残業代請求は、労働基準監督署に相談すれば解決する? サービス業編

2019年03月29日
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残業代請求は、労働基準監督署に相談すれば解決する? サービス業編

大宮駅の隣、さいたま新都心駅のすぐ近くに労働基準監督署があります。美容院やアパレル系をはじめとしたサービス業は、残業すらサービスとなっているケースが少なくないようです。そこで残業代の請求をしようと考えたとき、多くの方が労働基準監督署にまずは駆け込むことが頭に浮かぶのではないでしょうか。

しかし、相談内容によっては、労働基準監督署が適している場合と、そうでない場合があります。そこで、残業代請求について労働基準監督署がどのような手助けをしてくれるのか、弁護士に頼んだ場合との違いを確認しながら説明します。

1、労働基準監督署とは

労働基準監督署は、労働条件や、労災の加入などについて事業者を監督する立場の役所です。残業代などの労働問題についても相談できる公的な機関ではありますが、会社側に対する働きかけを行ってくれる場合と、そうでない場合があります。

  1. (1)残業代請求に対応してくれる?

    残業代請求について、窓口で初めて相談した際は「まずは勤務先の会社とご自分で交渉してみてください」という対応をされるのが一般的です。これは、労働基準監督署が労働問題について実際に動くためには、まずは労働基準法等の法規に違反している疑いのある事実が必要になるためです。

    残業代が未払いの場合であれば、実際に「会社に対して未払いとなっている残業代を請求し、会社側が支払わない」という状況が確定して、初めて労働基準監督署は動いてくれるということになります。

    したがって、労働基準監督署への相談は、まずは会社に対して残業代の請求を行い、それに対して会社側が「支払わない」という意思表示をしてきた後の段階で行うのが適切です。

  2. (2)相談すべき労働基準監督署

    労働問題について労働基準監督署に相談する際には、あなたが勤務している会社の事業所を管轄している労働基準監督署の窓口を利用する必要があります。

    あなたの勤務先の事業先がさいたま市内にあればさいたま労働基準監督署が管轄になりますが、その他の市区町村の場合は異なる労働基準監督署が管轄となります。厚生労働省のHPで管轄と所在を確認してから、相談に行きましょう。

2、残業代の請求で、頼るべきは労働基準監督署と弁護士どちら?

残業代請求について相談する場合、労働基準監督署の他に、労働問題を専門としている弁護士にも相談することが考えられます。

どちらに対して相談するのが適切か、弁護士に相談した場合の手順をみていきましょう。

  1. (1)残業代請求の際の弁護士の対応

    残業代請求を弁護士に相談する場合、まずはインターネットや電話で相談内容を伝え、あなたが置かれている状況について簡単に説明します。そして、相談をする日程を調整します。

    相談は何度でも無料の場合と、有料の場合があります。しっかりと、相談にのってもらえそうな弁護士を選びましょう。正式に弁護士に依頼して残業代請求を行うことを決めたら、弁護士と委任契約書を締結します。この時点で通常は着手金を支払います。

    契約が完了すると、具体的な残業代請求の手続きが進んでいきます。弁護士はあなたの手元にある証拠や資料を整理し、勤務先との交渉に当たります。その結果は随時報告されますので、その都度、あなたの希望を伝えながら手続きを進めてもらいましょう。

    なお、すでに勤務先を退職している場合は、弁護士にいらしいていれば勤務先との交渉はすべて弁護士を通して行うことになります。元勤務先の担当者と電話をしたり、面談をしたりする必要は基本的にありません。

    残業代請求を弁護士などの専門家に依頼して手続きを進めていくとしても、まずは方針を決める必要があります。具体的には、下記のような準備が求められるでしょう。

    • どの期間中の残業代について会社側に支払ってほしいのかを明確にする
    • 残業代を請求するための資料を用意する


    あなたが現在進行形で勤務先に勤めている場合には、退職をする前に手元に保管しておくべき証拠資料(タイムカードのコピーや日報のプリントアウト)について法律家の専門知識に基づくアドバイスを受けることが有効です。

    すでに退職をしている方の場合には、消滅時効が成立してしまわないように注意し、必要な催告の手続きなどを確実に行っていくことが求められます。

    また、弁護士と一緒に残業代請求の手続きを進めていく中で、企業側に慢性的な労働法規違反の状況がみられる場合があるかもしれません。その際は、労働基準監督署への申告も、相手方にプレッシャーをかけるためのひとつの手段として用いることが考えられます。

  2. (2)労働基準監督署と弁護士、どちらに相談すべき?

    前述したように、労働基準監督署は、紛争が起きた後になってから相談すべき役所ともいえます。

    したがって、以下のケースでは労働基準監督署ではなく、弁護士に相談することからはじめるほうが適切です。

    • これから残業代の請求のために行動を開始するという段階
    • 直接会社の担当者と交渉することがつらい
    • すでに退職したのち引っ越ししていて、かつての事業所から離れている
    • 勤務先は近くだが、事業先を管轄している労働基準監督署の所在地が離れている


    残業代請求は自分で行うことも考えられます。しかし、証拠調べや裁判資料の準備などでは法律実務の知識が必要になりますし、弁護士を通さずに個人で請求しても会社側が応じないことが多いため、多くの場合、労働問題に詳しい弁護士を利用する傾向があります。

    労働基準監督署は、紛争になる前の段階で支援を受けることはなかなか難しいというのが実情です。また、労働基準監督署は、労働法規違反の事実についての調査や是正勧告等を行いますが、弁護士と異なり、あなたの代理人として残業代の請求を行ってくれるわけではありません。残念ながら、調査や是正勧告がなされても残業代の支払いに応じない場合は存在しますので、そのような場合は弁護士に依頼して残業代請求を行わざるを得ません。 労働基準監督署の調査や是正勧告のみに頼るのではなく、弁護士を通しての残業代請求と併用した方が効果的となる場合がありますので、この点にご留意いただく必要があります。

3、サービス業での残業代請求は可能?

美容やアパレル、スーパーといったサービス業は、残業代の計算方法について、タイムカードがある一般的な事務職とはかなり状況が異なる場合があります。店長などの管理職である場合には時間外勤務という考え方が取られていなかったというケースもあるでしょう。

サービス業の残業代請求では、実際にどのような内容の職務を担当していたか、などの側面から、未払いとなっている賃金の金額を計算していくことが必要になります。具体的には、毎月提出していたシフト表や、レジの集計データなどが証拠になります。可能であれば、退職前の段階から残業代請求の手続きを進めていくのが良いでしょう。

すでに勤務先を退職している方の場合にも、労働問題にくわしい弁護士に相談すれば、残業代請求に成功するケースは少なくありません。自分だけで残業代請求を進めていくのが難しいと感じる場合には、専門家のアドバイスを受けることを検討してみてください。

4、まとめ

今回は残業代請求をする場合、どのような準備をし、どこに相談すべきか、労働基準監督署や弁護士に相談する際の注意点を含めて説明しました。

労働基準監督署は、残業代を請求したにもかかわらず支払われていない状態にあることを確認してから何らかの対策を講じるのが原則となっています。

現在、未払いの残業代について不満があるものの、まだ会社に対しては何のアクションも取っていないという段階にある方は、労働基準監督署に相談することが解決につながる可能性は残念ながら低いでしょう。

残業代請求をする場合は、証拠集めや、勤務先との交渉に慣れている、労働問題にくわしい弁護士に相談するのが適切といえます。残業代請求の対応経験が豊富なベリーベスト法律事務所・大宮オフィスであれば、あなたにとってよりベストな結果を得られるよう、アドバイスを行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています