タイムカードがないと残業代は請求できない? 弁護士が疑問に回答!

2019年02月14日
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タイムカードがないと残業代は請求できない? 弁護士が疑問に回答!

大宮オフィスがあるさいたま市は、埼玉県全体や全国と比べ、サービス業に携わる方の割合が多い地域です。忙しく働いている中で、「残業代を請求したいけれど、タイムカードがないから残業時間がわからない」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、タイムカードがないからといって、必ずしも「残業代を請求できない」ということではありません。今回は、大宮で残業代請求を行うことを考えている方に、残業代請求の方法について、どのようなことをすればいいのか、弁護士が説明します。

1、残業代の請求にタイムカードは必須?

結論からいうと、タイムカードがない職場に勤めている方であっても、残業代請求を行うことは可能です。

タイムカードはあくまでも数ある有効な証拠のひとつにすぎません。したがって、別の証拠によって残業時間がどのぐらいあったのかを証明することができれば、未払いとなっている残業代の金額を算定することに問題はないからです。

以下、職場にタイムカードがない場合で、残業代請求の手続きを進める上で注意しておくべき点を解説します。

  1. (1)タイムカードがないことは違法ではない

    会社側がタイムカードを職場に置いていないこと自体は、違法ではありません。

    従業員を雇用する会社には、その従業員の労働時間や健康状態について管理を行う義務があります。しかし、具体的にどのような方法を採用するかについては、法律上会社の自由となっています。
    外回りが中心の営業マンなど、会社に備え付けたタイムカードで勤務時間を管理することが難しい職種も存在するからです。

    タイムカード以外の方法による勤務時間の管理方法としては、

    • 出退勤をエクセルシートなどに入力をさせる
    • 上司にメールなどで送る業務日報がタイムカード代わりになっている


    などといったものが挙げられます。

    「何時から何時までどこで仕事をするかを基本的に自分で決めている」という職業の方は、会社所定の勤務時間管理以外にも、ご自分の勤務時間や勤務場所を記録していくことをおすすめします。

  2. (2)タイムカードがなければ残業代の請求はできない?

    前述したように、タイムカード以外の方法で勤務管理をしている職場はたくさんあります。また、それ以外にも、会社に残って残業をしていたという証拠になるものは多数あります。それを利用すれば、会社に残業代を請求できる可能性があります。

    もし、複数の証拠があるのであれば(たとえば、日報と業務報告のメールがある、など)、できる限り多くのものを集めておくことが、証拠の客観性を高めることに役立ちます。また、これらの証拠を、日々継続的に集めることが重要となります。タイムカードがないと気づいた段階で、日常的に証拠を集めることをおすすめします。

2、タイムカードと代替できる証拠

タイムカードがない場合、具体的には以下のようなものが証拠として活用できます。

●勤務日報や勤怠管理データ
メールなどの形で毎日上司に送っている勤務日報や、エクセル表などの形で入力している勤怠管理データを残業時間計算のための証拠にすることができます。

これらは、会社が支給しているパソコンなどを使って作成するデータですので、証拠として残すときにはスクリーンショットや、データを印刷したものでも問題ありません。このような操作も難しい場合には、スマホの写真機能でパソコンの画面を毎日撮影しておくという方法でも証拠になります。

●家族への帰宅連絡メールやLINE送信記録
家族に対して、「これから帰る」というメールやLINEを毎日送っておけば、それらの送信記録も証拠として使える場合があります。

ただし、これらの方法は客観性にやや欠ける部分がありますので、できれば毎日、定型的な形で証拠が残っていることが望ましいです。

●取引先とやりとりをした通話記録やメール記録
夜遅い時間に取引先からかかってきた電話に対応したというような場合には、携帯電話に残っている着信時間や通話時間のデータを証拠として残しておくことが有効な証拠となります。

会社支給の携帯電話で対応した場合は、その画面をあなたが個人的に使っているスマホの写真機能で撮影したり、データを写したりしておくと安全です。

●個人的なメモや日記
あなた自身が個人的につけているメモや日記なども、残業代請求のための証拠にできる場合があります。

ただし、客観性を確保できるかどうかがポイントになります。プライベートな日記であっても、できる限り継続的に、同じ様式を維持する形でつけておくことが、証拠としての効力を高めることにつながります。

TwitterやフェイスブックなどのSNS上に掲載した発言も、場合によっては証拠になります。日常的にこれらのサービスを使っている方は、残業の記録用に活用することを検討してみると良いでしょう。

3、自分で証拠が用意できない場合

証拠集めができないまま、休職、もしくは退職してしまったケースもあるかもしれません。その場合も、残業代請求が行えることがあります。

  1. (1)あきらめずに交渉する

    タイムカードがない、シフト表も処分してしまって手元にない……といった状況の方も、証拠を自分ではどうしても用意できないという場合も、決してあきらめる必要はありません。残業代請求をはじめとする、労働問題を専門としている弁護士に相談してみてください。

    残業代請求は、会社側がどうしても支払いに応じない場合には、弁護士を介して裁判前の交渉を行ったり、証拠を集めて裁判で争う必要があります。実際には、交渉によって支払いに応じてくれるケースも少なくありません。

    特に、弁護士を介して内容証明郵便などを活用しながら交渉を行っていけば、会社側に大きなプレッシャーを与えることが可能です。裁判へ至ることなく、支払いに応じてくれる可能性がより高くなります。

  2. (2)証拠保全の手続きを行ってもらう

    裁判となった場合には、裁判所に「証拠保全」の手続きを行ってもらう方法もあります。証拠保全の手続きとは、「あらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情がある」ときに、早期の証拠調べを実施して、その結果を保全していく手続きになります(民事訴訟法234条)。

    会社側があわてて証拠を破棄するような行動を取った場合には、残業代請求を求めるあなたの側に有利な形で裁判が進む可能性が高くなるため、会社側としても裁判所の命令には素直に従うケースがほとんどです。証拠保全の手続きを行ってもらうことは、非常に有効な手段といえるでしょう。

4、まとめ

今回は、タイムカードがない職場で働いている場合、残業代請求を行うことは可能かどうかという疑問への回答と、必要な証拠集めについて説明しました。

タイムカードがない場合であっても、それ以外の証拠をそろえることで残業代請求を行うことは可能です。証拠集めはできるだけ早い時期から、継続的にたくさん集めておくことが大切です。もし、給与明細などで残業代が支払われていない、交渉しても取り合ってもらえない、という場合は、その事実に気が付いたときから日常的に残業をした記録を残しておくと良いでしょう。

また、ご自身で証拠を集められなくても、弁護士を介すれば証拠を集めることができる場合もあります。あきらめずにベリーベスト法律事務所 大宮オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています