闇バイトは捕まる? 逮捕された場合に問われうる罪と処罰

2024年06月24日
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闇バイトは捕まる? 逮捕された場合に問われうる罪と処罰

令和6年2月、さいたま市大宮区の空き家に侵入するなどの容疑で高校生4人が再逮捕されました。彼らは、闇バイトに応募して犯行に及んだとみられていると報道されています。

高額報酬をうたう「闇バイト」は、犯罪に関与するものばかりであり、発覚すれば逮捕されるおそれがある危険なものです。目先のお金欲しさに1回でも応募してしまうと、犯罪グループから逃れることができず、次々と犯行を重ねるはめになる可能性もあります。

本コラムでは、「闇バイト」に関与することで問われる可能性がある犯罪の種類や刑罰、逮捕の危険性や逮捕後の流れなどを、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスの弁護士が解説します。


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1、「闇バイト」とは? 関与するとどんな罪に問われるのか?

闇バイトの危険性についてはメディア等による周知が進んできていますが、いまだに、単なるアルバイト感覚で応募してしまう方がいるのが現状です。

誰でも簡単に、軽い気持ちで始めてしまいやすいにもかかわらず、自分自身の犯罪行為として罪に問われる事態になりうる点が、闇バイトの恐ろしいところです。

  1. (1)闇バイトとは?

    闇バイトとは、高額な報酬と引き換えに、違法行為をするアルバイトのことです。

    一般の求人サイトや情報誌には掲載できない内容のものばかりなので、TwitterなどのSNS上で募集・応募のやり取りが行われています。

  2. (2)闇バイトに関与すると問われる可能性のある犯罪

    闇バイトについて成立しうる犯罪は、次のように分類できます。

    • 詐欺系
      オレオレ詐欺・特殊詐欺の受け子や出し子などがこれにあたります。
      SNSのハッシュタグに「#UD」と表記されているものは「U=受け子」「D=出し子」を指す隠語なので、注意が必要です。
      自分自身がお金をだまし取るのではなく、単に、「いわれたとおりに封筒を受け取っただけ」(受け子)や、「指示を受けてATMからお金を引き出しただけ」(出し子)というケースでも、詐欺罪や窃盗罪に問われてしまいます。

    • 名義貸し系
      携帯電話を契約できない人のために自分の名義で契約を代行するものや、サラ金などの消費者金融で他人の代わりにお金を借り入れるものが、いわゆる「名義貸し系」の闇バイトです。
      名義貸しは、自分で使うつもりはないのに、「自分で使う」と偽って契約するので、詐欺罪に問われます

    • 口座売買系
      自分の通帳やキャッシュカードを他者に売却する闇バイトです。
      不正に取引された口座はオレオレ詐欺や闇金などに悪用されますが、捜査が開始されれば、名義人が真っ先に捜査対象に挙がります。
      売却目的で口座を開設して通帳・キャッシュカードを入手すると詐欺罪、すでに持っている通帳などを売却すれば、犯罪収益移転防止法違反に問われます。

    • 強盗系
      何らかのかたちで強盗グループに関与する闇バイトです。
      実行犯だけでなく、運転手役・見張り役であっても、強盗罪に問われます。
      強盗の隠語は「叩き(たたき・タタキ)」であり、SNSでも「#叩き」等で募集しているようです。
      なお、強盗の際、相手にケガをさせたり、相手を死亡させてしまったりした場合は、強盗致傷罪・強盗致死罪という、非常に重い犯罪に問われます

2、罪の重さは成立する犯罪によって異なる

闇バイトに関与すると、どんな刑罰を科せられるのでしょうか?

  1. (1)闇バイトへの関与で成立する犯罪に科せられる刑罰

    ひとことで闇バイトといっても、先の分類のように、その態様はさまざまであり、成立する犯罪・科せられる刑罰も異なります。

    先に挙げた例から、闇バイトへの関与で成立する犯罪について法律が予定している刑罰の範囲を確認しましょう。

    闇バイトで成立しうる犯罪と刑罰
    • 詐欺罪(刑法第246条)……10年以下の懲役
    • 窃盗罪(刑法第235条)……10年以下の懲役または50万円以下の罰金
    • 犯罪収益移転防止法違反(第28条1項)……1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方
    • 強盗罪(刑法第236条)……5年以上の有期懲役
    • 強盗致傷罪・強盗致死罪(刑法第240条)……無期または6年以上の懲役(強盗致傷)、死刑または無期懲役(強盗致死)
  2. (2)「脅されていた」と主張すれば無罪になるのか?

    闇バイトは、関与すること自体が危険なものです。もし途中で「これは危ないな」と感じても、簡単に後戻りさせてはくれません。

    闇バイトに関与する際、免許証などの画像・コピーを相手に提出するように求められます。ひとたび住所や連絡先といった個人情報を知られてしまうと、「命令に従わなければ自宅へ行くぞ」「家族にばらすぞ」などと脅されることになり、抜け出すことが難しくなります。

    このように「脅されて仕方なく犯行に加担した」というケースでは、自分が悪いのではないという気持ちから無罪を主張したくなるものですが、残念ながら有罪となってしまう可能性が高いでしょう。たとえ「仕方なく」というつもりでも、罪を犯すという故意までは否定されないからです。

    また、指示役や連絡役の人物から「違法ではない」「警察公認の仕事だ」などといわれており犯罪だとは知らなかったというケースでも、それを理由に罪を免れることはできません。

    刑法第38条3項には、法律を知らなかった場合の規定が存在します。「法律を知らなかったとしても、そのことによって罪を犯す意思がなかったとすることはできない」と明記されているので、犯罪だとは知らなかったとしても犯罪の成立は否定されないのです。

3、闇バイトは逮捕される? 逮捕後の刑事手続きの流れ

新聞やテレビ・ネットのニュースに目を向けると、闇バイトに関与して「逮捕された」と報じられる事件が目立ちます。
やはり闇バイトに関与すると逮捕されてしまうのでしょうか?

  1. (1)闇バイトに関与すると逮捕される可能性が高い

    闇バイトに関連する犯罪は、いずれもオレオレ詐欺・特殊詐欺・闇金・強盗など、組織的に行われるものばかりです。

    社会的に「悪質だ」と評価されやすいだけでなく、グループのメンバーと連絡を取り合って逃亡や証拠隠滅を図るおそれが強いと判断されてしまうので、逮捕の可能性は高いでしょう。

  2. (2)逮捕されるとどうなる? 刑事手続きの流れ

    警察に逮捕されると、次のような流れで刑事手続きを受けます。

    ① 警察による身柄拘束
    警察官が逮捕を告げた瞬間から身柄拘束が始まり、自由な行動が制限されます。警察署へと連行されて警察署内の留置場へと収容されたのち、警察官による取り調べが行われるので、自宅へ帰ることも、会社や学校へ行くことも許されません。警察による身柄拘束の期間は、逮捕から数えて48時間以内です。

    ② 検察官への送致
    逮捕された被疑者の身柄は、逮捕から48時間以内に警察から検察官のもとへと引き継がれます。この手続きが「送致」です。ニュースなどの報道では「送検」とも呼ばれています。
    検察官は、自らも被疑者の取り調べを行い、引き続き身柄を拘束するべきか、釈放するべきかを検討します。

    ③ 検察官による勾留の請求
    検察官が身柄拘束を続けるべきと判断した場合は、裁判官に対して、被疑者の勾留を求めます。この手続きを「勾留請求」といいます。勾留請求を受けた裁判官は、被疑者と面接する「勾留質問」を行い、勾留の可否を決定します。

    ④ 勾留による身柄拘束
    裁判官が勾留を決定すると、まずは10日間の身柄拘束を受けます。
    この間、被疑者は留置場で過ごしながら、警察官や検察官からの取り調べを受けます。
    10日間で捜査が遂げられなかった場合、一定の要件をみたせば、1度だけ、10日間を上限に勾留の延長が可能です。
    つまり、勾留期間は原則10日間、延長があれば最大で20日間になります。

    ⑤ 検察官による起訴・不起訴の判断
    勾留期間の満期日までに、検察官は起訴・不起訴の判断を下します。
    起訴とは、公訴(刑事裁判)を提起することで、不起訴とは、公訴の提起を行わないことをいいます。不起訴になった場合は、身柄拘束の必要がなくなるので、被疑者は釈放されます。

    なお、闇バイトに関する事件では、複数の事件に関与して「余罪」の追及を受けるケースも珍しくありません。
    余罪のある事件では、この段階で起訴・不起訴の判断を下さず処分を保留したうえで、余罪事件によって逮捕されることもあります。再び逮捕されることから、再逮捕とも呼ばれます。
    再逮捕されると、上述した逮捕・送致・勾留の流れを繰り返すため、身柄拘束が長期に及びます

    ⑥ 被告人としての勾留
    検察官に起訴されると、被疑者の立場は「被告人」へと変わり、さらに被告人としての勾留を受けます。被告人勾留を受けると、通常、警察署の留置場から拘置所へと移送されます。

    被告人勾留にも期限がありますが、刑事裁判が継続している間は何度でも延長可能です。つまり、実質的には「刑事裁判が終わるまで」が期限となります。なお、この段階からは一時的な身柄開放である「保釈」の請求が可能になります。社会復帰を急ぎたいなら、保釈を請求したほうがよいでしょう。

    ⑦ 刑事裁判
    起訴からおよそ1~2か月後に初回の刑事裁判が開かれます。以後、おおむね1か月に1度のペースで公判が開かれ、何度かの審理を経たうえで判決が言い渡されます。
    闇バイトに関する犯罪には懲役刑しか規定されていないものもあります。その場合は、執行猶予を獲得できない限り、刑務所へと収監されることになります。

4、闇バイトに関与してしまったら今すぐ弁護士に相談を

悪いことだとは知りつつも目先のお金欲しさで闇バイトに参加してしまった場合はもちろん、脅されて後戻りもできず犯行に加担してしまったといった場合でも、発覚すれば刑罰を受けるおそれがあります。

厳しい処分を回避したいと考えるなら、弁護士への相談を急ぎましょう。

  1. (1)被害者との示談交渉による穏便な解決が期待できる

    刑事事件を最も穏便なかたちで解決する方法が、被害者との示談です。加害者が被害者に対して謝罪したうえで、発生した被害に対して示談金というかたちで弁償し、被害届や刑事告訴を取り下げてもらったり、検察官や裁判官に「処罰は望まない」という意思を示してもらったりします。

    警察への届け出よりも先に示談を成立させることができれば、事件が発覚する前に解決することも可能です。また、逮捕・勾留されてしまった場合でも、示談が成立すれば検察官が不起訴処分を下して釈放するもありますので、早期解決が期待できます。

    ただし、被害者との示談交渉は簡単ではありません。刑事事件の被害者の多くは、加害者に対して強い怒りや恐怖、嫌悪といった感情を抱いているため、加害者側から示談を申し入れても相手にしてもらえないことがあります。

    また、被害者から過度に高額な賠償を求められてしまい交渉が進まないケースもあるので、公平な第三者であり、刑事事件についての法的な知識と経験が豊富な弁護士を代理人として交渉を進めたほうが安全です。

  2. (2)自首・任意出頭のサポートが期待できる

    逮捕の回避や処分の軽減が期待できる方策として有効なのが「自首」や「任意出頭」です。
    まだ捜査機関が事件を認知していない段階で自らの犯罪を申告すれば自首として扱われ、刑事裁判において「刑の減軽」を受けて処分が軽くなる可能性があります。

    すでに捜査が始まっており、被疑者として特定されている段階で自ら警察署などに出向く場合は「任意出頭」です。自首のように法律上刑の減軽を受けられる可能性があるわけではありませんが、反省を示すことで有利な処分が得られるかもしれません。

    自首や任意出頭は「逃げも隠れもしないし、証拠はすべて提出する」という意思表示となります。組織的な事件では自首・任意出頭によって必ず逮捕を避けられるとはいえませんが、身柄拘束の回避や短縮を望むなら有効な手段です。

    とはいえ、警察署に自ら出向いて犯罪を申告するのはとても勇気のいる決断です。また、自首が認められる状況なのに警察が自首として正しく扱わなかったり、不当な身柄拘束を受けたりする危険がないとも言い切れません。

    自首・任意出頭を考えるなら、事前の対策も含めて弁護士に相談し、同行を依頼したほうがよいでしょう

  3. (3)厳しい刑罰を回避するための弁護活動が期待できる

    犯した罪についてどのような刑罰を科すのかを決めるのは裁判官です。闇バイトに加担して罪を犯した事実に間違いはなくても、犯行グループから「合法で安全な仕事だ」と念押しされて信じていた、個人情報を握られて脅されていたといった状況があれば、酌量の余地があるといえます。

    刑事裁判では、さまざまな証拠からどの程度の刑罰が適当なのかが判断されます。
    証拠といっても被告人にとって不利なものばかりではなく、被告人のやむを得ない事情や深い反省を示す有利なものもあるので、有利な証拠を集めて示せば刑罰が軽い方向へと傾く可能性が高まるでしょう。

    弁護士に弁護活動を依頼すれば、厳しい刑罰を回避するための証拠収集などの弁護活動が期待できます。懲役に執行猶予が付されたり、罰金で済まされたりする可能性を高めるには、弁護士のサポートが必須です。

5、まとめ

軽い気持ちで「闇バイト」に応募・参加してしまうと、詐欺や強盗といった危険な犯罪に巻き込まれ、自分自身が加害者として責任を問われるおそれがあります。捜査機関や裁判所は組織的な犯罪に厳しい姿勢を示しているので、たとえ積極的に犯罪に加担したわけではなくても、逮捕・刑罰を受けることになる可能性は高いです。

厳しい処分を回避するためには弁護士のサポートが欠かせません。闇バイトに関与してしまい、逮捕や刑罰に不安を感じているなら、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスにご相談ください。

刑事事件の解決実績がある弁護士が、妥当な解決を目指して全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています