整形が原因で離婚は可能? 法律で認められている離婚理由を弁護士が解説
- 離婚
- 整形
- 離婚
平成31年3月、タレントが自身のSNSで整形手術を受けたことを告白し、話題になりました。タレントに限らず、一般の方も整形手術によって手軽に外見を変えることが可能です。
しかし、中には、整形に対してネガティブなイメージを抱く方もいらっしゃいます。そのため、自ら「整形手術をした」と告白しない方もいるわけです。中には、過去に整形手術を受けたことを相手に言わないまま結婚したという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
もし、過去に整形したことが配偶者にバレてしまい、整形を理由に離婚を切り出されてしまったら、離婚は認められるのでしょうか。整形は法律で認められている離婚理由にあたるのか、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスの弁護士が解説します。
1、整形を理由とした離婚は可能?
-
(1)双方の合意があれば可能
結婚と同様に、当事者間の合意があれば、離婚は成立します。整形をしていた側も離婚に合意していれば、離婚することができます。これは整形を理由とした離婚に限らず、どのような理由であっても同様です。
-
(2)法定離婚事由に該当すれば可能
では、整形した側が離婚に合意していなければ、離婚は認められないのでしょうか。
どちらか一方が離婚に合意していない場合は、調停や裁判で離婚が争われます。その際に、離婚判断の決め手となるのが法定離婚事由です。整形による離婚原因が法定離婚事由にあたるのであれば、整形した側が合意していなくても、離婚が成立する可能性があるのです。
2、法定離婚事由とは
裁判などで離婚について争う場合、離婚が認められる原因を「法定離婚事由」といいます。法律によって認められている離婚事由とはどのような内容か、解説します。
-
(1)法律で認められた5つの離婚事由
法定離婚事由(民法770条)には、以下の5つが列挙されています。
●不貞行為
配偶者以外との肉体関係が認められた場合を指します。
●悪意の遺棄
配偶者を家から追い出したり、勝手に出て行ったりするだけでなく、生活費を渡さないという経済的な遺棄も含まれます。
●生死が3年以上明らかでない
配偶者が消息を絶ってから3年以上行方が分からない、生きているかどうか確認できない場合です。
●強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
通常の夫婦生活が送れなくなるほどの精神病を患っており、回復する見込みがない場合を指します。病気の後遺症などで精神に障害を負った場合も含まれます。
●その他、婚姻を継続しがたい重大な事由
たとえば、長期間の別居生活やDV、モラハラ、過度の宗教活動、日常生活が送れないほどのギャンブル・浪費などです。これらの事由から夫婦関係が破たんし、信頼関係の回復が見込めないと裁判所が判断した場合、離婚が認められます。 -
(2)整形は法定離婚事由に該当する?
整形が離婚原因となるには、「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するかどうかが判断の分かれ目になります。たしかに整形を隠された側は嫌な気分になるかもしれません。
しかし、結婚前に相手の整形について確認しておらず、整形をしている人とは絶対に結婚しないなどと伝えていたわけではないのであれば、「婚姻を継続しがたい重大な事由」とまではいえない可能性が高いでしょう。
ただし、整形によるメンテナンス費用が多額となり生活費がなくなってしまったなど、他の事情も加わった場合には、整形による浪費が「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するとして、離婚が認められる可能性があります。
このように、ただ単に整形をしていたことを理由に離婚が認められるケースはほとんどありません。ただし、場合によっては「婚姻を継続しがたい重大な事由」にあたるとして離婚が認められる可能性もあります。整形による離婚を拒否したい場合は、留意しておきましょう。 -
(3)法定離婚事由に該当する詐称
整形に限らず、交際相手に対してつい嘘をついてしまい、そのまま結婚してしまったというケースは多くあります。では、整形以外に、配偶者の詐称が法定離婚事由に該当するケースはあるのでしょうか。
●学歴詐称の場合
学歴詐称は、基本的には「婚姻を継続しがたい重大な事由」には該当しないと考えられます。
もっとも、学歴詐称が大幅な年収の詐称にもつながっている場合等には、離婚が認められる可能性もあります。他方で、学歴を詐称していたことが配偶者にバレないまま、長年問題なく婚姻生活を継続してきたのであれば、他の離婚事由がない限り、離婚は認められないと考えて良いでしょう。
●年収詐称の場合
年収を詐称していた場合、離婚が認められる可能性があります。通常、年収は、夫婦の生活に直結しており、相手の年収を前提にライフプランを描くことも多いためです。
もっとも、年収詐称が「婚姻を継続しがたい重大な事由」として認められるか否かは、詐称していた金額の程度や、婚姻生活に与える影響の程度、その他の個別の事情を考慮して決められるものと考えられます。
3、整形を隠していた場合、慰謝料請求の可能性は?
整形による離婚が認められないとしても、整形を隠していたことに対して、配偶者から慰謝料を請求されることがあるかもしれません。その場合、慰謝料を支払う必要はあるのでしょうか。
-
(1)詐欺罪に該当するか
整形を隠して結婚した場合、詐欺だといわれることがあるかもしれません。しかし詐欺罪とは、相手を欺罔(ぎもう)し、錯誤に陥った相手が金銭などを交付することによって財産的損害をかぶった場合に成立する犯罪です(刑法246条)。一般的に結婚詐欺とは、結婚する前提のように嘘をつき、相手からお金を借りて返さないなどという行為をいいます。整形を隠して結婚しただけでは、配偶者にとって財産的損害はないでしょう。ただ隠していただけで「整形はしていない」などと嘘をついていなければ、詐欺罪に該当することはありません。
-
(2)慰謝料は請求されるか
日本では、整形を理由とした慰謝料請求は認められないというのが一般的な考えです。もっとも、先ほどもお伝えしたとおり、整形のメンテナンスのためにお金を浪費して生活費を圧迫したり、借金をしたりする等、婚姻を継続しがたい重大な事由に該当する離婚の場合には、慰謝料請求が認められてしまう可能性もあります。
4、整形による離婚を回避したいなら弁護士へ相談を
整形したことがバレて配偶者から離婚を請求されているけれど、自分は離婚したくないという場合、どうしたらいいのでしょうか。
離婚の請求や慰謝料の請求が認められるか否かは、具体的な事実関係や証拠関係によって異なります。したがって、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。離婚を請求する側は、整形によって離婚を成立させるための証拠を集めている可能性があるでしょう。それに対して弁護士は、どうしたら離婚を回避できるか等、法的なアドバイスをすることができます。
5、まとめ
整形を隠して結婚したからといって、直ちに離婚の理由として認められるわけではありません。しかし、嘘をついていたことで夫婦間の信頼関係が破壊され、夫婦関係が破たんしてしまうこともあります。まずは、整形した動機やコンプレックスなどを配偶者に伝え、配偶者の理解を得ることにつとめましょう。信頼関係を修復できれば、離婚を回避できる可能性もあるのです。
それでも整形を理由に離婚を切り出され困っているという方は、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスへお気軽にご相談ください。弁護士が力を尽くして離婚回避へのアドバイスをいたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています