亡き父の自筆証書遺言を発見! 埼玉県はどこで検認? やってはいけない行為とは?
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高齢化が進む、日本社会。亡くなられた方の相続に関する相談やトラブルも増加しています。
司法統計によると、平成29年度中にさいたま地方裁判所で取り扱われた家事審判や調停のうち、「遺言書の検認」の数は889件でした。
遺言書というものについて何となく理解しているつもりでも、いざ実際に手続きをしなければならなくなったときどうすべきかわからないという方は多いのではないでしょうか?
遺言書は亡くなった方の生前の意思を尊重して相続手続きを行うための制度ですが、いくつか厳格なルールが存在しています。
このルールに沿って正しい方法で手続きを行わないと、無効になってしまうおそれがあるのです。
そこで今回は、遺言書の種類や扱いなど基礎的な知識について大宮オフィスの弁護士が解説します。ご家族が残された遺言書の扱いだけでなく、ご自身の遺言書作成についても、ご参考にしていただければ幸いです。
1、自筆証書遺言は勝手に開封してはだめ!
もし亡くなったご家族が残した封印されている遺言を自宅で発見したら、絶対に勝手に開封してはいけません。封印とは、封筒に入れられた上で、封に押印があることです。
亡くなった方(遺言者)が手書きした遺言書のことを、「自筆証書遺言」と呼びます。
この「自筆証書遺言」が封印されていた場合、家族などが勝手に開封すると5万円以下の過料を科されるおそれがあります。これは、遺言書を勝手にすり替えて相続争いが発生することを防ぐための決まりです。
ただし、相続人の一人がうっかり開封してしまった場合でも、過料が科される可能性があるのみで、相続権まで失ってしまうということはありません。
しかし、遺言書を勝手に開封しただけでなく改ざん・破棄・隠匿までしてしまうとなると、極めて悪質な行為であるため、相続権を失うことになる可能性があります。
民法1004条には「遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする」と定められており、封印された遺言は封印されたままの状態で管轄の家庭裁判所に速やかに提出し検認を受けなければなりません。
この「検認」とは、遺言書の存在を相続人に知らせて、その現状を明確にするための手続きです。つまり、検認は遺言の偽造や破棄を防止することを目的とするものであり、遺言の有効性まで保証するものではありませんので注意が必要です。したがって、検認後でも、遺言書の効力について裁判で争われる可能性はあります。
2、遺言書には主に3つの種類がある
一口に遺言書と言っても、さまざまな種類のものがあります。
遺言書は普通方式と特別方式(危急時や隔絶地にいる場合など)の大きく2つに分類され、ここでは一般的に広く用いられる普通方式についてのみ解説します。
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(1)自筆証書遺言
遺言者が手書きするタイプの遺言書です。お金がかからず簡単に作成できるというメリットがあります。
これまでは「遺言者が自分で保管しなければならず、紛失・偽造・破棄などのリスクが高い」ことがデメリットと考えられていましたが、法改正により、2020年7月10日からは法務局で保管してもらえるようになりました。
また、以下の要件をきちんと満たしていなければ無効になってしまうことにも注意が必要です。- ①遺言の内容となる全文、②日付、③氏名を手書き(「自書」)している(法改正により、財産目録についてはパソコンで作成可能。)
- ④捺印があること
まず①の「遺言の内容となる全文を手書きしている」ですが、病気や加齢による手の震えなどでうまく手書きできない遺言者に第三者が手を添えて手伝った場合、原則として「自書」とは認められないため無効になるおそれがあります。
「自筆証書遺言の添え手」についての有名な判例(最高裁判所昭和58年(オ)第733号昭和62年10月8日第1小法廷判決)では、「遺言者が証書作成時に自書能力を有し、他人の添え手が遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、又は支えを貸したにすぎないものであり、かつ、添え手をした他人の意思が運筆に介入した形跡のないことが筆跡のうえで判定できることを要する」としています。
ただし、2019年1月13日の改正法施行後は、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全部または一部の目録を添付する場合には、その目録のみパソコン・ワープロで作成可能となりました。ただし、その目録の毎ページに署名捺印する必要がありますので注意が必要です。
ちなみに、音声や動画による遺言は無効とされています。
②の日付については、「○歳の誕生日」など年月日が特定できれば構いません。しかし、「○年○月吉日」のような書き方は、日付がピンポイントで特定できないため、無効となります。
③の氏名、④押印については、遺言者が誰なのか特定できればペンネームでも問題なく、拇印(親指の指紋)も有効とされています。 -
(2)公正証書遺言
公正証書遺言とは、全国に約300カ所ある公証役場において公証人に作成してもらう遺言です。相続財産の価額に比例して手数料がかかりますが、国の機関である公証役場で遺言書の原本が保管されるため紛失・偽造・隠匿などの心配がありません。法律の専門家である公証人が、遺言書に法律的な不備がないかチェックしてくれることもメリットです。
手続きがやや煩雑であることがデメリットといえますが、遺言の内容を口頭で述べることさえできれば良いので、病気などにより自筆できない方でも作成できます。遺言者が入院している場合は、公証人に出張してもらうことも可能ですが、その分費用は高額になります。
公正証書遺言を作成するためには、まず遺言の下書きをあらかじめ作成するなどした上で公証人と打ち合わせをする必要があります。実際の作成日は、2名以上の証人を伴って公証役場に出向き、公証人と証人の目の前で遺言の内容を口述します。その内容をもとに、公証人が遺言書を作成するという流れになります。原本は公証役場で保管されます。
未成年者、推定相続人とその配偶者・直系血族などは証人にはなれないので、注意が必要です。
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(3)秘密証書遺言
秘密証書遺言は、自筆証書遺言と公正証書遺言の中間的なものです。公正証書遺言と異なり、亡くなるまで遺言の内容を秘密にできるのがメリットですが、公証人の手数料がかかる割に自宅で保管しなければならず紛失リスクも高いので、実務ではあまり使用されることはないようです。
秘密証書遺言に関しては、その内容の作成は自筆でなくとも問題なく、パソコン・ワープロでも作成できます。ただし、遺言者による署名捺印は必要です。その上で遺言者がその証書を封筒に入れて封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印します。
次に、封印した遺言書を持って2名以上の証人とともに公証役場に行き、遺言者が公証人1人および証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨ならびにその筆者の氏名および住所を申述します。公証人が、その証書を提出した日付および遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者および証人とともに署名捺印し、手続き完了となります。
公正証書遺言とは異なり、秘密証書遺言は自分で保管しなければなりません。公証役場で保管してもらえる訳ではないことに注意が必要です。
また、秘密証書遺言としては無効でも、手書きで作成されており自筆証書遺言としての要件を満たしていれば有効になることがあります。
3、自筆証書遺言が見つかったらすべきこと
もし亡くなった家族が残した自筆証書遺言を発見したら、具体的にどんな手続きをすればよいのでしょうか。順番に説明します。
なお、2020年7月10日からは法務局内の遺言書保管所で保管できるようになりますが、その場合は検認規定(民法第1004条第1項)の適用対象外となります。
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(1)遺言者の最後の居住地を管轄する家庭裁判所に検認申し立て
前述した通り、封筒に入れて封印されている自筆証書遺言は、絶対に勝手に開封してはいけません。封印された状態のまま、速やかに管轄の家庭裁判所に検認の申し立てをしましょう。 遺言書を発見したにもかかわらず検認の申し立てを怠る、家裁による検認なしで勝手に遺言を執行するなどした場合には、過料を科されるおそれがあります。
亡くなられたご家族の最後の住所地が当事務所・大宮オフィスのありますさいたま市や近隣にお住まいだった場合は、「さいたま家庭裁判所」が管轄となります。 家庭裁判所への検認申立てに必要な書類は、以下の通りです。
- 遺言書の検認申立書(家庭裁判所で入手、または家庭裁判所ホームページでダウンロード)
- 遺言者の戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺言書1通につき収入印紙800円
- 連絡用切手
検認申立てと同時に、他の相続人全員に遺言書を発見したことを報告しましょう。相続人に遺言書の存在を知らせず一人で手続きを進めてしまうと、後々あらぬ疑いをかけられるなどトラブルに発展するおそれがあるからです。
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(2)家庭裁判所で遺言書の検認をおこなう
検認申立書や戸籍謄本等に不備がなければ、家庭裁判所から遺言書検認日についての案内が相続人全員の住所に届きます。申立てから約1ヶ月後が目安とされています。
検認日当日は、申立人が持参した遺言を家庭裁判所で開封し、検認を行います。申立人以外の相続人がいなくとも、検認手続は行われます。 -
(3)相続手続きの開始
検認手続きが無事完了すると、遺言書は検認証明書が発行されることになります。その後は、遺言執行者が選任されている場合には、遺言執行者が財産目録の作成や財産の名義変更などの相続手続きを行っていきます。
遺言執行者は遺言書の中で指定されているケースが多いですが、指定されていなかったりすでに死亡していたりする場合には、上記と同じ家庭裁判所に申し立てて選任してもらうことができます。
4、公正証書遺言の検認方法
公証人立ち会いのもと作成され公証役場で厳重に保管されているため、公正証書遺言については検認の必要がありません。
5、秘密証書遺言の検認方法
自筆証書遺言と同じく、管轄の家庭裁判所で検認手続きを受けることが必要です。2020年7月10日以降は法務局内の遺言書保管所で保管してもらうことができますが、その場合は検認を受ける必要がなくなります。
6、遺言書の作成を弁護士に依頼するメリット
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(1)法律的な要件を満たした遺言書の作成を依頼できる
前述の通り、自筆証書遺言書の作成には厳格なルールがあります。日付や署名捺印、遺言の文章の書き方はもちろん、加除訂正の方法も法律で定められています。
そのような細かいルールをすべて守りつつ、自力で遺言書を作成するのは大変かもしれません。無効になってしまうのが心配な方は、弁護士に相談してみましょう。
公正証書遺言についても、証人の確保や必要書類の準備、遺言内容についてのアドバイスなどを弁護士が行ってくれるため、自力で手続きを進めるよりもかなり負担が軽減されるでしょう。 -
(2)相続人同士の関係に配慮しながら相続トラブルを避ける助言をくれる
遺言書による相続は法定相続分とは異なる割合になることもあるため、相続争いなどのトラブルが生じるおそれがあります。特に家族関係が複雑な場合、莫大な遺産がある場合などは骨肉の争いに発展することにもなりかねません。相続関係の経験が豊富な弁護士に相談することで、事前に相続トラブルを防ぐことができるかもしれません。
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(3)そのまま遺言執行者にも選任できる
遺言書の作成や相続についての相談に乗ってもらった弁護士に、そのまま遺言執行者になってもらうことも可能です。相続人の一人に遺言執行者の役割を任せると相続トラブルに発展するおそれがありますが、第三者である弁護士であれば公正な立場で手続きを進めることが出来ます。
7、まとめ
遺言書の作成や検認申立ては自分でもできますが、要件を満たさないと無効になったり過料を科されたりするおそれがありますので、くれぐれも注意してください。
相続に限らず、法律関係のトラブルはわからないまま放置しておくと手遅れになってしまうことがあります。少しでも迷われたら、お早めにベリーベスト法律事務所 大宮オフィスの弁護士に相談されることをおすすめします。
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