庭木が原因で隣家とのトラブルに! 弁護士に相談すべきケースとは
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さいたま市の人口密度は1キロ平方メートルあたり約5989人(平成31年年1月1日現在)で、全国水準から見てもかなり多い部類に入ります。これは、さいたま市が住宅街の多い市街化地域を中心に構成されているためと思われます。
住宅街ではお隣の家との距離が近いことから、さいたま市近辺のような人口密度が高い地域では近隣トラブルが発生するリスクがあるともいえるでしょう。たとえば、隣家の庭木の手入れが十分に行き届いておらず、自分の家の敷地内に被害が発生してしまうこともよくあります。
このような場合、よく考えずに自分だけで対処してしまうと、後で隣人から法律上の責任を追及されてしまうかもしれません。
この記事では、庭木が原因で隣家とのトラブルが発生してしまった場合に、どのように対処すべきかについて、大宮オフィスの弁護士が解説します。まずは法的な留意点を理解して、適切に対応しましょう。
1、隣家の庭木が原因で起こりがちな隣人トラブル
まず、庭木の越境トラブルのパターンとしてよくあるものを見ていきましょう。
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(1)庭木の枝葉が自分の敷地内にはみ出している
隣家の庭木の管理や手入れが行き届いておらず、枝葉が自分の敷地内にはみ出してしまっているケースはしばしば見受けられます。
侵入の程度は、少々枝葉がはみ出しているだけの場合から、建物にぶつかるほどに枝が張り出してしまっている場合までさまざまです。
庭木の枝葉が自分の敷地内に侵入してくると、建物が傷ついてしまったり、日照が制限されてしまったりするなどの被害を受ける可能性があります。 -
(2)庭木の根が自分の敷地内に侵入している
枝葉の侵入と同様、管理・手入れ不足が原因で、庭木の根が自分の敷地内に侵入してしまっているケースもあります。
庭木の根が自分の敷地内に侵入してくると、歩行の邪魔になり、つまずいて転倒し怪我をしてしまう危険性もあります。 -
(3)庭木に害虫が発生し、自分の敷地に悪影響を及ぼす
隣家の庭木に害虫が発生し、それが問題となることも考えられます。
害虫が自分の敷地内に侵入してくると、人体に悪影響を及ぼしたり、自分の敷地内の植物が枯れてしまったりする可能性があります。
2、勝手に枝を切るのはNG! 法的に認められる対処方法とは?
隣家の庭木の枝や根が自分の敷地内に越境してきた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
越境してきて邪魔であるとはいえ、その庭木は隣人の所有物ですので、慎重に対応する必要があります。
法律上定められている対処方法について見ていきましょう。
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(1)まずは隣人に対応を求める
もっとも穏便なのは、隣人に被害を訴えて、枝や根を切除してもらうなどの対応を求めることです。
隣人の所有物である庭木を勝手に切除すると、後々法的なトラブルになってしまう可能性があります。
枝がはみ出してきている場合にはそれを切ってしまいたくなるでしょうが、樹木の種類によっては枝自体や枝ぶり等に高い価値が認められる場合もあります。
また、そもそもはみ出した枝を隣家の住人が勝手に切ることは法律上認められていません。
そのため、まずは隣人と話し合い、庭木がはみ出している状態を解消してもらえるよう交渉しましょう。 -
(2)境界線を超えた枝は、隣人に切除を請求できる
法律上は、隣家の枝が境界線を超えて自分の敷地に侵入してきている場合、隣人に対してその枝を切除するよう請求することができます(民法第233条第1項)。
注意しなければならないのは、あくまでも「隣人に枝を切ってもらうよう求めることができる」のであって、「自分で枝を勝手に切ってよい」というわけではないということです。
隣人と連絡がつかない場合や、切除を求めても対応してくれない場合などには、隣人に対して民事訴訟を提起する必要があります。
民事訴訟において、隣人に枝を切る義務が認められれば、隣人に対して枝の切除を命じる判決が下されることになります。
判決後、もし隣人が自主的に枝を切除しなければ、代替執行(隣人の代わりに枝を切除すること)を行い、隣人に対してかかった費用を請求することが可能です。
なお、枝の切除請求が認められるためには、単に枝が境界を越えているだけではなく、越境により自分の土地に何らかの実害が生じるおそれがあることを必要とする裁判例があります(新潟地判昭和39年12月22日)。
そのため、わずかに枝が越境しているだけで被害が生じるおそれが少ないケースでは、切除請求が認められない可能性があることに注意しましょう。 -
(3)境界線を超えた根は、自分で切り取ることができる
一方、根が境界線を超えて自分の敷地に侵入してきている場合は、自分でその根を切り取ることができます(民法第233条第2項)。
ただし、隣家の庭木の根を自分で切り取る際には、以下の2点を慎重に分析する必要があります。- 自分の敷地等がどの程度の被害を受けているか
- 根を切ることで隣人にどの程度の損害が発生するか
たとえば、自分の敷地が大して被害を受けていないのに、根を自分で切り取った結果、隣家の庭木が枯れてしまったとしましょう。
この場合、民法第233条第2項の条文上は、侵入してきた根を切り取ることが認められています。しかし、そうであるからといってすべての場合に切除が許されるわけではありません。自分の土地が受けている被害と、根の切除により隣人が被る損害のバランスが取れていない場合には、権利濫用(民法第1条第3項)と判断されてしまう可能性があります。
権利濫用と判断されると、隣人からの損害賠償請求が認められる可能性がありますので、十分に注意しましょう。その意味でもまずは隣人と交渉することが重要です。
3、隣人に損害賠償を請求できる場合・できない場合
隣家の庭木の一部が自分の敷地に侵入している場合には、不法行為(民法第709条)に基づく損害賠償を請求することができる場合があります。
どのような場合に損害賠償を請求することができるのかを見ていきましょう。
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(1)自分の土地や建物などに実害が生じていれば損害賠償を請求可能
不法行為に基づく損害賠償を請求するためには、実際に損害を被っていることが必要です。
たとえば、以下のような場合には損害賠償が認められる可能性があります。- 枝がぶつかって建物の屋根や窓ガラスなどが傷ついた場合
- 枝や根が邪魔で土地や建物の利用が妨げられた場合
- 枝葉が大きく張り出したことにより日照が制限された場合
- 害虫によって人体に悪影響が生じたり、植物が枯れたりした場合
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(2)軽微な越境では損害賠償請求は難しい
一方、実際に損害が生じているとまではいえない場合には、損害賠償請求をすることは難しいといえます。
たとえば、以下のような場合には、損害賠償が認められる可能性は低いでしょう。- 枝葉や根の越境がほんのわずかな場合
- 越境を受けた場所を普段から実際に使用していなかった場合
- 少量の落ち葉が侵入したにすぎない場合
4、弁護士に依頼したほうがよいケースは?
庭木の侵入による隣人とのトラブルは、対処法を間違えると、損害賠償などの法的なリスクを背負ってしまうことになります。もし問題がややこしくなりそうだと感じた場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
具体的には、以下のような場合には、弁護士に依頼をして問題を解決したほうがよいでしょう。
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(1)隣人との話し合いがうまくいかない場合
近隣トラブルは話し合いで解決することがベストです。しかし、話し合いがうまくいかない場合には、問題を放置するわけにもいきませんので、法律を踏まえて適切に対応する必要があります。
特に庭木に関するトラブルの場合は、自分でどこまでの対処をしてよいのかについて複雑な法律問題が存在します。そのため、弁護士にアドバイスをもらいながら対応するのが賢明でしょう。
また、弁護士に依頼をしておけば、最終的に訴訟に発展した場合にもスムーズに手続きを進めることができます。 -
(2)越境の程度がひどい場合
庭木の枝や根の越境がかなりの程度に及んでしまっている場合、除去の方法や費用などについて隣人と揉める可能性が高くなります。
このような場合には、法律の内容を踏まえて話し合いを有利に進めるため、弁護士のサポートを受けることが非常に有効です。 -
(3)隣人と連絡がつかない場合
隣人と連絡がつかない場合には、話し合いを行うことができませんので、訴訟を提起して問題を解決するほかありません。
訴訟手続きについては、弁護士が専門家としての知識と経験を有しています。訴訟の提起に必要な準備や手続きは複雑な面がありますが、弁護士に任せておけば安心です。
5、まとめ
近所の隣人との関係は、生活に密着していることもあって、非常に繊細な問題です。もしトラブルが発生してしまった場合には、できる限り穏便に解決したいところです。
しかし、もめ事がこじれてしまいそうな場合には、法的なリスクを負ってしまわないように慎重に対応する必要があります。特に庭木の越境に関するトラブルについては、法律である程度ルールが決まっているため、弁護士に相談して対処方法についてのアドバイスを受けることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスでは、近隣トラブルに関する法律相談も多数取り扱っています。近隣トラブルにお困りの際には、ひとりで悩まず、まずは弁護士にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています