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従業員にタイムカードを改ざんされた! 法的な対応をする際の注意点

2020年12月14日
  • 労働問題
  • タイムカード
  • 改ざん
従業員にタイムカードを改ざんされた! 法的な対応をする際の注意点

令和2年3月、埼玉県警大宮署は、会社の口座から現金を着服した女性を業務上横領罪で逮捕しました。従業員が会社の財産を横領することはもちろん、タイムカードを改ざんして余分に残業代を受け取るなどの行為は、会社にとって大きなダメージを与えかねません。

では、従業員が残業代を多く受け取るためにタイムカードを改ざんしていた場合、どのような罪に問えるのでしょうか。また社内でどのような処分を言い渡すことができるのでしょうか。本コラムでは、大宮オフィスの弁護士が、従業員がタイムカードを改ざんしていた場合に問える罪や雇用者としてできる法的な対処法、不正を起こさないための体制作りについて解説します。

1、従業員がタイムカードを改ざんしていた場合に問える罪

従業員が、タイムカードを改ざんしていた場合は、以下のいずれかの犯罪が成立する可能性があります。

  1. (1)詐欺罪

    従業員がタイムカードを偽造して労働時間を水増し、残業代を多く受け取っていた場合、または受け取ろうとしていた場合は、詐欺罪が成立する可能性があります。
    詐欺罪で有罪になった場合の刑罰は、「10年以下の懲役」(刑法第246条)です。詐欺罪には罰金刑がなく、起訴され有罪となったときには懲役刑が言い渡されることになります。

  2. (2)私文書偽造罪

    従業員が、紙のタイムカードを偽造していた場合、「私文書偽造罪」が成立する可能性があります。私文書偽造罪は刑法第159条3項に規定されている犯罪で、刑罰は1年以下の懲役または10万円以下の罰金です。

  3. (3)電磁的記録不正作出罪

    ウェブ上やパソコン内のデータを編集してタイムカードを偽造していた場合は、電磁的記録不正作出罪が成立するおそれがあります。この罪で有罪になった場合の刑罰は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金です(刑法第161条の2第1項)。

2、上司の指示で改ざんが行われていた場合に企業が被るリスクとは?

昨今では、長時間労働の解消や、残業代の削減のため企業側が残業をしないようにと指示を出すケースが増えています。これ自体は労働環境の改善のためにも好ましいことなのですが、その指示を現場の責任者や上司が過剰に受け取り、「タイムカードの改ざん」を従業員に指示するケースがあとを絶ちません。

この場合、従業員にはタイムカードを改ざんした責任を問うことができないばかりか、企業側が「悪質な残業代不払い」、「長時間労働の強制」を行ったこととされる可能性があります。当該従業員から、多額の残業代の支払いを求められるだけでなく、労働基準監督署への通報も想定され、企業は経済的にも社会的にも甚大な悪影響を受けることになるのです。

従業員が、残業代請求の訴訟を提起した場合は、残業代に加えて、付加金と呼ばれる未払い残業代と同額の金銭や、遅延金の支払いが命じられる可能性があります。経済的な影響は少なくありません。さらに、違法な長時間労働として、労働基準監督署から指導を受けて社名を公表されれば、社会的な信用を失うことになり、売り上げの低下や顧客の流出に直結します。

当該上司や責任者の一存で指示をしたことであっても、雇用者側の責任を免れることは困難でしょう。巧妙に残業をしていたことを隠していない限りは、企業が適切に経営されていれば、タイムカードの勤務時間と実際の勤務時間の差異に気づくことは容易であると判断される可能性が高いからです。

3、不正発覚時の正しい対処法

従業員による、残業代(賃金)を増額するためのタイムカードの改ざんが発覚した場合は、当該従業員に対して以下の手続き、処分や法的手続きを検討します。

  1. (1)タイムカード改ざんの証拠を確保すること

    まずは、当該従業員が確実にタイムカードの改ざんをしている証拠を確保します。企業側が、従業員のタイムカード改ざんを主張する場合、従業員側は、「会社が残業代を支払いたくなりからウソをついている」と主張する可能性が大いにあります。したがって、まずはタイムカードの改ざんを客観的に立証できる証拠を当該従業員に気づかれないように集めておきましょう。

    具体的には以下のような証拠が有効です。

    • オフィスの入退室記録
    • オフィスや出入り口の防犯カメラの映像
    • パソコンのログ
    • 機械の稼働記録


    これらの証拠を1日分だけでなく、できるだけ長期間集めます。とはいえ、不正を行っている従業員を長期間野放しにはしたくありませんので、1か月程度にとどめることも検討してください。すでに、入退室記録や防犯カメラ等で過去の改ざんを証明できる場合は、証拠集めに時間をかける必要はありません。

  2. (2)本人に事実を告げて不正に受け取った残業代の返金を求める

    証拠を確保した上で、当該従業員に過剰に受け取っている残業代の返金を求めます。この時点では、警察への通報は行わず社内で問題を解決するのが得策です。従業員の不正とはいえ、対外的には会社の管理体制が問われ信用が低下するリスクがあるためです。

    従業員に事実を告げる際は、ボイスレコーダー等でやりとりを録音しておきましょう。あとから、従業員に脅迫や強要などの行為があったと主張されないように細心の注意を払います。

    残業代の不正受給が長期間にわたっている場合は、不正に受け取った金額が多すぎて、一括で返金できないケースもあります。また、従業員本人に支払い能力がない場合もありますので、その場合は分割での返金にも応じるようにしましょう。

    当該従業員に、支払う意思がまったくない場合は、損害賠償請求訴訟を提起するなどの法的措置も検討します。

  3. (3)懲戒処分を検討する

    賃金の返金を求めるだけでなく、当該従業員の懲戒処分も検討します。タイムカードを改ざんした場合の懲戒処分があらかじめ、就業規則で定められている場合はその処分に従います。

    懲戒処分には以下の5種類があり、もっとも重い処分が懲戒解雇です。

    • けん責
    • 減給
    • 出勤停止
    • 諭旨解雇
    • 懲戒解雇


    「タイムカードの改ざんが長期間にわたっており不正に受け取った残業代が高額になる場合」など、タイムカードの改ざんが、悪質であった場合は、懲戒解雇も視野に入れます。ただし、懲戒解雇は、非常に重い処分に該当します。たとえ従業員によるタイムカードの改ざんがあったとしても、懲戒解雇は不当であると訴えられるリスクがあるのです。

    懲戒処分を行う場合は、以下の4つの原則に基づいて行うべきとされています。

    • 合理性、相当性の原則
    • 平等適用の原則
    • 二重処分の禁止の原則
    • 適正手続きの原則


    4つの原則に基づいて当該従業員を解雇する場合であっても、そもそも就業規則に解雇事由を設定しておく必要があります。その上で、解雇に該当するかどうかを慎重に判断しなければなりません。不正を働いていた従業員の対応によりさらなるデメリットを被らないようにするためにも、事前に弁護士に相談をしておきましょう。

    解雇が難しい場合でも、「退職勧奨」を行うことで退職を促すことができます。ただし、行き過ぎた退職勧奨は違法になるおそれがありますのでご注意ください。退職をしなければ、給与を下げる、左遷するなど、脅されたと受け取られるような内容を伝えることは、違法な退職勧奨になりえ、慰謝料を請求される可能性があります。

  4. (4)刑事告訴も検討する

    従業員に反省の色がなく、不正に受け取った残業代を返金する姿勢がみられない場合は、刑事告訴も検討します。ただし、刑事告訴をした場合は、従業員による違法行為が外部に知られるリスクがありますので、慎重にご検討ください。

4、不正を生じさせないための企業のリスク管理体制とは

従業員によるタイムカードの改ざんは当該従業員だけの問題にとどまりません。タイムカードを改ざんできる企業の組織や体制にも問題があるといえます。したがって、不正の発覚を機に管理体制の再構築を行うことを強くおすすめします。

  1. (1)従業員への研修の実施

    タイムカードの不正を行った従業員だけでなく、すべての従業員に対して、タイムカードを正しく打刻することを周知します。大きな不正ではなくても、「業務終了後10分経過したらタイムカードを打刻する」といった小さな不正の芽は少なくありません。

    タイムカードを実際の業務時間よりも早く打刻すること、遅く打刻することはそれぞれ問題であることを従業員全員に伝えて、徹底を促します。

  2. (2)就業規則への禁止事項と懲戒処分の明記

    タイムカードの打刻時間を改ざんすることや、正しくない勤務時間で打刻することを、就業規則で禁止するとともにそれに対する懲戒処分も明記しておきます。懲戒処分を明記する場合は、その処分が妥当かどうかをあらかじめ弁護士に相談しておくとよいでしょう。

  3. (3)不正不可能な勤怠管理システムの導入

    不正を防ぐためには、ソフト面だけでなくハード面での対策も必要です。もっとも効果的なのは、改ざんが不可能な勤怠管理システムを導入することです。従業員があとから改ざんできないような電子打刻システムにすることや、出社、退社の際に、顔認証、指紋認証システムなどで記録できるシステムがあります。

    同時に、オフィス内やオフィスの入り口に監視カメラを導入することで、実勤務時間と打刻時間に大きな差異がないかどうかを確認することができます。会社側として可能な対応はしっかり行っておくことも大切です。

5、まとめ

従業員によるタイムカードの改ざんは、詐欺罪や私文書偽造罪に該当する可能性がある犯罪です。発覚した場合は、証拠を確保した上で従業員に支払いすぎた残業代の返金を求めましょう。また、不正が悪質であった場合は、懲戒解雇も検討します。懲戒解雇を行うためには、複数の条件を満たしている必要がありますので事前に弁護士にご相談ください。

また、再び不正を発生させないための環境作りも重要です。ベリーベスト法律事務所 大宮オフィスでは、従業員によるタイムカードの改ざんなどの不正に関する相談を受け付けておりますので、まずはご相談ください。状況に応じて、今やるべきことと将来の不正防止に向けてやるべきことをアドバイスします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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