バイク事故で後遺障害に! 受け取れる慰謝料と等級認定の流れ

2021年12月23日
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バイク事故で後遺障害に! 受け取れる慰謝料と等級認定の流れ

さいたま市大宮区を管轄する埼玉県警が発表している「二輪車事故発生状況」によると、令和2年中に起きた二輪車交通事故による負傷者数は2057人でした。都道府県順位で4位と、埼玉県は非常にバイクなど二輪車による事故が多いことがわかっています。

搬送時に重傷状態となるような事故であれば、治療を続けても症状が残ってしまう後遺障害が生じてしまうケースは少なくないでしょう。本コラムでは、バイク事故で後遺症を負ってしまった被害者、被害者のご家族に向け、後遺障害等級認定の流れや、慰謝料などについて、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスの弁護士が解説します。

1、バイク事故で起こり得る後遺障害とは?

バイク事故の後遺障害が残る部位は、頭部から下肢にいたるまで幅広い箇所の可能性が考えられますが、実際にどの部分に後遺障害が残ってしまうのかは事故の状況によって大きく異なることでしょう。令和元年版「交通統計」によると、自動二輪車乗車中の事故の「状態別・損傷主部位別死傷者数」では、脚部の損傷がもっとも多く、次いで腕部、頸部(けいぶ)、腰部、胸部、頭部と続きます。

バイク事故は自動車での事故と違い、身体がむき出しになっていることから、複数箇所を負傷することが多いですし、後遺障害が残ってしまう可能性も高いといえるでしょう。まずはバイク事故に多い後遺障害について、いくつかピックアップして解説します。

  1. (1)上肢・下肢の障害

    上肢・下肢は、上肢と手指、下肢と足指とで区分されています。上肢と下肢の後遺障害には、上肢・下肢の全部または一部を失った欠損障害や、関節動作の障害、変形障害などがあります

    これらの障害は、上肢・下肢の切断や骨折などにともない発生します。また、バイク事故においては上肢・下肢の欠損のみでなく、神経症状が残るケースも少なくありません。

  2. (2)骨折

    骨折やじん帯損傷により、関節がこれまで通りうまく曲がらないようになってしまう「可動域制限」が生じることがあります

    怪我をした部分が、まったく動かないのか、どの程度は動くのかなどにより、認定される後遺障害等級が変わってきます。

  3. (3)むち打ち損傷

    頸椎(けいつい)捻挫、むち打ち損傷と呼ばれる症状は、局部の神経症状にあたります。

    また、局部の神経症状には2段階の等級があり、「局部に頑固な神経症状を残すもの」と「局部に神経症状を残すもの」とに分かれます。むち打ち損傷は、自動車の追突事故でもよくみられる後遺症で、首がムチのようにしなって筋肉やじん帯が損傷されることから、単純に「むち打ち」と呼ばれることもあります。

    おもな自覚症状としては、上肢や手指のしびれ、めまいなどがあります。

    事故直後から痛みを感じる場合もありますが、事故直後ではなく、数日後から痛みが出てくるケースもある点が特徴的です。

  4. (4)高次脳機能障害

    高次脳機能障害は、脳の後遺障害です。事故により、脳が損傷したことにより、その回復過程において障害が残ったものをいいます。

    代表的な症状としては、記憶障害、集中力がなくなるなどの認知障害はじめ、人格変化や行動障害があります。認知障害とは具体的に、新しいことが覚えられなかったり、複数のことを同時に処理できなかったりなどがあります。また、人格の変化においては、受傷前にはみられなかったような衝動性や、自己中心的な行動を取るなどがあげられます。

    高次脳機能障害は、後遺障害のなかでも重症区分とされています。時間を守ったり、計画を立てたりすることが難しくなるため、日常生活のみならず、社会生活にも影響を及ぼします。

  5. (5)外貌醜状

    バイク事故は、自動車事故のようにシートベルトや車体で身体が守られている状態ではありません。そのため、身体の露出部分に大きな被害を受けやすく、その症状も深刻であるケースが多い傾向にあります。

    外貌の醜状とは、頭部・顔面・頸部のように、日常露出している部位に残る後遺障害で、等級は3段階に区分されています(後遺障害等級は、症状が重いものから1級~14級まであります)。

    以下、等級の高い(症状の重い)順番に記載した外貌醜状になります。

      i) (第7級12号)外貌に著しい醜状を残すもの
     ii) (第9級16号)外貌に相当程度の醜状を残すもの
    iii) (第12級14号)外貌に醜状を残すもの


    ⅰ)は、①顔面の場合、鶏卵大以上の瘢痕(はんこん。傷あとのこと)または10円銅貨大以上の組織陥没、②頭部にあっては、てのひら大(指の部分は含みません。)以上の瘢痕または頭蓋骨のてのひら大以上の欠損、③頸部にあっては、てのひら大以上の瘢痕、これらのいずれかに該当し、人目につく程度以上のものをいいます。瘢痕とは、簡単にいうと傷跡のことをいい、できもののように残った状態を指します。

    ⅱ)においては、原則長さ5センチ以上の線状痕で、人目につく程度以上のものといわれています。線状痕とは、手術痕のような、線状に痕が残ったものをいいます。

    ⅲ)においては、「単なる醜状」ともいわれ、①顔面の場合、10円銅貨大以上の瘢痕または長さ3センチ以上の線状痕、②頭部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕または頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損、③頸部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕、これらのいずれかに該当し、人目につく程度以上のものをいいます。

    外貌以外であっても、上肢または下肢の露出面(上肢にあっては、ひじ関節以下、下肢にあってはひざ関節以下をいいます。)の醜状(てのひらの大きさ)については第14級に該当する可能性があります。

2、バイク事故で後遺症が残ったら? 被害者がすべき3つのこと

バイク事故で後遺症が残った場合、被害者の方は後遺障害慰謝料や逸失利益を請求することができます。
以下では、後遺障害慰謝料や逸失利益を、適正な方法・金額で受け取るために被害者が行うべきポイントをまとめました。

  1. (1)後遺障害等級認定申請を検討

    バイク事故で「後遺症」が残ってしまったら、後遺障害等級認定申請を検討しましょう

    「後遺障害」とは、自動車事故による傷害の治療が終了したときに残存するその傷害と相当因果関係があり、かつ、将来においても回復困難と見込まれる精神的または身体的な毀損状態であって、その存在が医学的に認められ、労働能力の喪失をともなうものをいいます。このような将来においても回復困難、すなわち、これ以上治療をしても回復が望めない状態を症状固定といい、被害者は症状固定となったら、後遺障害について等級の認定申請をしていくことになります。

    被害者は、ご自身の後遺症が後遺障害等級認定に該当することによって、後遺障害慰謝料や逸失利益の請求ができることになります

  2. (2)ご自身の後遺症の症状を把握する

    後遺障害等級認定申請に必要な書類として、医療機関が発行する「後遺障害診断書」があります。後遺障害診断書は等級認定においてもっとも重要な書類です。さらに、後遺障害診断書の項目を補完する材料として、被害者がご自身で自覚症状などを書き記した書面が有効になることがあります。

    後遺障害等級認定の審査は、上記の書面をもって、第3者機関である損害保険料率算出機構(自賠責調査事務所)が行います。被害者ご自身の症状を、調査事務所に正確に伝える必要があるということです。

    調査事務所は、原則書面のみで等級認定の有無や等級そのものを判断します。医師に適切な後遺障害診断書を作成してもらうためにも、適切に治療を行い、ご自身の症状を担当医師にしっかり把握してもらったうえで正確に記載してもらいましょう

  3. (3)弁護士に相談する

    後遺障害が残ってしまったら弁護士に相談・依頼することも検討しましょう。

    被害者が弁護士に相談するタイミングとしては、後遺障害等級認定申請を行う前をおすすめします。申請前であれば、弁護士に後遺障害等級認定の申請を依頼することも可能です。その際は医療コーディネーターなどと連携している法律事務所を選ぶことがポイントとなります。

    ● 弁護士に依頼するタイミングが後遺障害等級認定の申請「前」
    後述しますが、弁護士に後遺障害等級の認定申請を依頼した場合、「被害者請求」という方法を利用して後遺障害等級認定の申請を行います。

    後遺障害診断書を記載する人物は医師以外にはいませんが、たとえば後遺障害診断書に記載誤りや事実と異なることが記載されていた場合や資料が足りないと考えられる場合、弁護士が介入することによって修正できることがあります

    また、弁護士と医療機関が連携を取り、被害者の等級認定に有利になるよう提出資料を収集することも可能になる場合があります。

    ● 弁護士に依頼するタイミングが後遺障害等級認定の申請「あと」
    弁護士に依頼するタイミングが申請後であった場合、加害者側保険会社か被害者ご自身が、等級認定の申請していることでしょう。その場合、後遺障害診断書に記載すべき事項が不足していたり、補完すべき資料が足りなかったりすると、等級が低くなる(本来認定される等級よりも軽度の等級になること)可能性があります。

    後遺障害等級認定の結果が出たあとであっても、弁護士に依頼することで必要に応じて「異議申し立て」を検討します。異議申し立てをすることで、認定しなおしてもらうことができるためです。しかし、何の根拠もなくやり直しができるかといったらそうではありません。

