夫や息子が公然わいせつ罪で逮捕。家族ができることや釈放のタイミングを解説
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平穏な生活を送る中、突然、「あなたの夫(息子)を公然わいせつ容疑で逮捕しました」と警察から連絡を受けたとき、あなたは冷静でいられるでしょうか。
さいたま市大宮区は、歓楽街があり、埼玉県の中でも特に犯罪発生率が高い地域です。過去には公然わいせつ事件も起きています。上記のような連絡を警察から受けたとき、何かに巻き込まれたのではないかと心配するとともに、まさか自分の家族が性犯罪を? という気持ちで混乱することでしょう。もし事実であった場合には、家族として、「早く警察署から出してあげたい」、「少しでも刑を軽くしてあげたい」という気持ちに駆られることと思います。
しかし、公然わいせつ罪のことを知らなければ、対応することも難しいでしょう。家族が公然わいせつ罪で逮捕された場合、知らせを受けた家族が取るべき行動とは、いったいなんでしょうか。公然わいせつ罪の概要や釈放のタイミング、会社や学校への影響などについて、大宮オフィスの弁護士が解説します。
1、公然わいせつの定義と具体的行為
公然わいせつ罪の「公然」とは、「不特定または多数の人が認識できる状態」をいいます。認識できる状態であれば、実際に不特定または多数の人が行為を認識したかどうかは関係ありません。つまり、実際は誰からも見られていなかったとしても、不特定または多数の人から見られる可能性があれば、「公然」に該当します。
また、「わいせつな行為」とは、過去の判例で、「いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」と示されています。
よって、具体的には、以下のような行為が公然わいせつ罪に該当します。
- 飲食店で全裸になる
- 公共交通機関の車内や施設内で下半身を露出する
- 陰部を露出してストリップショーをする
- 性交渉の様子をネット上でリアルタイム配信する
なお、埼玉県では、路上で下半身を露出した上で女性に放尿した男性や、車を運転しながら下半身を露出した男性が、公然わいせつ罪で逮捕されたという事例があります。
2、公然わいせつ罪の量刑
公然わいせつ罪の刑罰は、刑法174条にて、「6ヶ月以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」と定められています。刑の重さにはある程度の幅があり、事件の悪質性などによって量刑が決められます。
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(1)量刑が重くなるケース
以下のようなケースでは、刑が重くなる傾向にあります。
- 特定の相手を狙って犯行におよんだ
- 相手が児童だった
- 共犯者が多数いる組織的な犯罪だった
- 常習性があった
- 同種の前科が複数あった
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(2)量刑が軽くなるケース
公然わいせつ罪においては、一般的には略式起訴による罰金刑が多く、中には不起訴処分で済む場合もあります。以下のようなケースでは、刑が軽くなる傾向にあるようです。
- 初犯で本人が深く反省している
- 常習性がなく再犯のリスクも低い
- 被害者との示談が成立している
- 贖罪寄付などを行い、反省の意を示している
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(3)未成年の少年の処分
公然わいせつ事件を起こした者が未成年だった場合、事件は家庭裁判所に送られます。
その後、家庭裁判所によって、以下のいずれかの処分がなされます。- 保護処分決定
- 検察官送致
- 都道府県知事または児童相談所長送致
- 審判不開始
- 不処分
家庭裁判所が未成年者に対して行う処分は、当該未成年者を更生させて、再び事件を起こすことのないようにすることを目的としています。場合によっては、少年院送致などによって家族と離れ離れになる可能性もあるでしょう。特に公然わいせつ事件では、事件の異常性から、施設内で更生する必要があると判断されるケースも少なくないようです。
3、身柄を釈放される4つのタイミング
公然わいせつ罪で逮捕された後に釈放されるタイミングが4つあります。それぞれのタイミングでできる働きかけについては、「5、逮捕された夫(息子)のためにできること」を確認してください。
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(1)逮捕されてから勾留されるまでの間
最初に釈放されるタイミングは、逮捕されてから勾留されるまでの間です。
具体的には、逮捕されてから検察庁に送致されるまでの最大48時間と、その後検察官から裁判官に勾留請求(引き続き身柄拘束を求めること)がされるまでの最大24時間を合計した時間内です。ただし、警察の取り調べが行われている間は、弁護士以外との面会は禁止されます。 -
(2)勾留されてから起訴されるまでの間
2つ目の釈放されるタイミングは、勾留されてから起訴されるまでの間です。
裁判官によって勾留請求が認められると、被疑者は原則10日間以内、必要があればさらに10日間延長され、最長で20日間勾留される可能性があります。もっとも、勾留の必要性が無くなれば釈放されます。 -
(3)起訴されてから判決が確定するまでの間
3つ目の釈放されるタイミングは、起訴されてから判決が確定するまでの間です。起訴されると、判決が確定するまで引き続き身柄を拘束されてしまう可能性があります。一般的には、起訴されてから判決が確定するまで、少なくとも1ヶ月以上は掛かります。もっとも、保釈が認められた場合や、略式起訴がなされた場合には、直ちに釈放されることになります。
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(4)執行猶予付き判決がでた場合
公然わいせつ罪で懲役刑が科されると、最長で6ヶ月もの間、刑務所に入ることになります。これでは、心身の負担がより大きくなってしまうことは想像に難くありません。しかし、執行猶予付きの判決を獲得すれば、刑務所に収監されることなく釈放されます。執行猶予期間中に再び罪を犯さなければ、その刑の言い渡しは将来にわたり効力を失います。
4、仕事や学業への影響
身柄が拘束されることによる仕事や学業への影響は、どの程度考えられるのでしょうか。解雇や退学のほか、実名報道されるリスクについて解説します。
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(1)解雇や退学のリスク
逮捕されただけで即座に解雇や退学となるわけではありませんが、可能性としては否定できません。特に懲役刑を科された場合、刑の重さから事件が悪質であったと判断されます。その上、刑期中は、当然のことながら、会社や学校に通うことができなくなります。長期欠席、もしくは休職となることから、解雇や退学の可能性が高くなると考えられるでしょう。
一方、罰金刑や不起訴処分で済むと、懲役刑が科された場合に比べれば、解雇や退学の可能性は低くなります。ただし、起訴前の勾留段階でも、無断で会社や学校を休んでしまうと、何かしらの処分を受ける可能性があるでしょう。家族などが状況に応じて、会社や学校に休む理由を伝えるようにしましょう。
ただし、前述したとおり、罰金刑は有罪判決と同じです。つまり、前科がつくことになります。前科がつくことによって、社会生活上ある程度の制約を受けることも予想されます。将来のことを考えれば、可能な限り、不起訴を目指したほうがよいことは確かです。 -
(2)実名報道される可能性
公然わいせつ事件の実名報道に法的な決まりはありませんが、一般的には、社会的影響の度合いや社会情勢によって判断される傾向にあります。例えば、一般のサラリーマンや学生よりも、公務員や公的資格者、有名人などの方が実名報道されやすいと言えます。
凶悪事件や災害などの優先すべきニュースがあれば、公然わいせつ事件は大々的に報道される可能性は低くなります。なお、通常は、逮捕の事実について、捜査機関から、会社や学校に対して直接連絡がされることはありません。しかし、会社や学校が、目撃者などから知ってしまう可能性も否定できません。たとえ解雇や退学にならなかったとしても、本人が会社や学校に居づらくなり、自主退職や自主退学に追い込まれてしまうことも考えられます。
5、逮捕された夫(息子)のためにできること
夫や息子のために、残された家族として取るべき行動を紹介します。
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(1)弁護士への相談
残された家族が真っ先に取るべき行動は、弁護士に相談することです。費用面で弁護士への依頼が難しい場合には、当番弁護士を依頼するとよいでしょう。誰でも1回は無料で利用できます。
弁護士に相談することで以下のようなメリットがあります。
・逮捕段階での面会ができる
逮捕後72時間は、家族であっても夫(息子)と面会はできないことの方が圧倒的に多いです。このタイミングで本人と接触できるのは、原則として弁護士だけです。弁護士に依頼すれば、早い段階で本人から事情を聞き、サポートを受けることができます。
・早期の身柄解放に向けた働きかけ
弁護士から検察官や裁判所に対して意見書を提出する、勾留されてしまった場合に弁護士による準抗告(不服申し立て)を行うなど、早期の身柄解放に向けた働きかけができます。
・不起訴処分の可能性
公然わいせつ事件は起訴率が高い犯罪ですが、弁護士の働きかけによって不起訴になる可能性があります。具体的には、特定の被害者との示談や贖罪寄付(しょくざいきふ)、家族の監視体制強化を訴えるなどの方法があります。
・量刑を軽くする
起訴されてしまった場合でも、弁護士から、略式起訴による罰金刑や執行猶予付き判決を獲得するための働きかけができます。 -
(2)性犯罪の再犯防止対策
公然わいせつ事件を起こす方の中には、わいせつ行為に対する欲求を抑えたくても抑えられず苦しんでいる方もいます。再犯の可能性がある場合には、単に刑罰を受ければいいというわけではなく、再犯の回避や本人のケアなども含めた対策を講じる必要があります。たとえば、専門家によるカウンセリングを受けさせる、ストレスを減らすために生活環境を整える、監視体制を設けるなどの方法が考えられます。
6、まとめ
今回は、公然わいせつ罪の概要や釈放のタイミング、仕事や学業への影響などについて解説しました。公然わいせつ罪は、懲役刑や未成年の少年院送致などもあり得る犯罪類型です。家族は少しでも早く、早期釈放や不起訴を目指すための行動を起こす必要があります。
専門家である弁護士に相談することで、早期釈放や量刑を軽減するための弁護活動が可能になります。弁護士への早期依頼は、仕事や学業への影響を最小限に抑えることにもつながります。
公然わいせつ容疑で家族が逮捕されてしまった場合は、迅速な弁護活動が、逮捕された本人の将来に影響します。ぜひ、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスまでご連絡ください。刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士が、ご家族の日常生活を守るための弁護活動をさせていただきます。
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