親が自己破産したら、子どもや家族に影響はある? どう対処すればいい?
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近年、奨学金が返済できずに自己破産する人が増加しています。奨学金を借りる際は、親が連帯保証人になっているケースが多く、この場合、本人が自己破産しても親に支払い義務が生じます。それでは、これとは反対に、親がカードローンなどの借金により自己破産した場合、子どもにはどのような影響が及ぶのでしょうか。
親に借金があると、子どもにもさまざまな影響が出ることが考えられます。早めに弁護士に相談したうえで、具体的な対応を検討することが大事です。ここでは、親が借金を滞納してしまっている場合の対処方法について、大宮オフィスの弁護士が解説します。
1、親の借金を子どもが背負う必要はある?
親に借金がある場合、子どもはその借金を返済する義務があるのでしょうか。法律上、いくら親子であっても、保証人などになっていない限り、親の借金を子どもが返済する義務はありません。
ただし、親が死亡した際に借金があった場合には、相続という形で借金を負ってしまう可能性があります。
2、自己破産とはどのような制度?
自己破産とは、借金の返済ができなくなってしまった方が、裁判所に破産を申し立てて免責許可をもらい、全ての借金の支払いを免除してもらう手続きのことです。借金の返済ができないとは、借金の額が年収を超えてしまったり、失業して借金の返済めどが立たなくなったりなど、継続的に、全部または大部分の債務について、弁済ができない状態、すなわち「支払不能」の状態のことを言います。
自己破産においては、不動産や車といった資産は破産手続の中で処分されますが、生活していくのに最低限必要な現金や生活必需品などは残すことができます。
借金がゼロとなり、99万円までの現金や生活必需品、破産手続開始後に新たに破産者が取得した財産等は手元に残すことができますので、人生の再スタートをすることが可能な手続きと言えるでしょう。
デメリットとしては、信用情報機関の信用情報(ブラックリスト)に事故情報として掲載されるため、一定期間、新たにクレジットカードを作ったり、お金を借りたりすることが難しくなることや、官報に破産者として名前が掲載されることがあげられます。また、自己破産を申し立てて破産手続開始決定を受けると、免責が決定するまでの間、資格を必要とする一部の職業に就くことができません。
また、以下に述べるように、裁判所が免責を許可しない場合や全体としては免責が許可されたとしても支払い義務を免れない場合があります。
●免責不許可
次のような場合、不当な破産を防ぐため、裁判所から免責不許可となることがあります。
- 財産の隠匿など:債権者を害する目的での財産隠しをしていた場合。
- 換金行為など:破産手続の開始を遅らせる目的で信用取引などを行った場合。
- 偏頗弁済:一部の貸金業者だけ優先してかたよった返済をする場合。
- ギャンブルや浪費による著しい財産の減少
- 詐欺的な借り入れ:貸金業者をだまして借り入れたなどの場合(「破産手続き開始の申立てがあった日の1年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと」)。
- その他:裁判所が行う調査に対して、説明を拒んだり虚偽の説明をした場合。
●非免責債権
自己破産をして免責決定が出ても、全ての借金について支払い義務がなくなるわけではなく、たとえば、次の債権は免責が許可されても支払う義務を負っています。
- ①租税等の請求権
- ②破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
- ③破産者が故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求
- ④養育費、婚姻費用など
- ⑤給料等の雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権および使用人の預かり金の返還請求権
- ⑥破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権
- ⑦罰金等の請求権
なお、上記のとおり、ギャンブルや浪費による借金については、自己責任として免責不許可となるとされていますが、実際には、裁量免責と言って、免責の可否について、裁判官が破産申立者の生活態様などを見た上で柔軟に判断しています。
ご自身が自己破産した場合に、免責が得られるか、現在の債権について免責されるのか不安な場合、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。
3、親の自己破産で子どもが受ける影響は?
前述したとおり、子どもが親の借金を返済する法律上の義務は、保証人になっていない限り、ありません。しかしながら、親と同居している場合であれば、住まいを明け渡す必要が生じたり、共有名義の財産を差し押さえられたりして生活面に支障が出る可能性があります。また、今後家を借りるときなどに親を保証人にすることができないなどのデメリットも生じます。
債権者(お金を貸している人)によっては、親の借金について法律上の義務がないのにかかわらず、子どもや家族に道義的な責任を追及して返済するよう催促してくる場合もあります。このような行為は脅迫罪や強要罪、恐喝罪に該当する場合がありますので、弁護士や警察に相談をしてみましょう。
また、貸金業法21条7号では、債務者(お金を借りている人)以外の者に対し、債務者等に代わって借金を弁済することを要求することはできない、とされています。相手が貸金業者の場合は、金融庁に通告することができます。
4、親の借金がどれぐらいあるのかを知る方法
●信用情報機関の利用
親の借金の総額がいくらかを調べるには、親が亡くなっている場合、信用情報機関から情報を取り寄せるとよいでしょう。借入先によって、次のような機関で調べることが可能です。
銀行からの借り入れ:全国銀行協会の全国銀行個人信用情報センター
消費者金融やクレジットカードを利用した借り入れ:CIC、JICCなどの信用情報機関
なお、上記機関からの情報で調べられるのは、親が直接借りている借金のみです。親が誰かの保証人・連帯保証人になっている場合までは調査することができないため、注意しましょう。
●不動産に関する確認
親が不動産を所有している場合は、不動産が借金の担保になっていないかも調べましょう。
不動産が住宅ローンの担保となっている場合は、住宅ローン専用の生命保険である団体信用生命保険(団信)に加入しているかを確認します。団体信用生命保険に加入している場合、親が亡くなった際には保険からローンの残高が支払われるので、相続人がかかるローン債務を相続することはありません。
5、そのほかにできる債務整理方法
自己破産は債務整理の方法のひとつであり、それ以外にも方法があります。債務整理とは、将来発生する利息のカットや借金減額などを行うための手続きで、自己破産のほか次のような方法があります。
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(1)過払い金請求
過払い金とは、消費者金融やクレジット会社、大手デパートカードなどの貸金業者が、過去に利息制限法の上限を超えて取り続けていた利息のことを言います(グレーゾーン金利)。貸金業者が不当な利息を課したことによって水増しされた借金を返済してしまっていた場合に、その本当は返す必要がなかった利息分(過払い金)を取り戻すのが過払い金請求です。
過払い金請求は支払い過ぎた利息を返還してもらう手続きのため、厳密には債務整理ではありません。そのため、すでに完済した借金に対して過払い金請求を行うだけであれば、ブラックリストに載ることはありません。
現在は法律が改正され、いわゆるグレーゾーン金利はなくなり、通常過払い金は発生しません。2008年以前の借り入れであれば過払い金が発生している可能性が高いため、まずは弁護士などに相談して、過払い金が発生しているか調べてみるとよいでしょう。 -
(2)任意整理
任意整理とは、裁判所を通さずに債権者(貸金業者など)と交渉し、借金を減額したり、将来の利息をカットするなどして、支払いを軽減するための債権者との和解手続きです。
債務者本人が行うことも可能ではありますが、債権者相手との交渉は弁護士などの専門家に依頼した方が、心理的負担が軽くなったり、減額される借金の額が大きくなる可能性が高くなるなどのメリットがあります。
任意整理は、将来の利息をカットするという特徴がありますので、早めに手続きをした方が負担の軽減は大きくなります。
任意整理の特徴として、一部の債権者だけを対象に任意整理可能なことがあげられます。たとえば、保証人がいる借金は任意整理せず、それ以外のすべての借金について任意整理する、といったことも可能です。個人再生や自己破産では、借入先が複数ある場合は全てを対象に手続きをする必要があるため、何らかの理由で債務整理する借入先を選択したい場合は任意整理を検討するとよいでしょう。
任意整理のデメリットとしては、自己破産同様、ブラックリストに載ることです。また、あくまでも交渉による和解のため、個人再生や自己破産に比べると減額できる金額は少なくなるでしょう。 -
(3)個人再生
個人再生とは、個人債務者の返済負担の軽減と返済計画の立案を支援する手続きのことです。具体的には、借金を返済するのが難しいことを裁判所に認めてもらうことで、借金を1/5程度に減額してもらい、原則3年で分割返済していく計画を立てます。
個人再生の大きな特徴でありメリットは、自宅を残したまま債務整理を行えるということです。個人再生では、任意整理と違い、債務の全てを対象に債務整理を行わなければなりませんが、住宅ローン特則(住宅資金特別条項)を利用することで、債務整理の対象から住宅ローンを除くことができるのです。そのため、個人再生を利用すると、持ち家に住み続けたまま、そのほかの借金について整理をすることが可能です。
デメリットとしては、自己破産と同じく、ブラックリストに掲載されることや官報に名前が掲載されることでしょう。
6、まとめ
親の借金については、直接的な返済義務はないとしても、間接的に子どもの生活に影響が及ぶうえ、相続になれば借金を引き継ぐ可能性もあります。したがって、可能な限り、親が存命の間に解決しておくことが大事になります。早めに弁護士などに相談し、債務整理の方法や、相続時に相続放棄するのかなどの対応を検討することをおすすめします。まずはベリーベスト法律事務所 大宮オフィスまでお気軽にご相談ください。大宮オフィスの弁護士が、親の借金問題への対処に全力を尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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