内容証明郵便で残業代を請求する際の注意点や書き方を、弁護士が徹底解説!

2019年03月25日
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内容証明郵便で残業代を請求する際の注意点や書き方を、弁護士が徹底解説!

大宮オフィスがある埼玉県さいたま市の会社に勤めている方で、勤務先に対し、残業代を請求することを検討している方もいらっしゃるでしょう。残業代請求は、最終的には裁判手続きによって支払いを求めることが可能ですが、その前段階として、「交渉」により残業代請求をすることも重要になります。

そこで活用したいのが、残業代の請求をしたことやその請求内容を証拠として残すことができる「内容証明」です。内容証明は、あなたが会社に対してどのような主張をしたのかを後から立証する重要な手段になります。
現在、残業代請求を考えていない方でも、内容証明の作成方法や利用方法について知っておいて損はないので、一緒に学んでいきましょう。

1、残業代請求において非常に役立つ「内容証明」とは

会社に対し残業代請求をする際には、いろいろな場面で内容証明が重要な役割を果たします。
ここでは内容証明を利用することにどのような意味があるのかについて見ておきましょう。

  1. (1)内容証明とは

    内容証明とは、書面の内容や送り先を郵便局が証明してくれるものです。

    そのため、後の裁判手続で書面送付の有無や送付した書面の内容等が問題となったときに、証拠として利用することができます。

  2. (2)内容証明の効力

    内容証明の法律上または事実上の効力としては、以下のようなものがあります。

    ●証拠保全
    内容証明を使うと、相手方に通知した内容や送付先について郵便局の証明を受けることができます。そのため、通知を受け取った側は、後日「そのような通知は受け取っていない」などと反論することができなくなります。

    ●時効完成の猶予
    未払いの残業代は、原則として、毎月の給料日の翌日から2年間にわたってなんらの主張もせずに放置していると消滅時効にかかり、請求ができなくなります。これを避けるためには、2年以内に残業代の請求手続きを完了させることが必要です。具体的には、労働審判や裁判等の裁判手続をする必要がありますが(これを「時効の中断」といいます。)、これが間に合わない場合には、内容証明郵便を用いて残業代請求する旨を明示することで、消滅時効の完成を「内容証明の送付時から6ヶ月後」まで延長することができるのです。

    なお、「時効の中断」とは、消滅時効の計算をリセットするために行うものです。具体的には、消滅時効が完成する前に労働審判や訴訟などの裁判手続をした時点で2年間の消滅時効はリセットされます。

    ●相手に心理的なプレッシャーを与える
    内容証明は、証拠を残すという意味の他にも、トラブルの相手方に対して自分の本気度を伝えるという効果もあります。
    残業代請求は、どうしても会社が支払いに応じない場合、最終的には裁判手続をとることも検討しなければなりません。もちろん、話し合いによって円満解決できればそれに越したことはないのですが、口頭や通常の書面による請求だと、「本気ではないだろう」と侮られる可能性があります。
    このように、「本気ではないだろう」と考えている相手方に対して、内容証明郵便を活用することで、あなたの本気度が相手方に伝わり、交渉がうまく運ぶ可能性があります。

2、内容証明の記載方法

次に、基本的な内容証明の書き方について、具体的なケースを想定しながら説明します。

内容証明はルールに従って作成しなければ、郵便局に受け付けてもらえませんので、注意してください。

  1. (1)内容証明作成におけるルール

    ●文字数
    たて書きで送る場合は、1つの行に20文字以内、1枚につき26行までに収めてください。

    横書きの場合も基本的に同じですが、1行26字で1枚20行以内といった形でも問題ありません。

    ●文書は1通のみ
    内容証明に入れることができるのは1つの書類だけです。図面や返信用封筒などを同封することはできません。

    ●英語は不可
    内容証明として送れる文書は、基本的に日本語です。英語は固有名詞についてのみ使うことが可能です。

  2. (2)内容証明に記載する内容

    残業代請求をするときの内容証明には、一般的には次のような項目を含めるようにしましょう。

    ●明確な主張
    残業代の請求であること、そして、どの期間の残業代が未払いになっているのかを「平成30年6月1日~平成30年6月27日の間」といったように、明確に記載しましょう。金額や計算根拠も記載するのが望ましいですが、それが難しい場合には取り急ぎ期間の特定だけでも足ります。必ず記載しておきましょう。

    ●未払い残業代の金額と計算の根拠
    金額を明示して作成する場合には、その金額の計算根拠を記すようにしましょう。
    事前に割増率の計算方法や、法定労働時間と所定労働時間の意味の違いなどについて正しく理解しておくことが肝要です。

    ●振込先の銀行口座情報
    相手方があなたの主張を認めて未払い残業代の支払いに応じる場合に、残業代を振込先としてあなたの銀行口座の情報が必要になります。

    ●要求に応じない場合の措置について
    内容証明郵便はあくまでもあなたの主張を述べただけのものに過ぎません。相手方が請求に応じないと回答したり、何らの行動もとらなかったりする場合には、法的手続きを開始する旨を記載しておくことが重要です。

  3. (3)内容証明を送付する際の注意点

    内容証明郵便を実際に送るときには、次のような点にも気をつけておきましょう。

    ●3部用意する
    同じ内容の文書を、相手に送る用、郵便局に保存する用、自分で保管する用の3通作成する必要があります。

    ●受け付けてもらえない郵便局がある
    内容証明郵便は、すべての郵便局で対応可能なわけではありません。具体的には「本局」といわれる大きな建物の郵便局でないと受け付けてもらえない可能性が高いものです。郵便局へ行く前に、電話などで内容証明郵便の対応が可能か確認しておくとよいでしょう。

    ●配達証明をつける 内容証明は、配達証明をつけておかないと相手方に配達がされたかどうかの証明にはなりません。ですから、内容証明を送る際には必ず同時に配達証明を依頼するようにしましょう。なお、内容証明を出してから1年以内であれば、後から配達証明を出してもらうことは可能です。

3、まとめ

今回は、内容証明郵便の効果や、内容証明郵便で残業代を請求する際の注意点および書き方についてご説明しました。

今後、ご自身で会社に対し残業代を請求してみようという方は、本文で説明した内容証明の作成方法や注意点を参考にしてみてください。
また、内容証明の作成に関してはもちろん、会社相手に残業代を請求すること自体に不安がある方は、労働事件に詳しい弁護士が代理人としてお手伝いすることも可能ですので、どうぞお気軽にベリーベスト法律事務所 大宮オフィスまで相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています