模倣品を扱うとき注意すべき法律と処罰を受ける可能性がある行為とは
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令和3年4月、さいたま市在住の男が偽のブランド品を販売した疑いで逮捕されたという報道がありました。
本物と偽り、購入者をだまして模倣品(偽造品)を販売した場合や、本物の商標を利用して模倣品を販売した場合には、詐欺罪や知的財産権の侵害などの罪に問われてしまうおそれがあります。
本コラムでは、模倣品の販売等について成立し得る犯罪や量刑などについて、ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスの弁護士が解説します。
1、模倣品を販売した場合に成立する罪と罰則
模倣品を本物であるかのように見せかけて販売することは、購入者をだます行為であるのに加えて、本物を製造・販売する業者の利益をかすめ取る行為でもあります。
このような行為を防ぐために、刑法・商標法・不正競争防止法では、模倣品の販売を犯罪として規制しています。
まずは、模倣品の販売について成立し得る犯罪の内容と罰則を見ていきましょう。
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(1)詐欺罪
人を欺いて財物を交付させた者は、「詐欺罪」によって処罰されます(刑法第246条第1項)。
詐欺罪の成立要件は、以下のとおりです。① 欺罔行為(他人をだます行為)
模倣品を本物であるかのように偽って販売する行為自体が「欺罔(ぎもう)行為」に当たります。明確に「本物です」とうたっていなかったとしても、本物としか思えないような表示・価格等で販売していた場合には、詐欺罪の欺罔行為が認定される可能性が高いです。
② 欺罔行為によって相手が錯誤に陥ったこと
欺罔行為にだまされて、模倣品を本物であると勘違いした場合、「錯誤に陥った」という要件を満たします。なお、欺罔行為を受けた相手が錯誤に陥ることなく、模倣品であることを承知のうえでそれを購入した場合には、詐欺罪は未遂として罪に問われる可能性があります。
③ 錯誤に基づき、相手が財物を交付したこと(処分行為)
模倣品であると勘違いした状態の相手から、財物の交付を受けた場合に要件を満たします。
④ 財物の移転
欺罔行為・錯誤・交付(処分行為)による一連の流れから財物が移転した時点で詐欺罪が既遂となります。
詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。
取引金額が高額の場合には、初犯でも執行猶予が付かない実刑判決が言い渡される可能性があるので、十分注意しましょう。 -
(2)商標法違反
商標法では、他人の商標権または専用使用権を侵害する行為を処罰する旨が規定されています(同法第78条、第78条の2)。
商標権は設定登録によって発生し(同法第18条第1項)、商標権者は、設定登録時に指定された商品またはサービス(指定商品・指定役務)について、登録商標を使用する権利を専有します(同法第25条)。
また、商標権者から専用使用権の設定を受けた者は、商標権者が有していた登録商標の使用権を代わりに専有することになります(同法第30条第2項)。
したがって、指定商品・指定役務について、登録商標を勝手に使用する行為は、商標権や専用使用権の侵害に該当します。
たとえば、本物の商標が登録されており、その登録商標を模倣品の販売時に勝手に使った場合、商標権・専用使用権の侵害により罰せられる可能性があります。詐欺罪とは異なり、仮に購入者が模倣品であることを見抜いていたとしても成立するのが、商標法違反の特徴です。
また、登録商標そのものでなくとも、指定商品・指定役務について、登録商標に類似する商標を使用する行為についても、商標権侵害・専用使用権侵害であるとみなされます(同法第37条)。したがって、本物とよく似た名前で模倣品を販売する行為も、やはり商標権や専用使用権の侵害に当たる可能性があるので注意が必要です。
商標権侵害・専用使用権侵害の法定刑は、以下のとおりです。登録商標そのものを使用した場合 10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、または併科 登録商標と類似した商標を使用した場合 5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、または併科 -
(3)不正競争防止法違反
不正競争防止法では、商品の表示や形態の模倣等について、以下の行為を「不正競争」として禁止しています(同法第2条第1項第1号~第3号)。
- 他人の商品等表示として、需要者の間に広く認識されているものと同一または類似の商品等表示の使用等により、他人の商品や営業と混同を生じさせる行為
- 他人の商品等表示を自分の商品等表示として使用する行為等
- 他人の商品の形態を模倣した商品の譲渡等
本物の商品名などが商標登録されていなくても、上記のいずれかの要件を満たす場合には、不正競争防止法違反で処罰されるおそれがあるので注意が必要です。
上記の不正競争防止法違反に係る法定刑は、「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、または併科」とされています(同法第21条第2項第1号~第3号)。
2、模倣品を輸入しただけで犯罪が成立することも
模倣品を輸入しただけでも、不正競争防止法違反などが成立する可能性があるので注意が必要です。
具体的には、本物の形態を模倣した商品を、それと知りながら輸入する行為は、「不正競争」として罰せられるおそれがあります。
3、模倣品の販売で逮捕された場合に起こり得ること
模倣品を販売した場合、詐欺罪・商標法違反・不正競争防止法違反の犯罪が成立し、警察に逮捕される可能性があります。
もし警察に逮捕されてしまうと、以下のような事態が発生してしまうおそれがあるので要注意です。
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(1)長期間にわたり身柄を拘束される可能性がある
犯罪の疑いで逮捕されると、その後最大23日間の身柄拘束(逮捕・起訴前勾留)がなされる可能性があります。
検察官が起訴すると、起訴後勾留に移行し、さらに2か月間身柄拘束が続きます(刑事訴訟法第60条第2項)。起訴後勾留は更新が認められるため、身柄拘束が長期間にわたってしまうケースも少なくありません。
身柄拘束が長期にわたると、家族とも長い間離れ離れになり、大きな不安を与えることになってしまいます。 -
(2)職場から解雇などの処分をされる危険がある
捜査機関に身柄を拘束されている期間は、職場に行くことができないので、勤務することができない状態となります。
数日程度であれば、何らかの理由を付けて会社を休むこともできるでしょう。しかし、身柄拘束が数週間・数か月にも及んでくると、さすがに会社に対して理由を言わないわけにはいきません。
無実である場合には、会社に十分説明すれば納得してもらえるかもしれませんが、罪を犯したことが事実である場合には、懲戒解雇等の処分を受けるおそれがあります。 -
(3)損害賠償を請求されるおそれがある
模倣品の販売等が商標法違反や不正競争防止法違反に当たる場合、本物を製造・販売する業者や購入者から、損害賠償請求を受けるおそれがあります。
特に、模倣品を大量に仕入れ、大量に売りさばいているようなケースにおいて、本物を製造・販売する業者から損害賠償請求を受けた場合、賠償額は巨額に及ぶ可能性が高いでしょう。
4、模倣品の取り扱いについて犯罪に問われたら弁護士に相談を
もし模造品の販売等について、捜査機関に逮捕されたり、取り調べの要請があったりした場合には、速やかに弁護士へご相談ください。
これまで解説したように、模造品の販売等については、詐欺罪・商標法違反・不正競争防止法違反の犯罪が成立するおそれがあります。つまり、捜査機関によって逮捕されてしまう可能性もあるということです。
もし捜査機関により逮捕されてしまうと、長期間にわたる身柄拘束によって、家庭崩壊や職場からの解雇といった重大な事態につながりかねません。そのため、早期に身柄拘束を解くため、弁護士に弁護活動を依頼することをおすすめします。
また、本物を製造・販売する業者や購入者からの損害賠償請求についても、弁護士に対応を委任することが可能です。賠償は免れないとしても、法的な観点から賠償額を適正な水準に抑えるためにサポートしますので、損害賠償請求を受けた場合には、速やかに弁護士までご相談ください。
5、まとめ
模倣品の輸入・販売等については、詐欺罪・商標法違反・不正競争防止法違反などといった、各種の犯罪が成立する可能性があります。また、本物を製造・販売する業者や購入者から、損害賠償請求を受けるおそれもありますので、もし模倣品の輸入・販売に手を染めてしまった場合には、速やかに弁護士へご相談ください。
ベリーベスト法律事務所では、模倣品の輸入・販売に関する問題を含めて、リーガルアドバイスを随時ご提供しております。ビジネスなどでトラブルが発生してしまった方は、お早めにベリーベスト法律事務所へご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています