在宅勤務だから残業代は出ないはウソ! 未払い残業代を請求する方法

2020年08月05日
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在宅勤務だから残業代は出ないはウソ! 未払い残業代を請求する方法

政府が推し進める「働き方改革」の流れを受け、さいたま市では、ホームページ上で「働き方改革の推進について」と題したコンテンツを公開しており、そのなかで在宅ワークやテレワークの活用を促進しています。現在、新型コロナウイルスの流行によって会社員の「働き方」は大きく変化しており、最近になって在宅勤務やテレワークといった勤務形態を初めて経験したという方も多いでしょう。

会社の方針で在宅勤務を命じられた場合、気になるのが「残業代」です。自宅で勤務した場合でも、勤務時間を超えて仕事をすれば残業代は支給されるのでしょうか?

本コラムでは「自宅勤務と残業代」の関係を中心に、残業代が支給されるケース・支給されないケース、未払いとなった残業代の請求方法などについて、大宮オフィスの弁護士が解説します。

1、在宅勤務でも残業代は発生する

これまでは会社に出勤してオフィス勤務するのが当然だった業種・業態でも、働き方改革の推進や新型コロナウイルス対策などの影響で、在宅勤務をする機会が増えました。
不慣れな在宅勤務に苦戦する労働者も多いなかで、非常に気になるのが「残業代」の扱いです。

  1. (1)在宅勤務とはどのような形態か?

    「在宅勤務」とは、文字通り「自宅で働く労働形態」を指す言葉です。
    会社に出勤することなく自宅で勤務できるので、育児や介護などの負担が生じたために会社への出勤が難しい人でも、退職せずに働き続けることができる、自宅と会社が著しく遠い人でも距離を気にせず働くことができるというメリットがあります。

    同じように使われる用語として「テレワーク」が存在しますが、テレワークとはインターネットなどの情報通信技術を用いて会社の外で勤務する形態を指します。テレワークを細分化すると、自宅で勤務する在宅勤務のほかにも次のような形態があります。

    ●モバイルワーク
    移動中に携帯電話やメールを利用して商談を進めたり、社外からモバイル端末を使って社内のデータにアクセスするなど、特定の施設・場所に依存しない働き方です。

    ●サテライトオフィス勤務
    社外のオフィススペースなどで勤務する働き方です。会社が設置する専用サテライトのほか、複数の会社による共同サテライトやレンタルオフィスが利用されることもあります。

  2. (2)在宅勤務でも残業代が発生するケース

    在宅勤務であっても残業代は発生します。
    当然のことですが、労働基準法にも、在宅勤務だという理由だけで「残業代が発生しない」とするような規定はありません。

    一定の場合を除き、どのような業種・業態であっても、特段の規定がない場合には在宅勤務であろうと法律で定められた「1日8時間・1週間40時間」を超えた勤務に対して残業代が発生します。

    これまでは会社に出勤してオフィスで勤務していた社員が、特段の規定変更を経ることなく「明日から在宅勤務をすること」と命令を受けて在宅勤務に切り替わった場合には、時間外の労働に対しては、残業代が発生することが考えられます。

    ただし、在宅勤務の場合、会社としても「どのくらい仕事をしているのか把握できない」と考え、支払いを拒まれる可能性があります。そのため、在宅勤務で残業代を請求するにあたっては、次の2点が満たされている必要があるでしょう。

    • PC作業をリモートで確認できるなど、常時会社が労働者の勤務状況を確認できる
    • 作業が使用者の具体的指示に基づいている


    会社が「勤務時間が把握できないので残業代は支払えない」というスタンスをとってきた場合であっても、実際に残業をしていることおよびそれが会社に指示に基づくものであることを証明できれば、残業代を請求することが可能となります。

2、残業代が発生しないケース

ただし、「裁量労働制」または「事業場外労働のみなし労働時間制」を採用している場合は、残業をしても残業代が発生しない可能性があります。

  1. (1)裁量労働制が採用されている場合

    「裁量労働制」とは、実際の労働時間に関係なく、あらかじめ決められた一定時間の労働があったものとみなす勤務形態です。労働者に出退勤の時間制限がなくなり、仮に実労働時間が短くても一定時間の労働があったものとみなされます。

    裁量労働制が採用できるのは、研究開発やデザイナー、コピーライターなどのような専門職や会社の中核を担う部門で自律的に働くホワイトカラー労働者に限られます。そのほかの一般職に就いている労働者に対して、会社が独断で「明日からは裁量労働制で」と勝手に採用できるものではありません。

    また、実労働時間とみなし労働時間の間に大幅な差がある場合や長時間勤務を強いられる場合は、裁量のない裁量労働制として無効となり、残業代が発生する可能性があります。

  2. (2)事業場外労働のみなし労働時間制が採用されている場合

    「事業場外労働のみなし労働時間制」とは、営業職のように社外での勤務が中心で会社が実労働時間を正確に把握できない場合に一定時間の労働があったものとみなす制度です。

    事業場外労働のみなし労働時間制が採用されている場合、所定労働時間労働したものとみなされ、一定の場合を除き、実際にはそれより長く働いたとしても残業代は支給されません。ただし、モバイルデバイスの普及率が高く、ほとんどの場所でネットワークが使える現代においては、「労働時間を正確に把握できない」という事態は起こりにくいともいえます。また、そもそも会社が定めたみなし労働時間が法定労働時間の8時間を超えている場合はもちろん、その業務をするためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要になる場合には、その通常必要とされる時間について労働したものとして残業代が発生します。

3、未払い残業代を請求する場合に証拠となるもの

前述のとおり、裁量労働制や事業場外労働のみなし労働時間制の適用がない場合、在宅勤務で所定の労働時間を超えて業務にあたったとすると残業代が発生する可能性があります。なかには会社から「在宅勤務には残業代が発生しない」と言われたというケースもあるようですが、会社側が事業場外労働のみなし労働時間制が適用される等と誤解していることも考えられます。

その場合、労働条件や実際の労働時間を証明する証拠があれば、残業代が請求できる可能性があります。

  1. (1)会社の規則を証明するもの

    まず、所定の労働時間や時間外労働に対する考え方、勤務形態など、会社の規則を確認しないと残業代が発生しているのかが判断できません。

    まずは、在宅勤務に関する条項、在宅勤務の場合の所定の労働時間に関する条項、裁量労働制などにおけるみなし労働時間が何時間なのか等の条項をチェックする必要があります。これらの情報は、基本的には「就業規則」に記載されているものと考えられます。

    したがって、まずは就業規則を確認し、可能であれば証拠として保管しましょう。

    なお、会社で勤務している方のなかには「就業規則をみたことがない」「就業規則の内容について説明を受けたことがない」という方も少なからず存在しています。しかし、就業規則は、労働基準法第89条によって「常時10人以上の労働者を使用する使用者」に対して作成が義務付けられているものです。

    さらに、同第106条には「常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、または備え付けること、書面を交付すること」などの方法で労働者に周知させることとしています。これに違反した場合、会社側は30万円以下の罰金に処するものとされており、その場合には労働基準監督署へ相談されることをおすすめします。

  2. (2)労働時間を明らかにするもの

    残業代を請求するには「残業代がいくら発生したのか」を、明らかにする必要があります。これは労働者側が立証する責任を負うものなので、在宅勤務でもご自身の実労働時間を自分で記録しておくように心がけましょう。

    労働時間を明らかにする証拠としては、始業・終業を報告するメールや電話の通話記録、パソコンのログイン・ログアウト履歴、業務に関するファイルの保存履歴、日記などの記録が挙げられます。

    通常のオフィス勤務のようにタイムカードなど具体的な記録がないため、ご自身が「この時間まで残業をしていた」と証明できるあらゆる証拠を取りそろえるべきでしょう。あわせて、1時間あたりの残業代を算出するために、過去の給与明細も保管しておくことが望ましいです。

4、未払い残業代の請求を弁護士に依頼すべき理由

在宅勤務を命じられながら、会社から「在宅勤務には残業代が出ない」といわれてしまった場合は、弁護士に相談しましょう。

  1. (1)会社との交渉をスムーズに進められる

    個々の労働者が未払い残業代を請求しても、素直に「支払います」と会社側が応じないことは少なくありません。その場合、いくら法律の規定を盾に個人が交渉しようとしても、交渉が進まないことがあります。

    しかし、労働関係の法令に明るい弁護士が代理人として交渉すれば、最初から裁判までをも視野に入れた対応をすることができます。そうなれば、会社側も真摯に対応せざるを得なくなるので、交渉をスムーズに進めることが可能となります。

  2. (2)未払い残業代を正確に算出できる

    会社に支払いを求める以上、未払い残業代の額にあると後々もめる原因となるため、法令に準じて正確な残業代を算出する必要があります。

    弁護士に相談すれば、就業規則や実際の労働時間を証明する証拠をもとに、正確な未払い残業代の算出が可能です。未払い残業代の算出はかなり煩雑な作業ですので、それを弁護士に任せることでご自分の時間を節約することが可能です。

  3. (3)会社への対応を一任できる

    会社に未払い残業代の支払いを求めても、会社がかたくなにこれを拒む事態も想定されます。交渉によって支払いが得られないのであれば、裁判所の手続きによって労働審判・支払督促・訴訟といった法的対処をとることになるでしょう。

    裁判手続きでは、未払い残業代が発生していることを証明する客観的な証拠を収集して裁判官に示す必要があり、個人での対応は容易ではありません。裁判の期日は平日に行われますので、忙しく働いている方にとっては出廷するだけでも大きな負担となってしまいます。

    弁護士に会社との対応を一任すれば、有効な証拠の収集や訴訟の際の裁判所への出廷を任せることもできます。

5、まとめ

働き方改革の推進や新型コロナウイルス流行の影響で在宅勤務となった方で、オフィス勤務のときと同様に残業を強いられている方は、残業代が支払われる可能性があります。会社から「在宅勤務には残業代が出ない」といわれた場合でも、特段の規定がない場合には残業代を請求できるケースもありますので、あきらめずに弁護士に相談しましょう。

在宅勤務における未払い残業代の請求を検討しているのであれば、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスにお任せください。労働トラブルに対応した実績を豊富にもつ弁護士がチーム一丸となり、未払い残業代の算出から会社との交渉、裁判対応など、あなたを徹底的にサポートします。

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