テレグラムを使った詐欺とは? 被害にあった場合はどうすればいい?
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令和2年8月、千葉県松戸市で起きた強盗事件で、実行役の男に「テレグラム」というアプリを通じて犯行を指示していた容疑で埼玉県在住の男が逮捕されたという報道がありました。
そのほかにも、「簡単に稼げる」というSNSの投稿をきっかけに相手の指示を受け、テレグラムを通じて連絡したところ「登録料として10万円が必要」と告げられ、支払ったところ連絡が途絶えたなどの特殊詐欺は頻繁に起きているようです。
ではテレグラムを通じて詐欺被害にあってしまった場合は、どのように対処すればいいのでしょうか?ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスの弁護士が詳しくご説明します。
1、テレグラム詐欺とは?
日本ではSNSといえばLINEやTwitter、Instagramが有名ですが、最近は「テレグラム」の利用が広がっています。まずはテレグラムのサービス内容や犯罪に利用される理由をご紹介します。
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(1)テレグラムとは
「テレグラム(Telegram)」とは、無料のコミュニケーションアプリです。
音声通話やチャット、シークレットチャット、ファイルのやりとりなどの機能があり、LINEと似た形式のツールです。
2013年にロシア人によってリリースされましたが、セキュリティーが強固なうえに無料で使えて広告も表示されないため、日本をはじめ世界で利用者が増えています。運営会社によると、全世界の利用者は2020年4月時点で合計約4億人に上ります。
一見して便利なコミュニケーションツールですが、その特徴から詐欺などの犯罪で悪用されています。 -
(2)テレグラムの特徴と犯罪に利用される理由
これまで犯罪組織などではメールやLINE、TwitterのDMなどが連絡手段として使用されてきましたが、それらのやりとりの履歴や内容などはサーバーや端末に残っていました。そのため警察はスマートフォンを調べたり、パソコンからデータを復元したりして、共犯者の洗い出しなどの捜査に活用することができたのです。
ところが、テレグラムを利用すると、時間を設定しておけば、送受信したメッセージやファイルを送信者側の端末からも受信者側の端末からも自動的に消去できてしまうのです。たとえば消去までの時間を「1分」としておけば、犯行の時間や場所など指示したチャットを他者に見られる可能性は低いでしょう。
警察に逮捕されてスマホを調べられても、すでにやりとりの証拠は残っていません。一度消去されてしまえば、警察であっても履歴を復元することは困難といわれています。また、高度な暗号化によりチャットの内容が盗み見られなかったり、スクリーンショットが制限されたりするなど、機密性が高いのも特徴です。
そのため、振り込め詐欺の時間や場所の指示、麻薬の取引場所の連絡、暴力団組員間でのやりとりなどに利用されているのです。
ここまで述べたとおり、テレグラムではやりとりの記録が残りません。したがって、逮捕した容疑者のスマホの記録などを追跡して犯行の全容解明を進めるといったこれまでの捜査手法が難しいといわれています。
つまり犯罪者側にとっては非常に便利な一方、捜査側にとっては非常にやっかいなツールなのです。
2、これって詐欺? 警戒すべきケースとは
テレグラムは犯罪組織内の連絡だけなく、一般人に対する詐欺などでも利用されています。特に次のようなケースは犯罪に巻きこまれるおそれがありますので、十分に警戒してください。
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(1)「闇バイト」「即融資」などのワードには注意
Twitterなどで「即融資」「審査なし」といったワードで検索すると、多数の投稿が出てきます。
新型コロナウイルス感染拡大による経済不況などを背景に、倒産や失業でお金に困っている方もいらっしゃるでしょう。すぐにお金を貸してもらえるなら、と思ってしまうかもしれません。しかし、こういった投稿は振り込め詐欺やヤミ金につながっていることがあります。
また、「闇バイト」「高収入」などのワードについても「5分の作業で10万円」「手軽に稼げる」などという投稿が出てきますが、それらはほとんどが振り込み詐欺の受け子など、違法な仕事の紹介です。
特に若い人は小遣い稼ぎの感覚で手を出してしまう場合がありますが、犯罪行為をすれば当然逮捕される可能性があります。さらに、一度犯罪に手を染めれば、組織から抜け出せなくなるケースは少なくないのです。安易に連絡をしないようにしましょう。 -
(2)SNSからテレグラムに誘導
SNSで見つけた高収入のバイトにひかれて投稿者に連絡をすると、DMで話が進み、その後詳細を伝えるためにテレグラムでの連絡を持ちかけられることがあります。
テレグラムでの連絡を希望するということは、他人には知られたくない、証拠を残したくない話であるということです。
犯罪や違法融資の可能性が高いため、指示には従わないでください。 -
(3)個人情報を要求
テレグラムでのやりとりをしている中で、「バイトに登録するため」「融資の審査に必要」などとして、免許証や保険証を撮影した写真の送信や、住所や氏名などの個人情報の提供を求められることがあります。
こういった個人情報は、要求された金銭を支払わなかったり、違法なバイトを断ろうとしたりした際に「個人情報をバラす」「家に押しかける」などと脅すための道具として利用される可能性があります。
個人情報を求められても、絶対に送ってはいけません。要求された場合はすぐに連絡を絶ちましょう。 -
(4)「登録費用」「入会費」などを請求
SNSからテレグラムに誘導された後、「バイトの登録料」「融資の初期費用」などとして、金銭の支払いを要求されることがあります。
それらは詐欺の可能性が非常に高いでしょう。支払ったとしても、仕事の紹介や融資などの約束が守られる保障はどこにもありません。
また一度その費用を支払うと「追加費用」「手数料」などとして、さらなる支払いを求められることがあります。金銭の支払いを求められた場合は、まず詐欺を疑ってください。
3、詐欺に巻きこまれた場合の対処法
テレグラムでのやりとりで金銭を要求された場合、また要求に応じて振り込んでしまった場合は、すぐに対処する必要があります。
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(1)相手の要求には絶対に応じない
SNSで知り合い、テレグラムでやりとりした相手から金銭を要求されたとしても、絶対に応じてはいけません。
「入会費を支払えばすぐに稼げるようになる」と言われても、支払った途端に相手と連絡がとれなくなる可能性は高いでしょう。
また個人情報を渡してしまい、「10万円支払わなければ家に行く」「詐欺をしたことを会社にバラす」などと脅されている場合でも、要求されている金銭を支払ったからといって情報を削除してもらえる保障はありません。
逆に要求がエスカレートし、追加費用を求められたり犯罪に加担するように強要されたりするかもしれません。
そのような脅しはあくまで支払わせるための文句のひとつです。要求には応じないようにしてください。ただし可能性はゼロではありません。心配な場合には防犯カメラの設置をしたり、不審者が来た場合にはすぐに警察に通報したりしましょう。 -
(2)詐欺にあったらすぐに警察に相談
相手からの金銭の要求に応じてお金を振り込んでしまった場合は、すぐに警察に通報してください。
相手がお金を引き出す前であれば、「振り込め詐欺救済法」に基づき相手の金融機関の口座を凍結すれば、出金を止められる可能性があります。引き出された後でも、口座に残高があれば一部でも返還が期待できます。
逆に時間が経てば経つほど証拠が集めにくくなり、犯人も捕まりにくくなります。詐欺だと気づいたら早期に通報しましょう。
なお、だまされたことは悔しいかもしれませんが、自ら犯人を捜すことは大変危険ですので、絶対にやめましょう。 -
(3)テレグラム詐欺は弁護士に相談
テレグラムで詐欺にあい、相手が警察に捕まったとき、相手から示談を申し入れてくることがあります。その場合は、弁護士に相談しましょう。
振り込め詐欺にあってしまった場合、被害金を取り戻すのは簡単ではありません。ですが口座凍結や犯人逮捕によっては、一部だけでも返還や被害弁償を受けられる可能性があります。
弁護士に対応を依頼しておけば、示談交渉を行う際、あなた自身が相手側と対応する必要はありません。適切な内容で被害額を取り戻すことができる可能性を高められます。
4、まとめ
テレグラムをコミュニケーションツールとして活用すること自体に問題はありません。しかし、犯罪者にとっても便利なツールであることは確かです。
ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスでは、テレグラム詐欺などの被害にあわれた方からのご相談をお受けしております。弁護士はご事情を丁寧にお伺いし、不安な気持ちにしっかりと寄り添い、対応方法をアドバイスします。容疑者が逮捕され被害金の返還が受けられることもありますので、諦めずにまずはご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています