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査証制度とは? 令和元年と3年に改正された特許法の新制度と利用法

2021年11月22日
  • 商標・特許・知的財産
  • 査証制度
査証制度とは? 令和元年と3年に改正された特許法の新制度と利用法

知財戦略の重要性が一層増す中、特許庁の調査によると、埼玉県内における令和元年中の特許出願件数は3044件で、全都道府県中第8位でした。

企業活動の変化が起きている今、特許法は頻繁に改正されており、令和元年と令和3年にも特許法等が改正されています。

本コラムでは、令和元年5月に公布された改正特許法によって新設された「査証制度」を中心に、令和に入って以降の改正特許法の変更点について、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスの弁護士が解説します。

(出典:「特許行政年次報告書2020年版」(特許庁))

1、令和元年改正特許法で新設された「査証制度」とは?

「査証制度」とは、特許権または専用実施権の侵害に対する訴訟において、一定の要件下で、専門家による立ち入り調査などを認める制度です。以下では、特許権の侵害が疑われる場合について解説します。

令和元年5月17日公布の改正特許法により新たに査証制度が新設され、令和2年10月1日から同制度が施行されています。

  1. (1)中立公平な専門家である「査証人」が立ち入り調査などを行う

    査証制度では、特許権侵害訴訟において立証すべき事実の有無を調べるため、裁判所によって選任される「査証人」が、特許権侵害で訴えられている側の事業場への立ち入り調査などを行います

    査証人については、その訴訟で争いになっている分野の専門的知識を有する弁護士、弁理士、学識経験者などの中立公平な専門家が想定されています。

  2. (2)特許権侵害の立証をサポートする制度

    訴訟では、通常、請求をする側が、相手が権利を侵害した事実を証拠によって証明しなければなりません。

    しかし、特許権侵害訴訟の場合、侵害者の製品の製造方法や仕組みについては、侵害者の営業秘密として秘匿されていることが一般的です。そのため、特許権の侵害を主張する側としては、権利を侵害された事実の立証が困難になってしまいます。

    そこで、後で述べるように、一定の条件を満たす場合には、書類提出命令や検証物提示命令といったこれまでの証拠収集手続きに加え、査証制度を通じて相手方から強制的に証拠を収集し、特許権侵害の立証に役立てることができるようになったのです。

    なお、令和元年5月17日に公布された改正特許法では、上記の「査証制度」のほか、損害賠償額の算定方式が見直されています(令和2年4月1日施行)。

2、令和3年5月に公布された改正特許法の変更点

上記の改正に加え、令和3年5月21日に新たな改正特許法等が公布されました。本項ではその改正により、どのような事項が変更されたのかについて解説します。

  1. (1)手続きのデジタル化

    令和3年5月21日に公布された改正特許法等では、新型コロナウイルス感染症対策を踏まえ、それに適応するための法整備がなされました

    特許法等において改正されたのは、主に以下の2つです。

    ① 口頭審理がウェブ会議システムでも可能に
    特許の無効審判などで行われていた対面による口頭審理を、ウェブ会議システムを用いて行うことが可能となりました。

    ② 感染症拡大などの理由における割増特許料の納付免除
    本来、特許料の納付期限を経過した場合に支払う必要があった割増特許料の納付が、感染症拡大や災害などの理由がある場合、免除されることになりました。

    同様に、特許法だけでなく実用新案法、意匠法、商標法でも上記の変更が加えられました。それ以外にも、以下の改正が加えられています。

    <工業所有権に関する手続等の特例に関する法律>
    特許料などで必要だった印紙予納を廃止し、口座振り込み等への切り替えがなされました。また、窓口でのクレジットカード等の支払いができるようになりました。

    <意匠法、商標法>
    これまで郵送で行われていた国際出願の登録査定の通知などを、郵送に代えて国際機関を経由した電子送付で行うことが可能になりました。
  2. (2)デジタル化などの進展に伴う権利保護の見直し

    ITの進歩に伴い、あらゆるビジネスにおいて、これまでにはない新たな企業行動がとられるようになっています。知的財産権の保護においてもこれらの企業活動に耐え得るものを目指し、次のような改正がなされています

    ① 模倣品流入の規制強化
    個人使用目的と称して模倣品を輸入する事案に対応できるよう、海外事業者が郵送などを用いて個人使用目的として国内に持ち込む行為を商標権、意匠権を侵害する行為として位置づけ、模倣品流入に対する規制を強化しました。

    ② 通常実施権者の承諾要件の見直し
    特許権のライセンス態様の複雑化に対応するため、特許権の訂正などの際に必要とされていたライセンスを受けた者(通常実施権者)の承諾を不要としています。

    ③ 権利回復要件緩和
    手続き期間を過ぎてしまい、特許権などが消滅した場合において、その権利を回復するための要件が緩和されました。

  3. (3)知的財産制度の基盤強化

    さらに、多様化する知的財産に対応するため、制度面の基盤を強化すべく、次の改正が行われています。

    ① 第三者意見募集制度の導入
    特許権侵害訴訟の判決は、当事者はもちろん、その当事者が所属する業界、そして場合によっては他の業界に対しても大きな影響を及ぼすことがあります。そのような場合には、裁判官は、他の業界への影響を踏まえた判決を下すことが望ましいといえますが、当事者にとって他の業界における業務実態を立証する証拠を集めることは容易ではありません。そのような場合には、当事者の申立てに基づき、裁判所が必要と認めた場合に限り、広く一般の第三者から意見募集を行うことができるようになりました。この制度により、当事者が他の業界への影響について立証することで、他の業界への影響を踏まえた判決となることが期待されます。

    ② 料金体系の見直し
    審査の質、スピードの維持向上、デジタル化等による利用者の利便性向上のため、特許料などの料金体系が見直されることになりました。

    ③ 弁理士制度の見直し
    農林水産品に関する知財業務が弁理士の業務に追加され、特許業務法人から弁理士法人への名称変更および弁理士の社員が一人でも法人の設立・存続が認められるようになりました。

3、査証制度の利用場面と手続き手順

すでにスタートしている査証制度は特許権侵害を立証するための証拠収集を補う制度です。したがって、基本的には、特許権侵害の証拠が不足しているような場合に利用することが想定されています。具体的にどのような場面で利用し、どのような手続きがとられるのかについて解説します。

  1. (1)査証制度利用を検討すべき場面

    相手方が営業秘密として保有している情報が特許権侵害の立証の鍵になる場合などには、査証制度の利用が有益と考えられます。特に、特許権侵害が問題となった製品の製造方法やソースコードなど仕組みがわからない場合には、査証制度を利用することによって決定的な証拠が得られる可能性があります。

    ただし、調査をされる側の負担が大きくなる可能性があることから、査証制度の利用には厳格な要件が定められています。査証制度を利用するにあたっては、以下の要件を満たすことが必要です。

    ① 必要性
    当然ながら、査証の結果が証明しようとする侵害の事実があるかどうかの判断を左右するなど、査証の必要性が認められなければなりません。

    ② 侵害の蓋然(がいぜん)性
    相手方の工場や事務所などへの立ち入りをすることになるため、相手方には大きな負担がかかる可能性があります。そのため、査証の前に提出された他の証拠から、相手方が特許権の侵害をしている可能性が相当程度認められることが必要です。

    ③ 補充性
    あくまでも、請求者による証拠収集を補助する目的で設けられた制度が査証制度です。したがって、書類提出命令や検証物提示命令など、別の手段による証拠収集では十分な証拠を収集することができないと見込まれることに加え、査証によってより直接的かつ効率的に証拠を収集できるような場合であること(補充性)が要件とされています。

    ④ 相当性
    査証の方法や範囲などを検討したうえで、査証による証拠収集に過大な時間がかかる、査証を受ける側の負担が大きいなど、査証をすることが不相当ではないことが必要となります。この要件については、査証を受ける側で、査証が不相当であることを、申立てを棄却する事情として主張立証することが想定されています。

    査証を申し立てるにあたっては、書面により、上記の4要件を満たすことを主張する必要があります。これを受け、裁判所は、相手方の意見を聴取したうえで、4要件を満たしているかを判断することになります。

    査証命令が認められるかどうかは、訴訟の当事者双方にとって重要なポイントとなります。査証を申し立てる側にとっては、権利侵害が認められる重要な証拠を得る可能性が高まります。査証を受ける側にとっては、権利侵害が認められてしまう可能性があるだけでなく、事業場への立ち入り調査など業務への影響が生じる可能性も考えられます。いずれの場合であっても、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。

  2. (2)査証の流れ

    査証制度を利用するときの大まかな流れは以下のとおりです(特許法第105条の2以下)。

    ① 査証の申立て・査証命令・査証人の指定
    特許権侵害の訴訟において査証の実施を希望する当事者は、裁判所に対して査証の申立てを行います。申立てを受けた裁判所は、相手方の意見を聞き、前述の要件を満たすかどうかを判断します。査証の申立てを認める場合には、裁判所は査証人に対して査証を命じます。査証人は、上記のように訴訟で争いとなっている分野の専門的知識を有する専門家の中から裁判所が指定します。

    ② 査証の実施
    査証命令が出された場合、査証人は裁判所、両当事者の訴訟代理人、査証人頭の間で日程や方法などを調整したうえで査証が実施されます。

    査証人は、査証を受ける当事者に質問する、書類などの提示を要求できるだけでなく、その当事者の工場や事務所などに立ち入ることもできます。さらに、その工場などで、装置の作動、計測、実験その他査証をするのに必要な措置として裁判所が許可した措置をとることが可能です。

    なお、査証人による円滑な査証のために必要と認められる場合には、当事者の申立てにより、裁判所が執行官に対して必要な援助を命じることができます。この場合、執行官も査証人とともに、立ち入り・質問・書類などの提示要求をすることが認められます。

    査証を受ける当事者は、査証人および執行官に対し、査証に必要な協力をしなければなりません。

    ③ 査証報告書の作成・裁判所への提出等
    査証人による査証が完了したら、調査結果は「査証報告書」にまとめられ、裁判所に提出されます。

    査証報告書が提出されると、まず査証を受けた当事者だけにその写しが送付されます。なお、査証を受けた当事者は、申立人に査証報告書の全部または一部は開示しないよう申し立てることが可能です。

    このような処理をするのは、査証を受けた当事者が保有する、営業秘密などの機密情報を保護するためです。査定報告書には、特許権の侵害の証明とはかかわりのない営業秘密などが含まれてしまうことがあるためです。裁判所は、査証を受けた当事者の申立てに正当な理由があると認めた場合、申立人に対して査証報告書の全部または一部を不開示とすることができます。

    その後、申立人および査証を受けた当事者は、査証報告書の閲覧・謄写およびその正本・謄本・抄本の交付を請求できるようになります(申立人の場合、不開示とされた部分を除く)。

    ④ 査証人の証人拒絶件権
    査証人は、査証に関して知った秘密に関係する事項については、証人尋問を受けた場合でも、証言を拒否することができます。

  3. (3)査証を受ける当事者が査証を拒んだ場合の効果

    査証を受ける当事者が、査証人による査証を正当な理由なく拒んだ場合や提出すべき証拠を意図的に処分したような場合には、裁判所は、申立人が査証により立証しようとする事実について、申立人の主張が真実と認めることが可能です。

    査証を拒否したこと自体に対する制裁はありませんしかし、査証を受ける当事者にとっては、拒否すると訴訟で不利な結果になってしまう可能性が高いことから、事実上、査証を受け入れることが強制されているといえるでしょう。

4、特許権侵害でお悩みの場合は弁護士に相談を

特許権の侵害を主張し、相手方に対して差し止めや損害賠償請求を行う場合、特許権の侵害の根拠となる事実について、証拠によって証明しなければなりません。

しかし、特許権侵害の立証には技術的な証明が必要となるケースが多いことから、立証活動は困難かつ手間がかかることが少なくありません。査証制度の活用を含め、特許権侵害についての知見が豊富な弁護士に相談したうえで進めることが望ましいです。

経験豊富な弁護士であれば、特許権侵害の根拠となる証拠を適切に収集したうえで、必要に応じて査証制度も活用しつつ、特許権侵害訴訟の勝率を高めることが可能です

5、まとめ

改正特許法によって新設された「査証制度」をうまく活用することで、特許権侵害訴訟における立証が容易になることが期待されます。

査証制度を用いるには、その利用要件を満たしていることを適切に主張・立証していかなければなりませんので、個人事業者の方が適切に準備することは困難であるといわざるを得ません。知財事件の知見が豊富な弁護士に依頼することによって、裁判所に適切なタイミングで、適切な対応を求めることができます。

特許権侵害についてお悩みのときは、お早めにベリーベスト法律事務所 大宮オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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