弁護士と司法書士、過払い金請求に強いのはどちら?

2019年07月31日
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弁護士と司法書士、過払い金請求に強いのはどちら?

電車のつり革広告やTVなどで借金に関する宣伝を見かける方も多いでしょう。「払いすぎたお金が戻ってきます!」と表現されている広告もあり、何社にも借金を返済している人にとっては気になる表現なのではないでしょうか。

借金の減額をしたり、返済に猶予を持たせたりといった手続きのことを「債務整理」と言います。債務整理をするには、まず現在の借金を正確に把握する必要があり、この過程で確認すべきなのが「過払い金」の存在です。広告の「払いすぎたお金が戻ってきます!」というのは、この過払い金を請求することを指しています。

この過払い金について、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスの弁護士が詳しく解説します。

1、過払い金とはどのようなもの? 請求ができるの?

  1. (1)過払い金とは?

    「過払い金」とは簡単に言うと、消費者金融やクレジットカード会社(信販会社)といった貸金業者へ借金を返済した際に、払い過ぎた利息のことを言います。

    お金の貸し借りには、利息制限法と出資法という2つの法律があります。出資法の金利上限を超えた場合は罰則が科せられますが、利息制限法の定める利率(15~20%)を超えても罰則が科せられることはありません。
    かつてはこの2つの法律でそれぞれ定められている金利の上限が違い、その間の金利は「グレーゾーン金利」と呼ばれ、多くの貸金業者やクレジット会社は、出資法の当時の上限であった29.2%に近い金利を設定していました。

    ところが、平成18年に最高裁判所で、利息制限法を超えて支払った利息の返還を認める判決が出されました。これにより、利息制限法を超えて払った利息は「過払い金」と呼ばれるようになりました。

    現在は法改正により出資法の金利上限が引き下げられたため、グレーゾーン金利は存在しません。
    ただし、出資法の金利引き下げ前に借り入れをした方は、契約書を新たに取り交わしていないと、利息制限法を超える金利のままとなっていることがあります。その場合は、出資法改正後に返済を行っていたとしても過払い金が発生している可能性があります。

  2. (2)過払い金は請求できる!

    前項の判決以降、利息制限法を超えて支払った利息を、「過払い金」として貸金業者に返還請求できるようになりました。

    借金を返済中の方であっても、借金の残額よりも払いすぎた利息の額が大きい場合は、過払い金が手元に戻ってくることになります。
    貸金業者やクレジット会社と長年取引をしている方は、過払い金が発生しているケースが多いようです。

    過払い金返還の請求は、すでに借金を完済している方も対象です。過去に借金をしていた期間がある場合は、一度調べてみるとよいでしょう。

  3. (3)注意が必要な点

    過払い金返還請求をすると借金が減額される、お金が戻ってくるなどのメリットがありますが、以下のような注意点も存在します。

    ●原則としてブラックリストには載らない
    過払い金の請求を行っても、原則として信用情報機関のデータベース(いわゆるブラックリスト)に登録されることはありません。
    しかし、払いすぎた利息を返済に充当してもなお借金が残る場合は、信用情報機関に事故情報が登録されてしまう可能性があります。そのため、クレジットカードの更新ができない、あるいは新たにクレジットカードを作れなくなるなどの恐れがあります。
    ただし、事故情報が登録されたとしても、新たな借り入れなどができなくなるだけであり、それ以外に日常生活で必ずしも支障があるというわけではありません。

    ●過払い金返還請求を行った業者とは、今後取引ができなくなる恐れがある
    信用情報機関に事故情報の登録がされなかったとしても、その債権者および関連会社から借り入れ等ができなくなることがあります。今後もその会社のクレジットカードを使いたい場合などはこの点を十分に検討するべきでしょう。公共料金の支払いなど自動引き落としの設定をしている場合は、事前に設定を変更しておきましょう。

    ●過払い金の請求ができないケースもある
    法律上、借金完済から10年が経過すると過払い金の時効が成立します。つまり、過払い金の返還請求が一切できなくなります。また、過払い金の返還を請求する前に貸金業者がつぶれてしまうこともあり、その場合も過払い金請求はできません。借金をすでに完済している方は、早めに専門家へ相談すべきでしょう。

2、面倒ごとは全部おまかせ! 専門家に依頼するメリット

自分が過払い金の対象であるかを確認する方法はいろいろあります。さまざまな法律事務所や司法書士事務所のホームページで、「自分が何年取引していた」「利率は何%」といった簡単な情報を入力するだけで過払い金を計算してくれるところもあるようです。ただし、これらはあくまで平均値を算出しているにすぎません。
正確な過払い金の総額を確かめるためにはまず、貸金業者に対してこれまで行ったすべての取引履歴を請求する必要があります。業者から開示された履歴を元に利息制限法に沿って計算し直す「引き直し計算」を行うことで、過払い金が発生しているか判明します。

引き直し計算の結果に基づき貸金業者と交渉することになりますが、法律の専門家ではない個人で対応する場合、交渉が難航する可能性も高いでしょう。

そうした難しいやりとりをすべて代行してくれるのが、弁護士や司法書士といった専門家です。専門家に依頼する大きなメリットは、履歴の開示請求から引き直し計算、業者との交渉など、過払い金返還請求のすべてを任せられる点です。
交渉のプロである弁護士や司法書士に任せることで、貸金業者との交渉がスムーズに進み、個人で対応するよりも高い金額を取り戻せる可能性が高くなります。

もうひとつのメリットとしてあげられるのが、あなたが借金を返済中である場合、引き直し計算の結果がわかるまで業者に対して返済をしなくて済むようになる点です。専門家に依頼すると、取引履歴の開示と共に、計算が終わるまでの間は契約者への取り立てを中止するように業者へ通知が出されます。その間は貸金業者から借り主へ借金の返済を請求することが禁じてられているため、専門家に依頼した後は、貸金業者からの厳しい督促に悩むことなく、安心して日常生活を送ることができます。
面倒な手続きを専門家に任せられるだけでもメリットといえますが、借金の返済に追われている方にとっては「安心して暮らせること」も、大きなメリットといえるのではないでしょうか。

3、司法書士と弁護士、どっちに頼むのがいいの?

法律上、過払い金の返還請求を債務者(借り主)の代わりに行える専門家は「弁護士」と「司法書士」だけです。どちらも「法律の専門家」という点では同じですが、実は大きな違いがあります。

司法書士の場合、1社あたりの発生した過払い金の総額が140万円を超えるケースでは、和解交渉や訴訟代理をすることが法律上禁じられています。司法書士に引き直し計算をしてもらったものの、過払い金が140万円を超えることが判明した場合、引き続き和解交渉や訴訟を行うためには、改めて弁護士に依頼する等の対応が必要になります。

一方、弁護士には司法書士のような権限の制限がないので、発生した過払い金の金額を問わず、交渉や訴訟を行うことができます。最初から最後まですべて任せられるというのが弁護士に依頼するメリットと言えます。

4、弁護士の選ぶポイント

弁護士ならば誰でも良いというわけではありません。弁護士を選ぶにあたって参考にしていただきたい点をまとめてみました。

  1. (1)説明がわかりやすい

    実際に弁護士と面談した際、専門家ではない依頼者に対してわかりやすくかみ砕いて説明してくれることを、弁護士を選ぶ際のひとつの基準にするとよいでしょう。
    専門用語を並べ立てたり、「相談者自身が次にすべきことはなにか、どのようなデメリットがあるのか」という説明がない、あるいは理解できない説明だった場合などは、その弁護士に依頼することは避けた方がよいでしょう。

  2. (2)現状を適宜教えてくれる

    良い弁護士は、依頼後も進展があった場合や、何らかの理由で対応期間が長くなってしまう場合などでも、適宜適切な状況の説明をしてくれます。
    依頼後何ヶ月たっても、あるいはこちらから問い合わせをしても、今どのような状況かを教えてくれない弁護士には注意が必要です。依頼を長期間放置している場合もあるので、そうした素振りが見えて不審に思った場合は、一刻も早く別の弁護士に相談することも検討した方がいいでしょう。

  3. (3)弁護士報酬など金額の説明が明確である

    弁護士や司法書士は、依頼者から相談を受け、受任することになった場合、まず「費用がどれくらいかかるか」という点を説明しなければなりません。たとえば借金の総額が50万円なのに、弁護士費用としてそれ以上の100万円がかかってしまっては本末転倒となってしまうからです。
    最初に費用の説明をしない弁護士は、あとで高額の費用を請求される恐れも考えられるので、費用の確認もあらかじめしっかりしておきましょう。

    弁護士費用の支払いに不安がある場合は、後払いや分割払いに対応している、または成果報酬型の弁護士事務所を探すとよいでしょう。

  4. (4)過払い金請求の実績がある

    過払い金の返還は、貸金業者によって対応が異なります。長期間取引をしていても過払い金が発生しない場合もありますし、裁判を起こさなければ過払い金が返還されないこともあります。貸金業者によっては、交渉する弁護士や司法書士の実績によって対応を変えることもあります。
    経験豊富な弁護士に任せれば、最初の相談の時点で貸金業者の情報や過去の事例などから今後の流れのおおよそが検討でき、手続きや貸金業者との交渉もスムーズに進むでしょう。
    弁護士に頼んでも弁護士費用がかかるばかりで1円も借金が減らなかった、あるいは、あとになって高額な裁判費用が発生したなどのトラブルを回避することができます。

5、まとめ

消費者金融やクレジット会社から長期間お金を借りている場合は過払い金が発生している可能性があり、返還請求することで借金が減る、あるいは過払い金が手元に戻ってくる可能性が高いです。

専門家に依頼すれば、面倒な手続きや交渉はすべて任せることができます。さらに、専門家に依頼したうえで調査を行っている間は借金の返済をせずに済むので、専門家、特に過払い金総額による法律的な制限がない弁護士に依頼するのが確実かつ安心でしょう。

弁護士事務所はいろいろありますが、たとえばご自身が借金をしている、あるいはしていた業者への過払い金請求実績がある弁護士を探せば、依頼はスムーズに進みます。

ベリーベスト法律事務所では約40万件の豊富な相談実績があります。ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスにぜひお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています