住宅ローンが払えない! 起こり得る出来事と解決方法を弁護士が解説

2021年06月07日
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住宅ローンが払えない! 起こり得る出来事と解決方法を弁護士が解説

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて企業の活動も縮小を余儀なくされています。さいたま市内の企業や個人事業主等も例外ではありません。企業の労働者は給料が減少し、経営者などは売り上げが減少するなど、経済的な打撃を被っている方も少なくないようです。

自宅を購入する際には、多くの方が住宅ローンを借りていますが、給料が減ったりすると、当初予定していた住宅ローンが支払えなくなることがあります。住宅ローンの返済が滞った場合にはどのような事態が生じるのでしょうか。

今回は、住宅ローンが払えないときに起こり得る出来事と解決方法をベリーベスト法律事務所 大宮オフィスの弁護士が解説します。

1、住宅ローンを滞納すると起こり得ること

住宅ローンを滞納し続けると最悪の場合には、以下のように競売によって自宅を失うことがあります。

  1. (1)競売によって自宅を失う

    競売とは、債権回収のために債権者が裁判所に対して申し立てを行い、担保となっていた不動産を裁判所が売却をする手続きのことをいいます。

    住宅ローンを借り入れる際には、金融機関は、購入する自宅(土地・建物)に対して、抵当権という担保権を設定することになります。住宅ローンの支払いの滞納が続いた場合には、金融機関は、この抵当権を実行することによって、あらかじめ担保にとっていた自宅を売却し、強制的に滞納している住宅ローンの返済に充てることが可能です。競売によって自宅が落札されてしまうと、自宅の所有権は落札した人(競落人)に移転することになりますので、自宅を退去し、明け渡さなければならなくなってしまいます。

    もっとも、住宅ローンの滞納があったからといってすぐに競売になるわけではありません。1か月程度の遅れであれば、金融機関から返済が遅れている旨の連絡が来るだけで終わることが大半ですので、すぐに滞納を解消することができれば、大きな問題は生じないでしょう。

    しかし、住宅ローンの滞納が、2か月以上続くと金融機関から督促状が届き返済を求められることがありますそして、そのまま、3か月から半年程度滞納が続くようですと、金融機関から、期限の利益喪失予告の通知が届きますその後、保証会社による代位弁済が実施されます

    保証会社による代位弁済が行われた場合には、今までどおりの分割弁済はできず、原則として、住宅ローンの一括弁済が求められることになります。通常は一括弁済は難しいでしょうから、一括弁済ができないとなると、そのまま競売が申し立てられるという流れになります。

  2. (2)売却金額によっては住宅ローンが残ることも

    競売によって自宅が売却された場合には、売却代金は、住宅ローンの返済に充てられます。しかし、競売による売却価格は、市場価格よりも低い価格であることが多いため、競売で売却ができたとしても住宅ローン全額を返済するには足りず、住宅ローンが残ってしまうことがあります。

    その場合、自宅を失うだけでなく、残ってしまった住宅ローンについても引き続き返済をしていかなければなりません。

2、住宅ローンを払えないとき確認すべきこと

住宅ローンの支払いが難しくなった場合には、収支の見直しをすることが必要です。収入をいきなり増やすことは難しいといえますので、以下のように、支出を見直すことによって住宅ローンの支払いを継続することができるかどうかを検討します。

  1. (1)住宅ローン以外の借金の有無

    まずは、住宅ローン以外に借金があるかどうかを確認しましょう。

    住宅ローン以外に借金がある場合には、住宅ローン以外の借金を債務整理の対象とすることによって、月々の返済額を減らすことができる場合があります。毎月の返済額が少なくなれば、住宅ローンの支払いを継続することができる場合もありますので、すぐに諦めることはありません。

  2. (2)家計や保険内容の見直し

    毎月の支出を減らすことができればその分を住宅ローンの返済に充てることができます。そのため、家計簿をつけるなどして毎月の支出を洗い出して、無駄な支出がないかどうかを検討するとよいでしょう。

    家族でスマートフォンを利用している場合には、料金プランを見直すことによって大幅に料金を減額することができる場合があります。また、保険に加入している場合には、本当に必要なものだけを残して、他の保険は解約してしまうことも有効な手段となります。

    家計簿など目に見える形で書きだすことによって、毎月の無駄な出費が見つけやすいでしょう。

3、住宅ローンを払えないときにできる解決方法

毎月の収支の見直しによっても住宅ローンの支払いを継続することができない場合には、以下のような手段を検討しましょう。

  1. (1)返済条件変更の相談

    収入が減るなどして住宅ローンの返済が難しくなってきた場合には、早めに住宅ローンを組んだ金融機関に相談に行くことが大切です。
    金融機関によっては、毎月の返済額を減額(リスケジュール)してくれたり、ボーナス払いの金額の変更・停止などに応じてくれたりすることがあります。ただし、毎月の返済金額が減ったとしても返済総額が減るわけではありません。

    リスケジュールなどによって返済期間が延びることになればその分支払わなければならない利息が増えることになります。トータルの負担としては増えることになりますので注意が必要です。

    また、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって返済が困難になった方が増えていることを受けて、金融庁でも金融機関に対して住宅ローンの返済条件変更に柔軟に対応するように求めています。金融機関でも専用の窓口を設置して対応していますので、まずは相談をしてみるとよいでしょう。

  2. (2)借り換え

    住宅ローンの借り換えをすることによって現在の利息よりも低い利率で住宅ローンを借りることができる場合があります。低い利率の住宅ローンに借り換えることができれば、住宅ローンの返済総額も減り、結果として毎月の返済額を減らすことができます。

    しかし、住宅ローンの借り換えにあたっては、収入などの審査がありますので、必ず借り換えができるとは限りません。また、借り換えの際には、手数料や保証料などがかかるのが一般的ですので、そのような負担をしてもメリットがあるかどうかをよく検討してから行うようにしましょう。

  3. (3)債務整理

    自宅を維持したまま住宅ローンの支払いを継続する方法としては、債務整理を行うことも有効な手段となります。その場合には、住宅ローンを債務整理の対象とするのではなく、住宅ローン以外の借金を債務整理の対象とすることによって、毎月の返済額を減らし、住宅ローンの支払いを続けることになります。したがって、借金が住宅ローン以外にはないという場合には、自宅を維持しつつ債務整理を行うということは難しいでしょう。

    具体的には次のような方法が考えられます。

    ① 任意整理
    任意整理とは、債権者と交渉することによって、毎月の返済額を減らしたり、利息を免除等してもらうことにより返済総額の減額を行う方法です。

    住宅ローン以外の債権者を対象として任意整理を行うことによって、毎月の返済額の負担を減らし、将来利息を免除してもらうことができる場合があります。住宅ローンの支払いをしても返済に充てるだけの余裕がある場合には、返済可能な範囲で毎月の返済額を設定するとよいでしょう。

    ② 個人再生
    個人再生とは、裁判所に申し立てを行うことによって、住宅ローン以外の債権者に対する返済総額を減らして、減額後の借金を3年から5年の範囲で分割返済をしていく手続きのことをいいます。

    任意整理では、毎月の返済額や利息減らすことはできても、債務額自体を減額することは難しいものですが、個人再生の手続きをすることによって、債務額自体を大幅に減らすことができるというメリットがあります。

    住宅ローンがある場合には、住宅資金特別条項を利用して個人再生を行うことによって自宅を維持したまま、全体的な債務整理を図ることが可能となります。

  4. (4)任意売却

    上記の方法によっても住宅ローンの返済を継続することが難しいという場合には、不動産会社などに依頼し、自宅を売却して、その売却代金を住宅ローンの返済に充てることになります。自宅を失うことになりますので、あくまでも最終的な手段です

    自宅の売却を決断した場合には、債権者による競売が完了する前に売却手続きを進める必要があります。自宅が競売により落札されてしまっては任意に売却することはできなくなるためです。また、一般的に、任意売却の方が競売で売却されるより高い価格で売却することができるとされており、その分債務額を減らすことが可能です。

    自宅を売却したにもかかわらず住宅ローンが残ってしまったというような場合には、そのほかの借金の有無や収支状況を踏まえて自己破産を選択することも検討しなければなりません。

4、債務整理は弁護士に依頼したほうがよい理由

住宅ローンの返済が難しいと感じた場合には、できる限り早めに弁護士に相談をするようにしましょう。

  1. (1)最適な債務整理の方法を提案してもらえる

    住宅ローンの返済が難しくなったとしても、適切な債務整理の方法を選択することによって、自宅を維持したまま、住宅ローンの返済を続けられる可能性を高めることができます。

    そのためには、債務者自身の借金総額、収入と支出の状況、利用できるそのほかの手段などを踏まえて個別具体的に検討していかなければなりません。どのような手段が最適かどうかは、債務整理の知見が豊富な弁護士でなければ正確に判断することは難しいといえます。

    最終的に自宅を売却することになるとしても、できる限り負担の少ない方法を提案してもらうことができますので、まずは弁護士に相談に行くとよいでしょう。

  2. (2)債権者との交渉や裁判所への申し立てをすべて任せることができる

    債務整理を弁護士に依頼した場合には、その後は、債権者への対応から裁判所への申し立てまで、すべて弁護士が行います。債務者ご本人には、弁護士との打ち合わせを行い、必要な資料を収集してもらうことはありますが、それ以外の対応は基本的には弁護士が行いますので、債務整理にあたっての負担は非常に小さいといえます。

    特に、住宅資金特別条項を利用して個人再生を行う場合には、専門的かつ複雑な手続きになりますので、弁護士のサポートが不可欠です

5、まとめ

住宅ローンの支払いが難しくなってくると「自宅を手放さなければならないかもしれない」と不安になる方も多いでしょう。しかし、早期に弁護士に相談をすることによって、自宅を手放すという最悪のケースを回避する可能性を高められます。

住宅ローンを含む借金問題でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスまでお気軽にご相談ください。ご状況を詳しくお伺いし、あなたの将来のために力を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています