借金返済に追われ1ヶ月の家賃滞納に。家賃を任意整理したら強制退去になる?

2019年04月25日
  • その他
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借金返済に追われ1ヶ月の家賃滞納に。家賃を任意整理したら強制退去になる?

近年、賃貸住宅の契約時に連帯保証人を代行する家賃保証会社が急激に増えたことで、不動産会社による借主の支払い能力審査が甘くなっている状況があります。このような状況が、家賃滞納が頻発する原因のひとつとも考えられており、実際に借金返済に追われ家賃を滞納してしまったことがある方もいらっしゃるかもしれません。そのようなとき、どのくらいの期間で退去を求められるのか、また、訴えられたりすることがあるのかなど、さまざまな不安が頭をよぎることと思います。
ここでは、家賃を滞納してしまった場合に、どのように対処すべきかについて、大宮オフィスの弁護士が解説します。

1、家賃滞納は何ヶ月まで許される?

家賃の滞納がどこまで許されるかについて、法律上の決まりはありませんが、裁判で契約解除が認められるのは、3ヶ月以上家賃を滞納した場合が多いと言えます。

契約解除の可否は事案ごとに判断されますが、たとえば、家賃の滞納を度々繰り返しているような場合は、信頼関係を破壊しているとして大家さんからの契約解除および明け渡し請求が認められる可能性が高まるといえるでしょう。

2、家賃を滞納するとどのように催促される?

家賃を滞納した場合、一般的には、次のような順に支払いの催促がなされることが多いと考えられます。
まずは口頭・電話・手紙などで支払いの催促されることが多いでしょう。連帯保証人がいる場合には、連帯保証人に家賃の支払いを請求されることもあります。

口頭や手紙などによって支払いを催促しても支払いがない場合は、客観的な証拠を残す意味合いから、内容証明郵便を用いて、支払いを催促されることもあります。
内容証明郵便による催促をしても支払いがない場合は、賃貸借契約を解除し、期限を定めて明け渡しを求めることなどを内容とする内容証明郵便が送付されることが考えられます。なお、一定の期間内に支払いがないことを条件として解除、明け渡しを請求する内容証明郵便が送られることもあります。

賃貸借契約を解除する旨の通知をして明け渡しを求めても、自主的に立ち退かないでいる場合には、最終的には裁判により明け渡しを求められることになります。裁判では、貸主と借主の信頼関係が破壊されたのかどうか、賃貸借契約の解除が有効かなどについて判断がなされます。貸主の請求を認める判決がでれば、それをもとに強制的に立ち退かされることになります。

3、家賃滞納に対する対応方法

家賃を滞納してしまった場合、どのような対応が考えられるかについて、順に述べていきます。

①大家さんへの相談
まずは、大家さんや管理会社に家賃が支払えない状況を説明し、家賃を支払うつもりはあることを伝えることが必要です。たとえば、今後の入金の見通しを伝える、分割での支払いを提案するなどして、大家さんとの信頼関係が破壊されないよう注意します。
信頼関係が崩れてしまうと、大家さん側から賃貸借契約を解除される可能性が高まり、解除されれば部屋の明け渡しを請求される可能性があります。

②住宅確保給付金制度を利用する
本制度は、離職などにより経済的に困窮し、住居を失ったまたはそのおそれがある者に対し、住居確保給付金を支給することにより、安定した住居の確保と就労自立を図るものです。支給対象者は、次の条件を満たす者です。

  • 申請日において65歳未満であって、離職などの後2年以内であること
  • 離職などの前に世帯の生計を主として維持していたこと
  • ハローワークに求職の申し込みをしていること
  • 国の雇用施策による給付などを受けていないこと


詳しい支給要件、支給額については各自治体へ問い合わせるとよいでしょう。さいたま市であれば、各区役所の福祉課にある生活自立・仕事相談センター等が相談にのってくれます。

③お金を借りて家賃を支払う
大家さんの了解を得られず、すぐにでも家賃を納付しないと退去せざるを得なくなる場合には、借金をしてでも家賃を払うことを考える必要があります。この場合、まずは親族から借りることを検討しましょう。友人などに借りるよりは、金銭トラブルに発展する可能性が低いでしょう。
親族などに借りることが難しい場合は、やむを得ず消費者金融から借りることを検討することになりますが、金利が発生しますので、必要最低限の金額を借りることをおすすめします。

④生活保護を受ける
大家さんの理解も得られず、多重債務がある上、今後お金を作る見込みが立たず、家賃を支払うことも難しくなってしまった場合、最終手段として生活保護を受けることが考えられるでしょう。
生活保護制度は、生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としています。生活保護は世帯単位で行い、世帯員全員が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することが前提です。

また、扶養義務者の扶養は、生活保護法による保護に優先します。従って、次の条件を前提として、世帯の収入と厚生労働大臣の定める基準で計算される最低生活費を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に保護が適用されます。

  • 資産の活用:預貯金、生活に利用されていない土地・家屋などがあれば売却などして生活費に充てる。
  • 能力の活用:働くことが可能な方は、その能力に応じて働く。
  • あらゆるものの活用:年金や手当など他の制度で給付を受けることができる場合は、まずそれらを活用する。
  • 扶養義務者の扶養:親族などから援助を受けることができる場合は、援助を受ける。

4、債務整理とは

家賃滞納の原因として多重債務があるような場合、まず債務整理をすることが有益です。債務整理とは、借金の整理を弁護士などに依頼し、債権者との交渉や裁判所への申し立てを行い、将来発生する利息のカットや借入元金の減額、免責などを行う手続きで、次のような方法があります。

  • 過払い金請求
  • 任意整理
  • 個人再生
  • 自己破産

5、任意整理とは

任意整理は債務整理の方法のひとつです。任意整理とは、裁判所を通さずに、将来の利息をカットする、支払いの分割回数を増やすなどして、1回ごとの支払いを軽減するための貸金業者との和解交渉です。
ご自身で行うことも可能ではありますが、弁護士に依頼した方が、毎月の返済額を減らせる可能性が高まります。

任意整理は、将来の利息をカットできる、払いすぎた利息から引き直し計算をして元本を減らすことができる可能性がありますので、早めに手続きをした方が負担を軽減できる余地は大きくなります。

6、家賃を任意整理の対象にできるか

家賃を滞納している場合に、家賃を任意整理の対象とすることは可能です。滞納した家賃を3年から5年で分割し、毎月無理のない金額で返済していきます。ただし、家賃自体には原則として高い金利が設定されていないことが多いため、任意整理をするメリットはあまり大きくはないと言えます。任意整理をするメリットが大きいのは、他の借り入れが原因で家賃滞納に至ってしまっている場合などです。

なお、家賃の任意整理を求める場合には、大家さんから立ち退きを求められるリスクがあることに注意しましょう。大家さんの立場からすれば、任意整理をされることで、家賃の支払額が少なくなり、家賃の回収が遅れることになります。そのため、そもそも任意整理に応じないケースもあります。上記のように3ヶ月程度の家賃滞納がある場合には明け渡しの訴訟を提起されることもありますので、現在の住まいに住み続けるためには、なるべく早期に他の借金を任意整理し、家賃をしっかりと支払っていくことが必要になります。

7、債務整理を弁護士に相談するメリット

債務整理は、法律的知識や交渉力が必要になる分野であることから、自力での解決を目指すよりも、解決実績があり信頼できる弁護士に依頼することが、解決への近道といえるでしょう。
弁護士に相談することによる最初のメリットは、執拗な取り立てを止めることができるという点です。依頼を受けた弁護士は、各債権者に対して、今後の交渉は弁護士を通じてするようにとの通知を発送し、これにより直接の取り立て行為を止めることができるのです。取り立てに追われる生活を続けてきた債務者にとって、この精神的負担の軽減は非常に大きなメリットと言えるでしょう。
また、精神的負担から解放されることに加え、弁護士に相談することにより、いくつかある選択肢の中からもっとも適切な解決方法の提案を受けることができます。その上で、解決のために必要なさまざまな対応(債務総額の計算や契約書の確認、書類の作成、各債権者との煩雑なやりとりなど)を一任できることは、大きなメリットとなると言えます。

8、まとめ

借金がかさみ家賃を滞納してしまった場合、今後の生活に備え適切な対応をとる必要があります。他に借金があり家賃を滞納してしまったがどうしたらよいかわからない、大家さんや管理会社と家賃滞納でもめているなどお困りの方は、ベリーベスト法律事務所・大宮オフィスまでご相談ください。大宮オフィスの弁護士が、家賃滞納への対処に全力を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています