ゴルフ中に怪我! 誰に損害賠償請求すべきか? 対応方法を弁護士が解説

2019年12月25日
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ゴルフ中に怪我! 誰に損害賠償請求すべきか? 対応方法を弁護士が解説

大宮オフィスがあるさいたま市内は、多数のゴルフ場があることでも知られているエリアであり、多くのプレーヤーがゴルフを楽しんでいます。一方、ゴルフは、硬いボールを高速で飛ばすスポーツであることから、プレー中の痛ましい事故によって大きな怪我を負ってしまった被害者も存在します。

ご自身がゴルフ中に怪我を負ってしまった場合、誰に対してどのような損害賠償を求めることができるのでしょうか。本コラムでは、ゴルフ事故に遭ってしまった方に向けて、ゴルフプレー中の事故による損害賠償責任の考え方や対処法を、事例を踏まえて、大宮オフィスの弁護士が紹介します。

1、ゴルフ事故による損害賠償責任は誰が負う?

ゴルフ事故によって怪我を負ってしまった場合、誰に損害賠償責任を求めることができるのでしょうか。損害賠償請求できる相手や、責任割合について見ていきましょう。

  1. (1)加害者

    一般的に、スポーツにおいては、ルールに則ったプレーをしていた中で生じた怪我について、損害賠償責任を求めることは多くありません。
    しかしながら、ゴルフは、硬球を時速200~250kmもの猛スピードで飛ばすスポーツであることから、その硬球が落ちる場所を完全に予測することができません。そのため、人身に対する一定の危険が避けられないスポーツと考えられています。
    つまり、プレーヤー自身がその危険を認識し、厳重な注意を払った上でプレーをすることが大前提になるスポーツというわけです。
    そのため、プレーヤーには、自身の技量に応じて打球が飛ぶ可能性のある範囲を把握し、周囲に最大限の注意を払うという、高い自己責任が求められることになります。
    したがって、場合によっては、ゴルフ中の事故における加害者の責任は認められます。

  2. (2)被害者

    一方、「被害者の方はゴルフマナーやルールを守ってプレーしていたのか」、「被害者は危険を回避するための措置をとっていたのか」といった点も問題になります。
    たとえば、今まさに球を打とうとしているプレーヤーがいるのに、その前方に立ってしまったり、全く注意を払わなかったりといったこと等があれば、被害者にも過失があったと判断されます。
    被害者にも過失がある場合、その割合に応じて損害賠償額が減額されます。このことを「過失相殺」といいます。ゴルフ事故においては、過失相殺が認められるケースが珍しくないという点も知っておきましょう。

  3. (3)キャディー

    ゴルフ場で同伴するキャディーにも、競技者の安全を保持する義務があります。同伴者の行動や周囲の状況を観察し、ルールやマナー違反等があれば注意しなくてはなりません。
    つまり、ゴルフ事故が起きた場合、キャディーに観察不足や注意義務違反があれば、キャディーに対しても損害賠償を求めることができます。
    なお、キャディーが、基本的なマナーやルールまで注意する必要はないと過信して、十分な観察を怠り、その結果、必要な注意喚起を行わなかったという過失があったゴルフ事故では、打った本人にも責任が認められています。(岡山地方裁判所 平成25年4月5日判決)

  4. (4)ゴルフ場

    ゴルフ場を経営している会社には、従業員であるキャディーに過失が認められる場合、使用者責任を負うことがあります。また、ゴルフ場の設備や構造に危険がある場合には、ゴルフ場の管理責任を問うことができる場合があります。

    たとえば、次のような事項について責任の有無が判断されるでしょう。

    • 構造上隣のホールからボールが飛んでくるおそれはなかったのか
    • 危険があるにもかかわらず、防護柵や植栽で防止措置をとっていなかったのか
    • 過去に同様の事故があったにもかかわらず、対策をとらなかったのか

2、過去のゴルフ事故に関する事例から

被害者が、誰に対してどの程度の責任を求めることができるのかを知るために、過去のゴルフ事故に関する事例を確認してみましょう。

  1. (1)シャンクした球がキャディーの左目を直撃(名古屋地裁平成14年5月17日判決)

    加害者がバンカーから打った球がシャンクし、キャディーの左目を直撃した事例です。
    判決は加害者の注意義務違反を認めつつ、キャディーにもプレー中の加害者から目をそらした過失があるとしました。結果、5割の過失相殺が認められ、加害者に1046万円の支払いが命じられました。

  2. (2)打球が頭部を直撃し後遺症(大阪地裁平成17年2月14日判決)

    加害者の打った球が右曲がりの弧を描いて右前方43メートルほど離れて立っていた被害者の左側頭部を直撃した事例です。被害者は脳挫傷などの治療を要したうえに後遺症をもたらした加害者に対し、治療費や遺失利益、慰謝料など約7700万円を請求しました。 判決は、加害者の前に立っていた被害者にも過失があったとし、加害者に対し6割を過失相殺した約2200万円の支払いを命じています。

  3. (3)練習場の天井で跳ね返った球が直撃(平成29年 和解)

    ゴルフ練習場で加害者が打った球が天井で跳ね返り、隣の被害者の頭部に直撃し怪我を負わせた事例です。加害者のショットに落ち度があり、球が跳ね返ったのは練習場の設備に問題があったとされました。
    男性が80万円、練習場の運営会社が320万円支払うことで和解が成立しました。

3、ゴルフ中の事故に備えて

ゴルフプレー中の事故による損害賠償金は、数千万円もの高額になることが珍しくありません。ゴルフと言えば何となく、"お金持ちや偉い人が好きなスポーツ"というイメージを持っている人もいるとは思いますが、仮にあなたが被害を受けて損害賠償を請求したとしても、このような数千万円もの賠償金を簡単に支払える方ばかりではないでしょう。

ゴルフプレー中の事故に巻き込まれて被害に遭ってしまったとき、どこに相談すべきなのでしょうか。

  1. (1)加害者加入のゴルフ保険

    加害者がゴルフ保険に加入していれば、たとえ過失のため加害者になってしまったとしても保険金が支払われます。この場合、被害者としては、ひとまずは安心して治療に専念することができるでしょう。

    しかし、加害者がゴルフ保険に未加入の場合、被害者は保険金の支払いが受けられません。したがって、被害者は、保険会社ではなく、加害者に直接請求することになります。また、加害者がゴルフ保険に加入していても、保険でカバーできない範囲の損害を請求するケースについても同様です。

  2. (2)自身加入のゴルフ保険

    あなたが被害を受けたものの、加害者から十分な補償がされないときは、ご自身の保険を使うという方法もあります。加害者の過失によって怪我を負ったにもかかわらず、自身の保険を使うことに納得できない方もいるかもしれません。しかしながら、元来、損害保険とは、偶然のリスクによって生じた損害をカバーするという性質のものであると割り切ることで、自身の身を助けられることがあります。それでも、どうしても納得できないという場合には、やはり相手方との直接交渉が必要です。

    なお、火災保険や自動車保険に加入している方で、特約で個人賠償責任補償をつけている場合、これらの保険がゴルフ事故にも適用される可能性があります。このように、「ゴルフ保険」という名称でなくても補償されることがありますので、確認してみてください。

  3. (3)ゴルフ場加入の保険

    ゴルフ場が保険に加入しているか否かについて、ゴルフ場に確認してみることもひとつの方法です。

  4. (4)弁護士に依頼する

    保険でカバーできればいいのですが、満足のいく結果にならないことも多いでしょう。しかし、加害者やゴルフ場などに損害賠償を請求する場合、自身で直接相手の連絡先を聞き、交渉することは非常に困難です。時間と労力がかかる上、怪我や仕事などによって満足に動けないことも考えられます。

    このようなとき、加害者や保険会社との交渉は弁護士に一任することが好ましいといえます。弁護士に交渉を任せることで、以下のようなメリットが考えられます。

    ●個人で交渉するよりも高い額の補償金を受け取ることができる
    加害者が保険に加入している場合でも、保険会社の提示額が低く、思うような補償を受けられないことがあります。保険会社としてはできるだけ賠償金額を安く抑えたいと考えるため、裁判になった場合の相場よりも低く提示してくることが珍しくないからです。
    弁護士を介して相手の保険会社と交渉することで、当初の提案よりも高い額の補償が受けられることが多くなります。

    ●泣き寝入りを回避できる
    加害者が保険未加入の場合や、加入保険の範囲を超えた損害の場合にも、加害者との示談交渉によって適切な額の損害賠償金を請求できます。
    自分の力で交渉しようと思っても、被害者側の過失を主張され、思うように交渉が進まないケースは多々あります。交渉や損害賠償請求に対応した知見が豊富な弁護士に頼むことで、泣き寝入りすることなく責任を追及できます。

    ●加害者が示談に応じない場合は訴訟も起こせる
    万が一加害者が示談に応じない場合や、示談金の不払いが起きた場合、訴訟を起こすという方法があります。しかし、煩雑な手続きが必要な訴訟を、一般の方が行うことは非常に骨の折れることです。 弁護士に代理人となってもらうことで、時間や手間を大幅に削減することができます。

4、まとめ

今回、ゴルフ事故による損害賠償責任の考え方や怪我をした場合の対処法について解説しました。ご自身が細心の注意を払っていても、他人の過失によって怪我を負ってしまうリスクはゼロではありません。治療費はもちろん、働けなくなってしまった場合の逸失利益なども請求対象となります。怪我をした場合は、損害賠償請求についても検討しましょう。

ゴルフ事故のケースでは、責任の所在や過失割合など、一般の方には判断が難しい面が多数あります。損害賠償請求に対応した知見が豊富な弁護士に、速やかに相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所大宮オフィスでも、民事事件の経験豊富な弁護士が随時相談をお受けします。ゴルフ中に怪我を負ってしまいお困りの方は、まずはご一報ください。

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