近隣トラブル! どこに相談すべきか弁護士が解説します
- 一般民事
- 近隣トラブル
- 弁護士
平和に暮らしているつもりでも、誰もが遭遇するおそれのあるトラブルのひとつに、近隣トラブルがあります。大宮にも11万7994人、5万7169世帯と非常に多くの方が暮らしていますので(令和元年8月1日時点)、すでに近隣トラブルに巻き込まれ、お困りの方がいらっしゃるかもしれません。
騒音、異臭、ペットなどさまざまなトラブルがありますが、相手方が近隣住民だけあって、どのように対処すればよいのか、非常に頭を悩ませる問題です。近隣トラブルは、どこからが法的に、つまり、迷惑行為をしている相手側に改善対応を要求できる権利が発生する問題となるのでしょうか。また、そのような場合は、自力で解決するしかないのでしょうか。今回は近隣トラブルをテーマに、法的な考え方、相談先、解決までの流れを、大宮オフィスの弁護士が解説します。
1、身近な近隣トラブルの種類
近隣トラブルの種類には、次のようなものがあります。
•騒音
音楽やテレビの音量が大きい、大人数が集まって夜中に騒ぐ、マンションの上階で子どもが走り回る音がするなど
•不法投棄
庭にゴミを投げ込まれる、玄関先に他人の飼い犬がふんをするなど
•異臭、悪臭
ゴミ屋敷、排水管の経年劣化による生活排水の臭い、ベランダで吸うタバコの臭いなど
•土地の境界線
隣の家の庭から樹木が伸びてきている、自宅の敷地内に建物を建築しようとしてくるなど
•ペット
鳴き声、ふん尿、臭いなど
このような近隣トラブルの場合、今後の近所付き合いを考えて長い間我慢してしまい、なかなか問題が解決されないこともあります。
しかし、我慢をしていたら、相手側の行動がますますエスカレートしてしまう場合もありますので、しばらく様子をみて改善されない場合は、早めの対処を考えていきましょう。
2、近隣トラブルにおける受忍限度
同じ地域や建物内で暮らす者同士、多少なりとも迷惑をかけてしまうことはお互いさまです。少しの物音や臭いでいきなり違法となってしまったら、誰も一般的な生活を営むことができなくなってしまいます。
そこで、このようなトラブルの際に、判例上広く採用されている概念があります。それが「受忍限度」です。ここでは、その概念について説明していきます。
-
(1)受忍限度とは
受忍限度とは、一般的に生活する上で、我慢しなくてはいけないとみなされる限度の基準を指します。
この基準を超えると違法行為とみなされ、損害賠償請求(例:慰謝料や治療費など)が認められやすくなります。一方、受忍限度を超えていないのなら、我慢しましょうという基準でもあります。 -
(2)受忍限度の判断材料
受忍限度は個別の事案に応じて、侵害行為の内容、被害の程度、法律上の規制との関係など、さまざまな要素が判断材料となります。
考慮されうる被害者側の要素の例としては、
•不眠症やうつ病などの健康被害が生じた
•対処するための装置購入費用やリフォーム代が発生した
•第三者を介して注意喚起してもらう等、被害防止のための努力をした
等が挙げられます。
一方、加害者側の要素として重要なのは、
•法律や自治体の条例、マンションや地域で定められたルールなどにもとづき、これを逸脱した行為をしているかどうか という点です。
たとえば騒音の場合、環境省で環境基本法にもとづく騒音の基準を定めています。自治体によっては別途基準が設けられている場合もあるでしょう。
ゴミの投げ入れであれば廃棄物処理法という法律もありますし、ペット禁止のマンションで隣人が飼うペットの鳴き声に迷惑しているのならマンションの規約に違反することになります。
このように、加害者側が一般的なルールに反している行動を取っている場合、違法性が認められやすくなります。
3、近隣トラブルの相談窓口
近隣トラブルを相談するには、どのような機関があるのでしょうか。身近なところからご紹介していきます。
-
(1)管理会社や自治会
近隣トラブルは、マンションであれば管理会社や大家、持ち家であれば地域の自治会などへ相談できます。
特に賃貸の場合は、管理会社や大家による迅速な解決が期待できます。自治会の場合は、自分以外の住民が同じように困っている行為であれば、解決に向けて素早く動いてくれる可能性があります。他の住民と協力して相談してみてもよいでしょう。
管理会社や自治会には、具体的には次のような対処を期待することができます。
•マンション内の掲示板に貼り紙をする、回覧板を回すなどして注意喚起する
•加害者本人に近隣から苦情がでている旨を直接伝える
•住民会などで取り上げる
なお、穏便な解決のために相談者の名前は伏せてもらい、加害者に迷惑行為をしている自覚を促すような形で対応をお願いするとよいでしょう。 -
(2)警察
ご自身の家だけ嫌がらせを受けており危険な状況である、実際に何らかの被害が生じているといった場合は警察への相談も視野に入れましょう。
緊急性がない場合は、警察相談用電話「#9110」で相談することもできます。全国どこからでも管轄の警察の相談窓口へつながり、生活の安全や平穏に関わる悩みごとについて相談に乗ってくれます。
警察へ相談する場合、単に被害に遭っていると述べても、具体的な証拠がない限りは一般的なアドバイスに終始してしまい、実際に動いてもらえないケースもあります。被害を証明できれば警察も対処がしやすくなるため、問題となる行為の証拠を集めて相談すると良いでしょう。
証拠収集の方法としては、次のようなものがあります。
•防犯カメラを設置して問題行為の映像を残す
•専門業者に騒音や異臭の数値を測定してもらう
•問題が起きている日付や時間帯などを継続してメモしておく
•探偵を雇い、問題行為の動画や写真を撮影してもらう
これらの証拠は、後日裁判などの法的手段にでることになった場合も同様に重要となりますので、可能な限り集めるようにしてください。 -
(3)弁護士
上記のような行動を取っても問題が解決されない場合や、受けた損害を賠償してほしいといった場合は弁護士へ相談することも有効な方法のひとつです。
弁護士に相談すれば、問題がどのような権利侵害や違法行為にあたるのか、具体的な解決策にはどのような方法があるのかを、法的な観点からアドバイスしてくれます。その上で、交渉の代理人となる、証拠収集の方法をアドバイスするなど、状況に応じた解決方法を提案してくれるでしょう。
弁護士によって法律上何が問題なのかを的確に主張することで、相手方も苦情に対して応じる姿勢をみせる場合があります。警察へ被害届や告訴状を提出する際も、受理されやすくなるでしょう。
なお、裁判で争う場合にも、弁護士に代理人を任せることができます。
4、近隣トラブルの解決の手順
近隣トラブルは将来的なことを考えると、いきなり裁判をするよりは手順を踏んでなるべく穏便に解決したいものです。そこで、大まかな手続きの流れをまとめてみました。
-
(1)相談と話し合い
近隣トラブルは居住地に関わる繊細な問題であることから、身近な第三者に入ってもらい、まずは話し合いによる解決を試みます。証拠があれば具体的に対処しやすくなるため、前述した相談先を活用し、できるだけ穏便な解決を目指しましょう。
-
(2)調停
調停も話し合いによる円満な解決を目指す手続きですが、個別の交渉と異なり、中立の立場である調停委員会が間に入るため、お互い冷静に問題を整理することができます。
裁判と比較しても、- 手続きが簡単
- 短い期間で済む
- 非公開で行われる
など、さまざまなメリットがあります。当事者が合意した内容は調停調書にまとめられ、裁判の判決と同じ効力をもちます。
ただし、あくまでも合意が必要ですので、相手方が調停に応じない、合意にいたらないといった場合には強制力はありません。 -
(3)裁判
話し合いによっても解決しない場合、裁判での決着を検討することになります。特に実害が生じている場合や相手方の迷惑行為が悪質な場合には、受けた損害を適切に賠償してもらうためにも、最終的に検討することになる方法です。
裁判では、権利侵害の立証が必要です。そのため、個人で対応することはなかなか難しいでしょう。裁判を起こす際には、弁護士を立てることをおすすめします。
5、まとめ
今回は近隣トラブルの法的な考え方や相談先、解決までの流れを解説しました。
近隣トラブルは住環境に絡む問題であり、今後の近所付き合いなどもあることから、そう簡単に解決できないことが多いものです。しかし、相談先はたくさんありますので、おひとりで抱え込まず、第三者に相談して、解決することを検討しましょう。
手を尽くしたが問題が解決しない、損害賠償を請求したいといった場合には、法的な手続きを行える弁護士への相談が有効です。近隣トラブルでお困りであれば、ぜひベリーベスト法律事務所 大宮オフィスへご連絡ください。民事事件に対応した経験が豊富な弁護士がお力になります。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています