることが多いです。また、弁護士は、被害者に対して、捜査機関に被害届を提出することを思いとどまるよう説得するとともに、被害届が提出済みであれば、被害届を取り下げることについて交渉します。さらに、示談交渉が成立した場合には、口約束で終えず、示談書を作成するなど、着実な示談交渉を行います。

    このような理由から、強制わいせつ事件の示談交渉は、弁護士に任せることをおすすめします

  3. (3)強制わいせつ事件における示談金の相場

    示談を成立させる場合、「示談金」の支払いが発生します。

    強制わいせつ罪における示談金の性質は、一般的には、被害者が被った精神的な被害に対する慰謝料です。そのため、示談金としてあなたが支払うべき金額は、被害感情の強さと犯行の悪質さによって変わることが多いです。

    強制わいせつ事件における示談金の相場は、ケースによって様々です。犯行が悪質だったり、被害者が未成年だったり、「許せない」という気持ちが強かったりすれば、相場以上の金額になることもあります。

    強制わいせつ事件の示談金はかなりの高額になることがあります。しかしながら、その一方で、示談が成立しなければ、10年を上限とする懲役刑が科されるリスクが高まることを考えると、示談で解決するメリットは大きいといえるでしょう。

3、まとめ

今回は、酒の勢いや衝動的な性欲が原因で起こりやすい「強制わいせつ罪」について、その概要や示談交渉の方法、示談金の相場を解説しました。

強制わいせつ罪は刑罰が重く、実刑となった場合にはその後の社会生活にも影響が出る可能性が高いものです。まずは、被害者に対して誠実な謝罪を行い、示談によって解決を図ることが重要となります。そして示談は、法律の専門家であり、示談交渉の経験が豊富な弁護士に任せることが得策です。

強制わいせつ罪にあたる行為をしてしまい、今後のことについて悩んでいる方は、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスまでご連絡ください。全力でサポートいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています