残業代請求は退職後でも可能? 急ぐべき理由を弁護士が解説

2019年03月22日
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残業代請求は退職後でも可能? 急ぐべき理由を弁護士が解説

埼玉県さいたま市の大宮エリアにはホテルやアパレル、スーパーなどのサービス業に従事している方が多くいます。サービス業ではチームプレイがとても大切ですから、働いているうちは職場の雰囲気を悪くしたくないので、なかなか残業代請求に踏み切れないという方も多いかもしれません。

しかし、残業代請求を行うことは、労働者に認められている権利です。就業中はできなかったものの、退職後に残業代請求を行うことを検討している方向けに、手続きを行う際の注意点について説明します。

1、退職後に残業代の請求は可能?

結論からいうと、退職後に元勤務先の会社に残業代の請求をすることは可能です。

法律上、発生済みの未払い賃金を請求する権利は、その勤務先に在職しているかどうかに左右されないためです。それでは、退職してから残業代の請求を行う場合の注意点について詳しく知っておきましょう。

2、退職後の残業代請求の注意点

勤務期間中は、職場に居づらくなるのを避けるため、どうしても「残業代を払ってください」とはいい出しにくいものです。実際、退職後になってから残業代請求をする方のほうが圧倒的に多いというのが実情です。 この点、退職後に残業代を請求する場合には、なるべく早いタイミングで請求をすることが大切です。

  1. (1)請求できる期間

    残業代の請求ができるのは、企業側にその残業代の支払い義務が確定した時点の翌日から2年間です。簡単にいうと、給料日の翌日から2年間ということです。

  2. (2)2年の時効期間が経過してしまった場合

    2年間残業代の請求をせずに放置してしまったという場合にも、残業代の請求ができる可能性は残されています。

    たとえば、時効の成立後に勤務先の会社が「払うのでもう少しだけ待ってくれ」などと回答してきた場合、会社は、後から「やっぱり時効だから払わない」と主張することができません。

    未払いの残業代を不法行為に基づく損害賠償という名目で請求する方法もありえますが、不法行為による残業代請求が認められるのはレアケースといえます。
    「残業代の時効は2年間」と理解しておく方が無難です。

3、退職後の残業代請求の進め方

退職後に残業代を請求する場合、以下の点に注意して手続きをする必要があります。

  1. (1)退職前に証拠集めをしておく

    「前述したように、退職後に残業代請求を行う方が多い傾向があります。しかし、残業代請求の準備だけは、勤務中に行うほうが望ましいといえるでしょう。

    なぜなら、退職後になると、保管していた証拠の一部が紛失してしまったり、勤務日報やタイムカードなど、職場の内部者でないとアクセスできない情報が得られなくなってしまうためです。

    これらの証拠がそろえられるかどうかによって、実際にあなたが受け取ることができる残業代の金額に差が出てしまう可能性があります。少しでも早く対策を始めましょう。

  2. (2)労働審判・訴訟手続を活用する

    交渉を重ねても、企業側があなたの要求を認めない場合、労働審判や訴訟手続きを利用することとなります。
     労働審判は、裁判所に赴く回数が最大で3回となっており、訴訟よりも迅速な解決を目指すことができます。

  3. (3)残業代請求には遅延損害金や付加金を含める

    未払い残業代には、未払いの期間に応じた遅延損害金が生じます。

    具体的には、まだ在職中であった期間については給料日の翌日から計算して年6%、退職した後の期間については、退職日の翌日から年14.6%の割合で遅延損害金の請求が可能になります。

    また、訴訟手続きによって残業代請求を行う場合、労働基準法への違反を理由として、裁判所が企業側に対して付加金というペナルティーを課すことがあります。裁判の訴状にはこれらの遅延損害金や付加金の発生根拠などを記しておくのが適切です。

  4. (4)労働問題を得意にしている専門家に依頼する

    以上の手続きは、自分自身で行うこともできます。しかし、どのような証拠を集めればよいか、法律的にどのように請求を行えばよいかなど、法律に関する高度な実務知識が必要になります。また、交渉や書類の作成に、貴重な時間を割くことになる可能性も高いでしょう。手続きをスムーズに行うためにも、残業代請求事件に対応した経験が豊富な弁護士に依頼することをおすすめします。

4、請求すべきは退職後? 退職前?

双方のメリット・デメリットは、次のとおりです。
比較・検討して、請求の準備を進めておきましょう。

  1. (1)退職前に請求するメリット・デメリット

    退職前に残業代を請求することのメリットは、何よりも証拠集めが簡単であることです。
    タイムカードや勤務日報がある場合、コピーや写真データをとっておくようにしましょう。

    一方で、退職前に残業代請求を行うデメリットとして、職場にいづらくなってしまうことがあります。
    最終的に退職することを決めている場合にも、退職の意志を伝えてから実際に退職するまでは一定の期間かかることが普通です。その間、現在の職場で仕事をする必要があることを覚悟して手続きを進めていく必要があります。

  2. (2)退職後に請求するメリット・デメリット

    退職後に請求するメリットは、職場の方や勤務先の管理者から受けるストレスが最小限で済むことです。

    一方で、デメリットはやはり証拠集めが困難になるケースが少なくないことです。
    すでに保管している証拠がある場合には大切に保管するとともに、新たに取得が必要な証拠が出てきたときには裁判を通じて、証拠保全の手続きなどを行う必要があります。

5、まとめ

残業代請求には2年間という時効があります。特に退職後になってから残業代請求を行う場合には、時効の中断などの方法を適切に利用していく必要があります。

残業代請求は労働問題に対応した経験が豊富な弁護士に相談することで、スムーズに進めることが可能になります。退職後の残業代請求をご検討の方は、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスへお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています