不倫の慰謝料請求をしたい! 可能なケースと相場金額を弁護士が解説

2018年08月24日
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不倫の慰謝料請求をしたい! 可能なケースと相場金額を弁護士が解説

パートナーの不倫は、いざ知ってしまうと悲しみと腹立たしさが生まれるものです。そして謝罪だけでなく、不貞を働いたことに対して慰謝料を請求したいと多くの方が感じるでしょう。

そこで大事になってくるのが、慰謝料請求ができる場合、できない場合、そして相場について知ることです。

ここでは不倫の慰謝料の基礎と相場についてご紹介します。

1、不倫の慰謝料の基礎

配偶者以外の者と、自由な意志で肉体関係を持つことを不貞行為といいます。この不貞行為は、貞操義務違反として、民法770条第1項第1号に規定されている法定離婚事由のひとつです。また、不倫の慰謝料は、精神的苦痛を被ったことを理由として請求することが可能となっています。

まずは、不倫の慰謝料の基礎知識として、誰に対して慰謝料を請求できるのか、不倫相手に慰謝料を請求できる条件は何かについてご説明します。

  1. (1)不倫の慰謝料は誰に対して請求できるのか?

    不倫をされたことによる慰謝料は、配偶者とその不倫相手に対して請求することができます。たとえば夫が浮気していた場合、配偶者である夫とその不倫相手である女性の双方に請求することができますし、夫又は不倫相手の一方だけに請求することも可能です。

  2. (2)不倫相手から慰謝料をもらうための条件

    続いて、不倫をした配偶者ではなく、不倫相手から慰謝料を受け取るための2つの条件についてご紹介します。

    ① 不倫相手に故意又は過失がある
    • 既婚者だと認識していた(故意)
    • 通常、既婚者であると判断できる状況にあった(過失)
    • 相手が既婚者と知っていた上で、きちんと注意すれば婚姻関係は破綻していないと判断できるのにも関わらず肉体関係を持った(過失)
    など


    ポイントとなるのは、既婚者であることを知っていた、もしくは当然知ることができる状況にあったというところにあります。

    ② 不倫によりあなた自身が権利侵害を受けた
    • 不倫により、円満だった家庭環境が悪化し離婚した
    • 不倫相手と配偶者が肉体関係こそないものの、夫婦以上に親密な関係性にあった
    など


    一般的に、不倫の慰謝料請求は、肉体関係を伴う不貞行為を行った配偶者もしくは浮気相手に対して請求できるものとされていますが、肉体関係はないものの、キスやハグを繰り返し行い、何度も食事をするなどの、実質的には付き合っている状態だと判断できれば、婚姻関係を破綻に至らせる行為であるとして慰謝料請求ができる可能性が高いです。

2、不倫相手から慰謝料を受け取れない場合

次に、不倫相手から慰謝料を受け取れない場合について見ていきましょう。

① 不倫相手に故意又は過失がない
  • 相手から独身であると嘘をつかれていた又は相手の素性が分からず、既婚者であると認識することが難しい状態で肉体関係を持った
  • 強姦や脅迫などにより肉体関係を持った


職場の同僚、ご近所さんなど日常生活に密着した出会いであれば、相手が結婚しているかどうかを知ることは難しくありません。しかし出会い系サイト、SNSなどを通じて知り合った場合、共通の知り合いがおらず素性を知ることが難しくなります。また、出会う際に「独身である」と嘘をつかれるケースもあります。

また、強姦もしくは脅迫などにより、自由意思がないままに肉体関係を持った場合、その被害者の立場からすれば、そもそも不貞行為に該当しません。犯罪の被害者には違法性がないからです。しかし、実際に肉体関係があったかどうかは当人同士しか知り得ず、また、不倫相手の意思(自由意思によるものか否か)についても立証や判断が難しい部分ではあります。

下記のようなケースは、権利侵害を受けていないとして、慰謝料請求が認められない可能性があります。

② 不倫によりあなた自身が権利侵害を受けていない
  • 不倫をする前から夫婦関係が破綻しており、修復不可能であった


たとえば、長期間別居状態にある場合などがあげられます。この場合は、夫婦関係が破綻していることは事実であるが、不倫前から既に別の理由で夫婦関係が破綻しており、不倫が引き金となって夫婦関係が破綻した訳ではない、という論理により、慰謝料請求が認められないと考えられています(これを、法律的には「因果関係が認められない」といいます。)。

また、不倫に伴う精神的苦痛に対して、配偶者から既に十分な慰謝料を受け取っている場合や、時効(原則として、不倫の事実を知った時点から3年)が過ぎている場合も慰謝料を受け取ることはできません

3、不倫相手から受け取る慰謝料の相場

最後に、不倫相手から受け取れる慰謝料の相場についてお話しましょう。大前提として知っておいていただきたいのは、慰謝料に明確な基準はないということです。なぜなら、一言に「不倫」といっても精神的苦痛の度合いは人それぞれであり、一概に数値化することはできないからです。
以下に過去の事例に基づいた相場をご紹介しますが、個別の事情によって金額は増減しますのでご注意ください。ご自身のケースにおける詳しい慰謝料額については、弁護士にご相談ください。

  1. (1)夫婦関係が継続される場合

    不倫はされたけれども、別居や離婚はせずに慰謝料だけを請求する場合は、数十万~150万円程度が相場です。
    低額に留まるのは、離婚に至っていないということは婚姻関係がいまだ破綻していないと判断されるからです。
    不倫(不貞行為)が初めてだった、常習性はない、仕事のストレスなどが原因だった、不倫された側にも非がある、などといったケースも考えられます。

  2. (2)不倫が原因で別居する場合

    今後の夫婦関係を見直す(冷却期間)という意味合いなどを込めて、不倫をされたことにより別居する場合は100~200万円程度の慰謝料となります。
    なお、冷却期間の末に結局離婚に至るのか、復縁するのかにより最終的な金額が左右されるでしょう。

  3. (3)不倫が原因で離婚する場合

    不倫が原因で離婚に至った場合にかかる慰謝料は、100~500万円程度です。

    不倫による慰謝料は、不倫の期間、不倫の回数、不倫の態様などにより、ケースバイケースで金額が異なりますので、一様に判断するのは非常に難しいです。下記に増減のポイントをご紹介しますので参考にしてください。

  4. (4)不倫の慰謝料の増減要素

    ① 慰謝料の増額要素
    • 不倫相手が「今後交際しない」という念書を交付していたにもかかわらず再び不倫した
    • 婚姻期間が長い
    • 不倫相手が家庭を壊すことを意図していた
    • 不倫の期間が長期にわたる、不倫が度々繰り返された
    • 不倫相手の方に積極性があり、主導権を握っていた
    • 不倫により妊娠、出産を伴う
    など
    ② 慰謝料の減額要素
    • 不倫期間が短い
    • 肉体関係を持った回数が少ない
    • 不倫をされた側にも、何らかの原因があり、婚姻関係が既に壊れかけていた(性交渉に応じないなど)
    など


    その他にも増減要素は存在し、その程度も一概にはいえません。こういったケースはどうだろうと疑問に感じた場合は、一度弁護士までお問い合わせください。

4、まとめ

今回は、配偶者からの不貞行為である不倫が分かった際の慰謝料の基礎知識と相場についてご紹介しました。まず、慰謝料を受け取れる条件を知ることが必要です。その上で、不倫によって婚姻関係がどう変化したかにより請求できる慰謝料の相場が変わり、かつケースによって金額が増減されてきます。後悔しない慰謝料請求をするためにも、事前に専門家に相談することが解決への一歩となります。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています