事実婚を解消するとき慰謝料は請求可能? 財産分与や養育費についても解説

2019年06月05日
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事実婚を解消するとき慰謝料は請求可能? 財産分与や養育費についても解説

平成30年2月、埼玉県内で内縁の妻の子を内縁の夫が刺殺する事件が発生し、さいたま地裁で裁判員裁判が開かれました。殺害に至った理由は、他界した内縁の妻の遺産を巡るトラブルであったと報道されています。法律婚であれば、夫は妻の遺産を相続できるのですが、事実婚の場合、内縁の夫は内縁の妻の遺産を相続することができません。このほかにも、事実婚と法律婚ではさまざまな点で違いがあります。以下では、事実婚と法律婚の違いや、事実婚を解消する際の慰謝料や財産分与、養育費などについてベリーベスト法律事務所 大宮オフィスの弁護士がわかりやすく解説いたします。

1、事実婚とは? 法律婚との違いとメリットデメリット

  1. (1)事実婚と法律婚の違い

    「事実婚」は「内縁」と呼ばれることもあります。しかし、両方とも同じ意味です。法律婚は婚姻届を出しているのに対して、事実婚は婚姻届を提出していないが夫婦同然の生活を送っている男女の関係をいいます。

    「ふたりともが夫婦関係を成立させることに合意していること」、「夫婦として共同生活を送っていること」の2つの条件をクリアしていれば、法律的に事実婚であると認められます。

    法律婚は、婚姻届を提出することで夫婦の戸籍が作られることになりますが、事実婚では戸籍の異動はありません。また、事実婚の期間中に産まれた子どもの戸籍は母親のものに入りますが、法律婚は夫婦の戸籍に入ります。さらに、子どもと父親が親子として認められるためには、父親が認知の手続きをしなければなりません。

  2. (2)事実婚のメリットとは

    事実婚には、結婚しても姓が変わらない、関係を解消しても戸籍に記録が残らないというメリットがあります。仕事の関係や自身のポリシーから姓を変えたくない方が選択することは少なくありません。

  3. (3)事実婚のデメリットとは

    事実婚のデメリットとしてまず挙げられるのが事実婚の配偶者には相続権がないことです。また、配偶者控除や配偶者特別控除などの税制面での優遇も受けることができません。

    生命保険や社会保険は、法律婚と同様の配偶者と扱ってもらえるケースもありますが、その場合も事実婚状態であることを証明する必要があります。

    子どもがいる場合は、認知をしなければ、法律的には父子と認められないのも大きなデメリットといえるでしょう。

2、事実婚で慰謝料が請求できるケース、できないケース

事実婚を解消する場合は法律婚と同じく、相手方に慰謝料を請求することが可能です。法律婚関係とは異なる点があるとすれば、「事実婚関係にある」という事実を証明するよう求められる可能性がある点でしょう。

ただし、たとえ事実婚関係にあることが明白であっても、法律上の夫婦が慰謝料を請求する際と同様、相手方に「有責」となる事項がなければ請求できません。

具体的には、以下のような事実があれば、慰謝料が請求できる可能性があります。

  • パートナーが浮気した
  • パートナーが暴力を振るった
  • パートナーが生活費を渡してくれない
  • 理由なく別居している
  • 夜の生活を拒否されている
  • モラハラがある


相手がこれらの行為がある場合には、行為の証拠をしっかり集めておくことをおすすめします。証拠があれば、事実婚の相手方にも慰謝料を請求できる可能性があります。

逆に、このような状態ではなく「一般的な性格な不一致」などが原因で離婚する場合には、慰謝料を請求できる可能性は低いと言えます。

3、事実婚での財産分与

事実婚でも、法律婚と同様に財産分与が行われます。事実婚が開始したときから、解消するまでの期間にふたりで築いた財産であれば、どちらの名義でも原則2分の1ずつ分配しなければなりません。

財産分与の対象となるのは、現金、預貯金、有価証券や不動産、車、そのほかの動産、生命保険の解約返戻金や子どもの学資保険、退職金などです。生活のための借金がある場合は、それも財産分与の額を算定する際に考慮されるので注意しましょう。

ただし、事実婚が開始した時期からのもののみが対象になりますので、事実婚開始の時期が非常に重要になります。事実婚が開始する前に、それぞれが購入、築いた資産は対象外です。また、それぞれの親から相続、贈与された資産は、事実婚開始後であっても対象外です。

4、子どもがいる場合の養育費の取り扱いについて

法律婚でも事実婚であっても、親と子どもの関係は同じ「親子」であるため、扶養する義務を負っています。子どもの養育費は、事実婚関係だった相手に払うものではなく、自身の子どもに対して支払うものです。したがって、事実婚関係であっても、親子関係があれば発生します。

ただし、支払う側が父親であれば、あらかじめ子どもを認知しておく必要があるでしょう。

養育費の金額は、いわゆる算定表というものを用いて計算するのが一般的です。裁判所では、それぞれの収入と子どもの年齢、人数に応じて決定されることになるケースがほとんどです。しかし、大学進学などもありますので、実際に支払い続ける時期については、ふたりで柔軟に話し合うといいでしょう。

養育費は、事実婚が解消されてから子どもが成人を迎えるまで、将来にわたって支払い続けるお金です。金額や期間が決まったら公正証書を作成することをおすすめします。

残念ながら、養育費は母子世帯の約2割にしか支払われていないという統計もあります。支払いが滞った場合には強制執行する力を持っている公正証書を作っておくと安心です。万が一父親が養育費を支払わなくなっても、土地や資産、給与を差し押さえることができます。

5、相続はどうなるの?

残念ながら、事実婚の配偶者は相続する権利がありません。冒頭でお話しした事例のように、死亡したパートナーの名義の財産はパートナーの子どもなどの法定相続人が相続することになります。遺言書があれば、事実婚の配偶者でも遺産を受け取ることは可能です。これは、配偶者の死亡が事実婚の解消前であっても解消後であっても変わりません。

ただし、法律婚であっても離婚していれば元夫が死亡した際に、元妻が財産を相続する権利は一切ありません。事実婚解消後に死亡すれば、事実婚特有のデメリットはないと言えます。

ふたりの間の子どもは、父親が認知していれば、父親の遺産を相続することができます。父親が事実婚解消後に再婚して実子をもうけている場合でも、等しく相続する権利を有していますのでご安心ください。

ただし、父親が子どもを認知していない場合は、事実婚状態で生まれた子どもには相続権が発生しません。事実婚を解消する際にまだ認知していない場合は、認知の手続きを行いましょう。

父親が認知を拒む場合は、裁判によって認知させる方法もあります。父親が死亡してから3年以内であれば子どもが裁判所に請求することで認知してもらうことも可能です。

6、事実婚を解消する場合はどうすればいい?

事実婚の解消は、法律婚とは異なり離婚届などを提出する必要はなく本人同士が合意するだけで、成立します。

ただし、前述のとおり事実婚の解消に伴い、慰謝料の請求や財産分与、養育費の問題など法律婚と同様の手続きが必要になります。法律婚夫婦が離婚する際と同じようにもめるケースが少なくありません。

事実婚だからと、相手に責任を持たないことも少なからず存在するので、もめた場合は必ず弁護士に相談しましょう。事実婚、内縁関係だからと言って、慰謝料や財産分与などの正当な権利を諦める必要はありません。

弁護士に交渉を一任しても解決できなかった場合は、「内縁関係調整調停」という調停を行うことになります。名前は異なりますが、法律婚夫婦の「夫婦関係調整調停」(いわゆる離婚調停)と同じ内容です。

それでも解決できなければ、審判や訴訟に移行します。

7、まとめ

事実婚関係でも、関係を解消する際に相手が有責であれば慰謝料を請求することができます。また有責性の有無にかかわらず財産分与は認められますし、子どもには事実婚でも認知さえされていれば、養育費を受け取る権利があるのです。

事実婚関係を解消する場合は、役所への届け出の有無以外は法律婚の離婚とほとんど変わりません。関係解消時の諸条件でもめそうな場合は早めに事実婚関係の解消問題の取り扱い実績が豊富な弁護士に相談しましょう。

ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスでは、事実婚の関係解消についての経験が豊富な弁護士が親身になって最適な解決策をアドバイスします。

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