    そのため、異議申し立てを検討する弁護士は、MRIなど画像の精度を検討したり、その他等級認定に有利になる診療記録を取り寄せたりします。被害者の等級認定を有利なもの(適正なもの)にするためにも、一度は弁護士に相談したほうがよいといえるでしょう

3、バイク事故による後遺障害等級認定申請の方法

後遺障害等級認定の申請は、バイク事故であっても自動車事故の申請方法と同じ手順です。申請方法には2種類あります。

  1. (1)事前認定

    加害者側保険会社が申請する方法です

    加害者側が事前認定を行う場合は、あとに触れる被害者請求と比べ、被害者の手間は発生しません。加害者保険会社にすべて一任することができ、資料収集から自賠責保険への資料送付まですべて行ってくれます。

    しかし、加害者側任意保険は大前提として、被害者に支払う保険金を少しでも抑えるよう努力します。前述の通り、後遺障害等級認定の申請を行う際、資料不足などによって、実際の状況よりも低い等級で認定されてしまうケースがあるのです。

    事前認定は手間こそかかりませんが、保険会社は、被害者の後遺障害等級認定のために有利に動いてくれるわけではないことを知っておきましょう。

  2. (2)被害者請求

    先ほど少し触れましたが、被害者請求とは、被害者がご自身で自賠責保険に請求する方法をいいます。代理人である弁護士に依頼した場合は、弁護士が被害者に代わり申請手続きを行います。

    被害者がご自身で申請を行う場合には、事前認定と違い手間が発生します。その分、被害者ご自身で有利な資料をそろえられることは、被害者請求の最大のメリットといえるでしょう。

    手間が発生する分、正確な知識をもって申請を行えば、適正な後遺障害等級が認定される可能性は高くなります。しかし、事故により後遺障害を負ってしまったのであれば、手続きや交渉などに手間をかける余裕がない方が多く、事実、治療などに専念すべきです。弁護士に一任することを検討してみてはいかがでしょうか。

    弁護士であれば、より専門的な視点で実情に沿った後遺障害等級認定がされるよう、申請を行うことが可能です。また、弁護士に交渉などを依頼することによって、個人で手続きをするよりもより多い慰謝料を受け取れる可能性が高まります

4、慰謝料は弁護士によって増額の可能性がある

前述の通り、後遺障害慰謝料は、弁護士に交通事故の示談交渉を依頼することにより増額が期待できます。その理由は「計算方法」にあります。

まず、後遺障害の等級が認定された場合、被害者は慰謝料や逸失利益を請求できます。しかし、その金額計算には、以下の3通りの方法があるためです。

  1. (1)必要最低限の補償、自賠責基準

    自賠責保険の基準による計算方法です。

    自賠責保険は最低限支払われる保険であり、被害者救済を目的としています。結果、公平性の観点から3つの基準のなかでもっとも低く、最低限の金額になるのです。

  2. (2)自賠責基準にプラスアルファ、任意保険基準

    加害者側保険会社に慰謝料計算を任せた場合は、任意保険基準により計算されることとなります。

    任意保険基準は一般的には非公開とされており、保険会社や支払い担当者により異なる場合があります。それでも、自賠責保険と同等もしくはわずかにプラスされた金額で計算が行われるケースがほとんどです。

  3. (3)もっとも高額な裁判所基準(弁護士基準)

    裁判所基準によって算出された慰謝料はもっとも高額になります。弁護士が交渉することによって裁判でも用いる金額を採用することから、もっとも適正かつ高額になるのです。なお、ここでいう「適正」とは、過去の判例などを基準にし、本来被害者が受け取れる権利があるだろう金額であるという意味です。

    個人で交渉する場合、裁判所基準で算出したとしても合意してもらえる可能性は限りなく低いでしょう。誰が計算したかによって用いられるものが異なるためです。

    より適正かつ高額な慰謝料を請求したい場合、被害者は保険会社に一任せず、弁護士に依頼することが望ましいといえます。

5、まとめ

バイク事故の後遺症は重症化しやすい傾向があります。そして、後遺障害慰謝料を請求するためには後遺障害等級認定申請が必要となりますが、後遺障害等級認定の申請方法は「被害者請求」が有利になる傾向があります。

しかし、後遺症が残った状態でご自身やそのご家族が手続きを進めていくことは非常に難しいでしょう。さらに、慰謝料計算は弁護士が計算するともっとも適正かつ高額になるのです。もしバイク事故に遭ってしまい、後遺症が残ってしまったら、弁護士に相談することを強くおすすめします。弁護士保険に加入していれば、ほとんどの場合弁護士費用は保険で賄われるため、費用面の心配はありません。

ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスでは、医療コーディネーターと提携して後遺障害等級認定が適切に行われるようサポートします。まずはお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています