ストーカー警告された! 冤罪のときは取り消しできる? 適切な対応法

2024年07月31日
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ストーカー警告された! 冤罪のときは取り消しできる? 適切な対応法

埼玉県警がまとめている「令和6年版 警察のあゆみ」によると、令和5年中に寄せられたストーカー事案の相談受理件数は1032件で、内、警告件数は48件、禁止命令件数は72件、検挙に至ったのは67件あったことが公表されています。

ストーカー行為で逮捕や起訴をされるのは、テレビの中だけの話ではありません。実際に身近で起きている話なのです。

警察から連絡が来て、警告や禁止命令を出されてしまったものの、冤罪だとお考えになり、納得できない方がいるかもしれません。本コラムでは、どのような行為がストーカーにあたるのか、警告などは取り消しできるのか、逮捕の可能性や問われうる罪から、適切な対応方法について、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスの弁護士が解説します。


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1、ストーカー規制法とは?

ストーカーの疑いをかけられたが、身に覚えがないこともあるでしょう。それが冤罪かどうかを判断するにはストーカー規制法について知っておく必要があります。

ストーカー規制法の正式名称は、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」です。平成11年に起きた桶川ストーカー殺人事件をきっかけに、平成12年に施行されました。さらに平成28年に処分制度関連が抜根的に改正され、平成29年6月、令和3年6月15日、令和3年8月26日と頻繁に改正・施行されています。

その名のとおり、ストーカー行為を規制することによって、個人の身体、自由、名誉に対して危害が及ぶのを未然に防ぐことを目的とした法律です。

2、どのような行為がストーカーにあたるのか?

ストーカー規制法では、「つきまとい等」と「ストーカー行為」が規制の対象となっています。「つきまとい等」と「ストーカー行為」の定義を確認しておきましょう。

  1. (1)つきまとい等

    「つきまとい等」とは、特定の個人に対する恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を満たす目的で、特定の個人本人はもちろん、その配偶者、親や兄弟などの家族等に対して、次のような行動をすることを指します。

    1. ①つきまとい、待ち伏せ、現に所在する場所または住居等への押し掛けなどをすること
    2. ②被害者を監視していることを告げること
    3. ③被害者との面会や交際などを要求すること
    4. ④被害者を大声で怒鳴るなど乱暴な言動をすること
    5. ⑤被害者に無言電話をかけることや、被害者に拒否されているのにメールやFAXを連続して送ること
    6. ⑥汚物や動物の死骸などを被害者に送り付けること
    7. ⑦被害者を誹謗中傷する内容の文書を被害者に送るなど被害者の名誉を傷つけること
    8. ⑧わいせつな写真を送る等の行為により被害者の性的羞恥心を侵害すること

    さらに、令和3年8月26日には、以下の事項も規制対象に追加されています。
    ●相手の了承を得ないでGPS機器などを取り付けること
    ●GPS機器を用いて相手の居場所を取得すること

  2. (2)ストーカー行為

    ストーカー行為とは、前章に記載した「つきまとい等」の行為を、同じ人に対して何度も繰り返すことを指します。
    ただし、上記の①から④および⑤のうちメール等の送信の部分については、被害者の身体の安全や住居等の平穏、名誉が侵害されたり、行動の自由が損なわれる不安を抱くような場合に限られます。

3、警察からの警告、禁止命令

被害者が警察へ被害届を出すと、あなた側から見た事実とは関係なく、警察からの「警告」や公安委員会からの「禁止命令」が出されることがあります。

  1. (1)警告とは?

    警察からの警告とは、警察署長等が「つきまとい等をしてはならない」と警告をすることです。 この警告は文書で送られてきますので、送られた方は心理的に大きなダメージを受けることが少なくありません。警察から文書が送られてくることはめったにありませんし、家族と同居していれば家族にも知られてしまいかねないためです。

    警告に従わないと罰則があるのではと思うかもしれませんが、警告に従わないことを理由に罰せられることはありません。ただし、警告に従わない場合はストーカー行為をしたとして逮捕される可能性があります。

    もしあなたがつきまとい等をしていないのにかかわらず、警察から警告を受けたら、「相手とは今後、会話をすることは難しい」と判断したほうが無難です。素直に従うようにしましょう。

  2. (2)禁止命令が出されることもある

    警察から警告があると、それに従うケースがほとんどですが、自分の欲望をコントロールできず、警告を無視して同じ行為を繰り返す人がまれにいます。そのようなケースでは禁止命令を出されることになります。

    禁止命令には、①つきまとい等をして被害者に身体の安全、住居等の平穏、名誉を侵害したり、行動の自由が著しく害される不安を覚えさせたりすること禁止するものと、②そのような行為がなされることを防止するために必要な事項を命じるものがあります。

    禁止命令を行う前には、加害者の言い分を聞く聴聞の機会が与えられることになっています。しかし、緊急の場合は、加害者の言い分も聞かずに禁止命令等を出すことが可能です。緊急時における被害者保護の観点から、法改正により手続きが簡略化されました。

    なお、法律上は警告なしにいきなり禁止命令を出すことも可能ですので注意しましょう。

    先述したとおり、警察からの警告に従わなくても罰則はありませんが、禁止命令に従わないと「6か月以下の懲役」または「50万円以下の罰金」に処されます。

4、警察から警告を受けた場合どうすればいい?

では、心当たりもないのに警察から警告を受けた場合はどのように対処すればよいのでしょうか。

  1. (1)警告に従う

    警察から警告を受けたら、原則として、つきまとい等に該当するような行為をやめましょう。警察からの警告に従わないと、禁止命令を出される、被害者から刑事告訴される危険性が高まります。

  2. (2)警告が冤罪だと思うときは弁護士へ相談する

    被害者に対してストーカー行為をしていた認識がなく、被害者の思い込みや誤解によるケースもあるかもしれません。ストーカー行為をしたとは思えないようなケースなら、警告に納得できないのも無理はありません。自分に言い分があるのに黙って警察の警告を受け入れるのは不条理と感じるはずです。

    だからといって、被害者と直接話し合いをしようとするのは得策ではありません。前述のとおり、すでに相手はあなたと直接話ができる状態ではないのです。直接の話し合いを求めた結果、禁止命令が出される、逮捕されるなどの事態に発展してしまうことも考えられます。
    自分自身は問題がないと思っていても、客観的にはつきまとい等にあたる行為をしてしまっていることがあります。警告に納得がいかない場合には、弁護士に相談しましょう。弁護士ならば専門家として客観的に判断をすることが可能です。

  3. (3)警告に従えば処罰されない?

    ストーカー規制法による処罰条件には、警察の警告に従わなかったという条件はありません。そのため、警告を受けた後にストーカー行為等をやめたとしても、警告前に行っていたストーカー行為で処罰される可能性があります。

    また、被害者から告訴されるケースがあるかもしれません。その場合は、速やかに弁護士に依頼し、無実の罪であることを主張したほうがよいでしょう。たとえ告訴されたとしても、警察の警告に従い相手との接触を断っているようであれば、不起訴になったり、情状酌量により刑が軽減されたりすることもあります。

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5、ストーカー規制法違反の量刑はどのくらい?

ストーカー行為をして有罪となれば「1年以下の懲役」または「100万円以下の罰金」に処されます。警察本部長等からの禁止命令に従わずにストーカー行為をした場合は、「2年以下の懲役」または「200万円以下の罰金」に処されます。

禁止命令に従わずにストーカー行為をした場合は刑罰が2倍になっていますが、これは禁止命令に従わないことを悪質と判断しているからです。また、ストーカー行為にあたる場合以外で禁止命令に違反すると、「6か月以下の懲役」または「50万円以下の罰金」で処罰されます。

6、被害者との示談について

被害者が警察へ被害届を出している場合、実際につきまといやストーカー行為をした事実があれば、逮捕されるのを避けるためには被害者との示談を成立させて、被害届を取り下げてもらう必要があります。ここでは、ストーカー事件における被害者との示談について解説します。

  1. (1)示談金の相場はいくら?

    そもそも示談とは、加害者と被害者が話し合いを通じて、事件を解決しようとするものです。ストーカー事件における示談は、加害者は被害者に対して賠償金などを含めた示談金を支払い、被害者は加害者を許すという意図の文面(宥恕文言)を示談書に入れることが一般的です。

    ストーカーの被害はそれぞれの事件で被害の程度や状況がまったく異なるため、どうしても示談金の額に幅があります。状況によって異なるだけでなく、示談交渉の段階における被害者の感情にも左右されます。そのため、一概に相場はいくらということはできません。

    ただし、被害者から高額な示談金を請求される場合は、弁護士に交渉を任せたほうが賢明でしょう。 なお、この示談交渉をするために相手に連絡を取ること自体が問題視される可能性もあります。被害届を出されてしまった場合には、いち早く専門家に相談することが望ましいでしょう。

  2. (2)示談交渉すれば必ず成立するのか?

    交渉すれば必ず示談が成立するわけではなく、被害者の感情を害すると示談不成立になることもあります。示談交渉では被害者感情への配慮が欠かせないため、加害者とされてしまった方が直接交渉するのは避けるべきです。いくら誠意を見せたとしても、すでに警察へ被害届を出している状況では、被害者が許してくれる可能性は低く、逆に、示談を名目としてストーカー行為を再開したとみなされることすらあります。

    被害者と示談交渉する場合は、専門家である弁護士に依頼して交渉することで示談成立の確率を高められます。

7、まとめ

ストーカーの疑いをかけられ警告を受けたものの冤罪だとお考えになっている方向けに、どのような行為がストーカー等にあたるのか、どのようなケースで警察に逮捕されるのか等について解説しました。

ストーカー行為をした認識がなく、お金を返してほしいなどの理由があったとしても、元恋人や元配偶者などへ複数回にわたって連絡を取る程度の行為によって、警察へ被害届を出されれば、警察が警告などの対応が行うことがあります。そのような状況になった場合、直接被害者と連絡を取るのは得策ではありません。早い段階で弁護士へ相談しましょう。

さいたま市近郊でストーカー冤罪について相談したい場合は、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスへお問い合わせください。刑事事件についての対応経験が豊富な弁護士が早期解決のために尽力します。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています